■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

「路線バス」の新しい市場

 都会で移動していると、満員のバスもよく利用するので、路線バスの衰退をなかなか実感できない。しかし、公営バスの赤字が自治体を財政危機に追い込んでいる原因の一つとして長い間、議論が続いている。赤字路線を中心に廃止される路線が出てくるのも致し方ないところだろう。

 ただ、どうにも腑に落ちないものがあった。鉄道の場合は自前の負担で駅舎や線路を建設し、維持運営しなければならないのに対して、バスは、公共の道路を無料で利用し、簡単な雨よけ程度の施設を持つバス停か、ただ、標識だけのバス停で済ませているのだから、コストは相当に安いはずだ。運賃だって概して、バスのほうが高い気がする。にもかかわらずバス経営のほうの赤字がひどいのである。その点が、今回の取材で明らかになった。地方、それも軽自動車を含めて自家用車が普及して乗客が減少してしまった地方で、赤字がひどくなっているのである。

 廃止路線が増える半面で、新設路線も数多くある。筆者が最も恩恵を受けているのは、大都市圏で次々と出現している空港と主要駅を結ぶ直行バスの路線だ。

 筆者の住んでいる神奈川県の私鉄最寄り駅に羽田空港行き直行バスができたのは6、7年前。駅前のバスターミナルで、雨よけの屋根を持つ少し立派な停留所の工事をしているので、不思議に思っていると、何と、羽田行きバスが現れ、ビックリした。朝方1時間に2本、日中は1時間に1本、ないし3時間に1本と、慎重なダイヤで運行が始まったところ、乗客が殺到し、乗り切れない便も続出した。バス会社のほうは直ちに2台目を呼んで対応する始末だった。現在では便数を増やし、早朝は1時間に5本も出発するが、どれも満席に近い。乗り切れない便もあるが、10数分で次のバスが出発するので、かつてほど、怒号が飛び交うことはなくなった。

 どう考えてもドル箱である。気がついてみると、羽田のバス停は、新しい路線が増加している。これまでの私鉄を乗り継いで行った羽田空港への所要時間は1時間半から45分に縮まった。羽田の向こうにある全国各地が近くなった。

 3年前、同じ駅から成田空港行きの直行便が運行を始めた。所要時間が従来の乗り換えながらの合計3時間半が、2時間程度に縮まった。今度はニューヨークやパリが近づいた。このバスも2時間に1本程度で始まったのが、1時間に2本程度に増便され、それなりの数の乗客で、バス会社の収益構造は相当に改善されたに違いない。

 バスは輸送機関の中で新しい役割を探してさまざまな挑戦を試みている。





Copyright (C)2002-2007 TV-TOKYO / TX-BB All Right Reserved.
このWEBサイトに掲載されている文書・映像・音声・写真等の著作権はテレビ東京に帰属し、個人で楽しむ目的以外に、許諾なく複製・頒布・貸与・上映・有線送信等を行うことは法律で固く禁じられています。