■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

給料の地域格差は何をもたらすか


 記事本文にもあるとおり、地域別の給料の比較では、全国第一位の東京都が就業者1人平均614万円なのに対して沖縄県は平均327万円と半分近い水準である。沖縄県の立場に立って考えると収入が少ないのを是正するのが急務である。沖縄県の失業率は全国平均の2倍近い8%程度である。相対的に物価が安くて生活費が少なくて済むのも低賃金が是正されにくい一因だが、県内に就業機会が少なく、失業率が高いことも、さらに給料が低い状況を招いている原因ともなっている。

 ただ、弱点である問題点を逆に見ることもできる。沖縄県では、この失業率が高いことを企業誘致の「強み」として内地の企業にアピールする。「人材が豊富」という解釈である。実際に若年層の失業率は10%をはるかに超える水準である。沖縄の場合は求人の多い首都圏とは1500キロメートル以上離れ、隣県に移動するにも飛行機で1時間以上もかかる。県外に出て就職するとなかなか家族と会う機会もなくなるので、県内での就業希望が圧倒的に多く、内地からの企業誘致への期待が他県よりもはるかに強い。

 職を求める若年層も能力不足で失業しているのではなく、適切な務め先がないためにやむを得ず失業しているだけなので、内地から企業が誘致されれば失業率の高さは、逆に人材供給能力の高さになる。

 筆者は3年ほど前から沖縄県の企業誘致活動の手伝いをしているが、参加してみて気がついたのは沖縄県への進出企業が加速度的に増加していることである。ここ5年間ほどで内地からざっと150社が沖縄に事業所を設けて、合計1万5000人程度の雇用が創出された。その最大のポイントはやはり人材の豊富さだった。もちろん、人件費が安いことも魅力だが、従業員のスキルが高くなってくると給与は上がってゆくので、人件費だけでは進出理由にはならない。むしろ内地に近い給与水準を支払うと、優秀な人材が集まりやすいし、従業員の士気も高くなるので、質の向上を達成できる。そのメリットを強調する企業も多くなってきた。

 間違いなく、沖縄の給与水準はわずかながらではあるが、上昇してゆく。こうしていずれは沖縄の給与水準は内地の水準に近づくことができるのだろうか。給与水準が低いところに企業が進出してゆく、これが経済の自然な流れのような気もするが、果たして現実はどうなのか。長期的な視野で点検してゆくことにしよう。





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