■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

「ものづくり」ニッポンの条件

 東京大学では2年生の半ばに3年から専攻する学部・学科を決めるが、そのうち工学部の志望者の変遷を聞く機会があって、正直に驚いた。

 筆者も昭和43年に専門学部進学することで悩んだ身なのでよく覚えているが、そのころの工学部の人気学科は、都市工学、建築、電子・計測(コンピューター)、原子力がトップグループだったと記憶する。反対に人気がなかったのは冶金、機械などだったような気がする(間違っていたなら御免なさい)。繊維工学もすでに下り坂だったような気がする。その後、産業として勢いを失う造船学科も人気はいまひとつだったような気がする。産業としての可能性はなかったが、航空学科はまだ、志望者も多かったと思うので、産業としての未来だけではなく、志願者は夢を追っていたように思う。

 ところが、最近の工学部の人気は様変わりらしい。

 建築は相変わらずの人気らしいが、冶金は「マテリアル工学」として蘇り、また、機械学科はトップグループの人気に上昇しているらしい。その代わりに電子・計測は大きくランクを下げているらしい。解説者によると、10年前には想像できなかったが、現在の好況産業は鉄鋼、造船、自動車で、これがマテリアル工学や機械学科の人気を集めさせている理由らしい。逆に、電子・計測業界は当時を知るものからすれば「まさか」の不景気業種だ。コンピューター産業にいたっては、3Kやら6K、7Kといわれ、「就職したくない職種」の上位業界になった。

 鉄鋼、造船、自動車、機械などは、広い産業のすそ野をもつ「ものづくり」の本拠地である。コンピューター産業に未来を託してきた人々にはショックだが、日本産業本来の強さは「ものづくり」にある、と主張する立場からは、これも、心強い現実でもある。昨今の動きを、筆者としては複雑な思いでウオッチしている。





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