■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=MM総研代表取締役所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「サービス」のとらえどころのなさ
20年近く前、「サービスマーク」の登録制度がスタートしたころ、その検討会のメンバーになって、斯界の専門家に混じって勉強させていただいた。
このときに驚いたのは、「サービスとは、生産と消費が同時に行われるもの」という定義を聞いた。だから在庫が利かない、というのである。たとえば、航空サービスでは、座席を提供してA地点からB地点に運ぶ航空会社のサービス提供と、飛行機に乗ってA地点からB地点に運んでもらうサービス消費は同じ事象の裏表、一体の行為である。また、飛行機の空席は、次の便に回して、次の便を120%乗せるというわけには行かない。つまり在庫ができない。同様にホテルの部屋は今日空き室だからといって、明日、2倍の客を泊めるわけには行かないのである。
代表的なサービス業であるマッサージや理髪店、美容院、医療行為、介護サービスなどでも同じことが言えるだろう。
しかし、ハンバーガーショップはどうか。確かに、注文を受けてハンバーガーを渡す側の行為とハンバーガーを受けるお客の行為は表裏一体だが、受け取ったハンバーガーを店内で食べるのか、自宅へもって帰って食べるのか。手渡すところに生産と消費があるという解釈も可能だが、通常のセンスで言えば、ハンバーガーを調理するのが生産で、これをお客が食べるのが消費である。一般のセンスで言えば、生産と消費が同時に行われるかというと、どうもそうは思えないところがある。
ITでは、技術者派遣サービスは生産と消費が同じ場所で同時に起こるが、時間を掛けた準備作業が必要なコンサルタントやソフトの委託開発などは、生産と消費が別の場所で別の時間に行われる気がする。
サービスは産業として爆発的に拡大している途中である。次々と現れる業態の中には、かつての定義に合わない事象も現れてくるのだろう。逆に、定義が間尺に合わなくなっているのは、サービス産業が成長過程であることを証立てするものといえるだろう。
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