■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=MM総研代表取締役所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「人材確保」のあれこれの作戦
05年の夏ころから完全に需供バランスは逆転した。し烈な「人材獲得合戦」に突入してから2年になる。2001年の同時多発テロ後の不況に入って企業が採用を手控えたころ、すでに「団塊世代が定年を迎え始める07年ころから人材不足になる」と警告する声はあった。しかし、企業は明日の存続も定かでないのに07年のことは構っていられるか、とばかりに人材獲得を手控えるどころか、優秀な若手をも手放す人事戦略に取り組んでしまった。その警告が、景気が回復し始めた05年ころには、早くも現実のものとして顕在化した、といえるだろう。
筆者は07年から02年まで慶応大学湘南藤沢キャンパスで教鞭をとっていたが、その間は相対的に見れば人材過剰の時代で、学生は就職活動で苦しむ姿が目立った。ただ、幸いにITを中心に新しいベンチャービジネスが輩出している時期でもあったので、挑戦意欲のある卒業生はあえて誕生間もないベンチャー企業に飛び込んで行った。少ないながら自ら企業を起こした者もいる。
この世代は、その後、転職率も高い。さらに自分に合った新しい企業を求めて、転職をする。その際のきっかけは人脈である。学生時代の知人もある。最近ではSNSだが、古くはインターネットの掲示板で興味を同じくする人脈が形成される。実際に集まって懇親会(オフ会)をする際に名刺交換して交流が始まるケースもある。この付近は米国シリコンバレーでの人材スカウトや転職の形態に似てきた感じがある。もちろん、スカウト会社の紹介で移動することもあるが、そのケースは、相当の「有名人」である。
大手企業が最近、人材確保を目指している層の一つも、この年代である。採用を絞り込みすぎて、中堅リーダーに育成すべきこの年代がぽっこりと空白になっている。しかし、機動力のある小さな組織で仕事の面白さをすでに経験したこれらの層が、果たして秩序の厳しい大手企業に魅力を感じるかどうか。
確かに、大手企業では、彼らを取り込んで戦力を増強しなければ、そのバイタリティー失速の懸念があることは間違いない。産業界に散在した優秀な若手幹部の人材を獲得するには、大手企業の組織や慣行も同時に変わらなければならないだろう。人材獲得の成否には、組織革新、経営革新の実行も不可欠になる。
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