■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
インターネット通販の限界と可能性
10数年前のことである。筆者が日本経済新聞の編集委員をしていたころ、いずれ、百貨店よりもインターネット通販の市場のほうが大きくなる、と座談会で指摘したところ、某ハイテク分野の大御所が、「冗談じゃない。僕は百貨店でお嬢さんたちに笑顔で声を掛けられながら買い物をするのが楽しみなんだ。インターネット通販なんて流行らないよ」と反論されてしまった。
確かに対面販売にはお客様の心を快適にする魅力がある。しかし、だからといって、インターネット通販が普及しない理由にはならない、と、さらに反論して、すっかり大御所の機嫌を損ねてしまった。その後、百貨店業界の総売上高は減少し、「小売の王者」の地位はとっくに返上してしまったが、筆者らが考えたスピードよりも衰退はゆっくりだった。百貨店の側でも必死にお得意様を呼び戻す策を講じて復活に挑戦しているので、業界全体は衰退しても、ひょっとすると大きく復活する店があるのではないか、という気がする。
それと裏腹だが、インターネット通販も市場全体はまだまだ成長のエネルギーに満ちているものの、どの企業でも成功するわけではない。今回の取材で見る限り、数年前に話題になったインターネット通販会社を探してみても、すっかり姿を消してしまったところも少なくはない。業界が伸びることと、各企業が成長するということは別のことである。そこを見誤ると、ビジネスの限界の壁はすぐそこに聳え立つことにある。
インターネット通販はまだ技術的に発展する可能性がある。Web2.0のさまざまなテクニックで今後、販売促進する方法は多様に編み出されてくる。お客様へのアプローチもさらに向上してくるだろう。その手段を編み出すことができたら、その企業はインターネット通販の世界の主役に躍り出ることができるかもしれない。また、ブロードバンドの浸透に伴ってテレビ電話による顧客対応も工夫が凝らされることになるだろう。香りを伝える技術が確立すれば、食材や化粧品に新しい通販チャネルが拓かれる可能性もある。技術開発と工夫しだいで、市場開拓の余地は広大である。
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