■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「選択の自由」と公教育
筆者の最初の子どもが学齢期に入った30年近く前、人口が膨張し始めていた筆者の居住地域では住居からかなり遠いところに新しい小学校が設立された。不幸にも居住するマンションのすぐそばが通学区域の境界線になった。マンションを選ぶときの条件の一つに近くに小学校があるということだったが、実際に学齢期になると、状況が変わって徒歩十数分の遠い小学校に通わせる破目になった
このときに痛感したのが「選択の自由」がないことである。
学校を選ぶ権利がないだけではない。学校に入れば、先生を選ぶ権利がない。いや、これはワンセットかもしれない。○○という評判の先生がいるから、あの学校に通わせたい、という選択基準ができるかもしれない。。
当時、職場の同僚に「学校を選ぶことができない」と愚痴をこぼしたところ、反応は厳しいものだった。要約すれば「そんなわがままを許せば、教室の児童数は極端にアンバランスになるし、第一、人気取りばっかりの先生ができて教育の現場がめちゃくちゃになる」というのが、100人に聞いて100人の意見で、「お前の頭は変なのではないか」と冷笑された。「だったら電車やバスに乗せて私学に通わせれば良い」というのである。
公教育(自治体経営の公立校)に自由がなくて当たり前、という常識はどうやら大きく変わったようである。その変化をさらに促しそうなのは、インターネットによるホームページによる「発信」である。小学校のホームページを見ると、小学校の教育方針、実際の教育内容、「学校評価」の評価結果、課外授業、力を入れているスポーツや文化活動などが写真入りで詳細に、具体的に掲載されている学校も目立ち始めている。教育を受ける側が選択するための材料となる情報を手に入れやすくなったのである。
ただ、この際に問題になるのは先生の転勤だろう。学校教育は先生の個性に左右される要因が多い。逆に画一的な教育など、ごめんである。その個性ある先生が、新学期が始まる直前の人事異動で目標にしていた学校からいなくなってしまうことがままある。
「選択の自由」の幅はかなり大きくなったものの、現実にはまだ、工夫の余地は多々あるようだ。
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