■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=MM総研代表取締役所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
資源・穀物相場の高騰はいつまで続くか
値上げの連鎖が始まった。今回の連鎖の出発点の1つは原油の高騰。2つ目は穀物相場の上昇。3つ目はハイテク機器に必要なレアメタルや金属材料の品不足。それぞれが原材料の上流から製品へと波及する段階で価格上昇の連鎖を起こしている。
とはいえ、値上げを直接の需要家に納得させるのは難しいケースが多いので、それぞれの過程で合理化努力を積み重ねて、できるだけ吸収しようとしてきたのは間違いない。原材料価格や企業間取引価格が上昇しているのに、小売価格が長い間、ほとんど横ばいを続けてきたのは、その努力の証拠だろう。しかし、その努力も限界にきた。
しかし、1970年代以来、石油危機、鉱物相場の高騰、穀物相場の上昇というのは繰り返し起こった資源高騰の3点セットである。ただ、今回は従来とは違った原因が加わっている。それは中国、インド、ロシアなどの巨大国家、巨大市場の経済的発展である。消費拡大による需要増加が底流にあるところに、資源産出国家、地域での政情の不安定が重なって供給不安をあおっている。そこで投機資金が金融市場から商品相場のほうにシフトして、高騰の幅を増幅させている、という構図だろう。こういう現象は必ずオーバーシューティングするので、いずれは下方修正をみることになるが、それにしても一定期間、天井に張り付くので、この期間を乗り越えるのはつらいものがある。
もう1つ、穀物相場にはバイオエタノールの原料としてトウモロコシの需要が急増して食糧との奪い合いが始まったことも報じられている。しかし、この需要増は一定期間で克服されるだろう。食糧はそもそも安全で、しかも味覚も問われるので、植物の中から選びぬかれて絞り込まれてきた。ところが、エネルギーとしてエタノールの原料となる植物を選ぶとなると、優れた植物の基準は変わってくる。また、食物としての安全性は考慮しなくて良くなるので、遺伝子工学もフルに利用できる。食糧としての穀物とエネルギー原料としての植物との棲み分けがいずれははっきりするだろう。
さらに石油が高騰すれば、これまで採算が合わないとされてきた風力、太陽光、潮力などの自然エネルギーの開発が進んで、燃料としての石油の需要が抑制されて、いずれは供給過剰になるだろうし、炭素税などの人為的な石油需要の抑制も効いてくるので、これもある程度のところで頂上を越えて反転するはずである。そして、こうした相場に流れていた投機資金が再び証券・金融市場に戻ってきて、また、定常状態が復活するだろう。そうした状態になるのにどれだけの時間がかかるか。従来の経験からすると1年から2年。今回は自然エネルギーの開発にかかる時間を考えると2年から3年というところだろうか。
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