■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

長寿ニッポンの誇るべき文化


 中国製冷凍餃子の農薬混入問題は、実は、ごく一部の例外的な現象なのかもしれないが、中国製品全体への信頼感は再び根底から揺らいだ。一部でも問題が起これば全体のイメージが低下する。「ブランド」とはそういうものなのだろう。今回は「逆ブランド」というほうが正確か。「健康」を希求する日本消費者の警戒心は一段と高まっている。

 農薬についての規制は米国はどうも大雑把なようで、日本は多くを欧州に学んでいるところだが、有機農産物についても欧州基準を参考に厳しい条件が課せられている。

 このシリーズで一度取り上げた青森のりんごが英国のスーパーから購入される事例でも、英国スーパーが栽培方法から農薬、肥料の使用の方法、さらに農作業の仕方まで細かい規定を指示してきたことを聞いて驚いたことがある。欧州で運用されている「GAP(グッド・アグリカルチュラル・プロダクツ)」の基準を日本に移植する「J-GAP」も着々と日本の農産物関係業界には浸透しつつあるようで、日本の生産者の中でも最先端をゆく人々の食品の安全・安心を追求する意識は世界最高水準に達しているだろう。その基準から見ると、日本の老舗料亭や大手洋菓子メーカー、老舗和菓子メーカーなどで次々に発生する不祥事は時代の変化に追いつけない、情けない「劣等生」の姿にも映るだろう。

 そういう中で中国製の冷凍食品の事件である。

 今回の事件が起こる前、製品のジャンルは違うが、米国で中国製の玩具に毒性のある金属が使用されていることが発覚し、全面的に回収される騒ぎが起きている。中国の安全・安心の意識と他の国のそれとの違いがはっきり分かった。また、うなぎなどでも中国産の製品に疑問を持つ人も多く、底流にそういう疑惑が消えないところに今回の農薬混入事件である。冷凍食品メーカーが今になって工場の内部を記者団に公開しても遅い。問題は、農薬混入月日の状態をはっきり明示することである。日本では多額の情報投資をしたトレイサビリティの仕組みの中で不正も、あるいは正しいプロセスを踏んでいたことも立証できるように整備されつつある。中国メーカーが「潔白」を証明するには、欧州並みの厳しい基準やトレイサビリティの仕組みを整備する必要があるだろう。

 有機農産物に厳しい基準を設けて流通させている日本の安全・安心基準を中国メーカーにも守ってもらいたいし、輸入する商社にも、そうした基準がきちんと実行されていることを確認してもらわなければなるまい。安いだけでは、日本の消費者は満足しない。





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