■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

「介護サービス」――懸念の現実化

 当初から議論があった。「介護」のような極めて人間のきめ細かな愛情を必要とするサービスを、利益追求を目的にする「企業」に委ねて大丈夫か? その懸念に対して、「企業」の活動はそもそも社会貢献を一方の目標にしなければならず、利益追求を一方の目標にする企業だからといって「介護サービス」と矛盾するものではない、という反論があった。筆者もその一人である。

 残念ながら、現在のところ、さまざまの不祥事は、「懸念組」の意見が妥当だったように見える。いくつかの大手介護サービス企業の事業実態は、ルール無視の利益至上主義による暴走の連続であったように見える。

 しかし、この問題が摘発されたこと自体が、企業活動に不正があればそれを修整しようという「自浄作用」が機能しようとしている兆候にも思える。「企業」という形態が介護サービスには適性であるのかないのか、まだ、結論を出すのは早すぎると思う。

 介護サービスを企業に委ねるのも一つの方法だ、と思うのは、利益を確保しようとすれば、無駄を省き、サービスを低下させずに効率化しコストを下げる工夫を行う主体として企業が最適だと信じるからだ。コストを下げる工夫の中に不正やサービスの低下があるならば、それが行えないように監視や監察の工夫をすることによって防止する。これが介護サービスに対して不断に改善する仕組みとなると信じている。

 その逆に、企業的でないところに委ねる危険もある。その証拠は、社会保険庁の無残な実態によって明らかにされたと思う。利益追求でなければ、コスト無視、つまり、無駄な投資も平気、ずさんな記録システムでも平気、さらにだれも責任を取らず、国民は怒りの目標を特定できない、という事態に陥る。不祥事が起これば責任者が特定され、事業が停止される企業システムの法が、結局は改善してゆく道筋が見えて、長期的には優れているのではないか。

 この趣旨から言っても、今回、介護サービスで明らかになった不祥事の原因と再発しない対処策をきちんと策定することが重要だろう。





Copyright (C)2002-2007 TV-TOKYO / TX-BB All Right Reserved.
このWEBサイトに掲載されている文書・映像・音声・写真等の著作権はテレビ東京に帰属し、個人で楽しむ目的以外に、許諾なく複製・頒布・貸与・上映・有線送信等を行うことは法律で固く禁じられています。