■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=MM総研代表取締役所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
お酒市場はマーケティングが左右する
お酒は情報化時代によくマッチした食品である。新聞、雑誌、ラジオ、テレビ――これらを支える広告主に占めるお酒の販売会社の比率は高い。筆者の記憶でも、戦後、その最も印象に残るコピーはウイスキーのテレビ広告だった。ウイスキーを一口飲むごとに、ユーモラスな漫画風の男性の顔が下の部分から徐々に赤くなってゆく、というものだった。そのイメージが植えつけられて、お酒を飲む年齢に達したころ、そのメーカーのウイスキーを好んで飲むようになった。広告の効果は大きいものだった。
ビール市場の拡大も、競って魅力的なテレビCMが流れたのが大きかったのではないか。若大将がマリンスポーツで汗をかきながらうまそうにビールを飲んだり、「男は黙って○○ビール」と連呼されると、つい、今日はビールを飲もうという気になったものだ。もっとも、その際に飲むビールは、必ずしもテレビCMの銘柄にこだわらなかったが。
CMではなかったが、沖縄の泡盛がブームになったのは、NHKの朝の連続テレビドラマ「美らさん(ちゅらさん)」の影響だった。この番組では苦瓜を具に織り込んだ豆腐料理「ゴーヤチャンプル」を全国的な家庭料理として普及させたが、同時に泡盛の出荷を増やした。ただ、一時のブームはしだいに冷え込むもので、CMで継続的に市場開拓するのに比べて、下火になるのも早かったような気がする。ライバルのアルコールがお金を掛けてマーケティングしてくると、お金を掛けないほうは影が薄れてくる。
その点、継続的にマーケティングにお金を注ぐワインの人気は根強いものがある。民放の番組では、トレンディドラマのちょっとした場面でもワインを飲むシーンが挿入されるが、これもきっとマーケティングの小道具として機能しているのだろうと、スポンサーの姿をつい、思い浮かべてしまう。さらに、インターネットである。インターネットの登場で、メディアの使い方にも新しい戦術が編み出されることになるだろう。マーケティングは一段と進化を遂げてゆきそうだ。
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