■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=MM総研代表取締役所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
外食産業の「人材難」はいつまで続くのか
親しい知人に飲食店の経営者がいる。経営上の悩みはいくつもある。移り気な顧客をどのように常連客にするか。新規顧客をそのように獲得するか。食材費の高騰をどのように吸収するか。さらに最大の悩みは、優秀な調理人をどのように確保するか。いや、優秀である必要はない。すでに優秀な調理人がいるので、この業界を志す調理人見習いでも良い、どのように確保するか。
何とか、今日だけは食べてゆける社会である。安い賃金だが、フリーターとして時間稼ぎしているうちに、もっと良い就職先が現れるかもしれない。技術を身につけるのに根気が必要な職業に必ずしも人が集まらない。小規模な飲食店の経営者である知人は「大手のチェーンが一網打尽にさらっていっているのではないか」とぼやいていた。
ところが、現状は、飲食業界にはもっと厳しい状況だった。管理職としての権限を与えないまま店長さんを管理職扱いにして残業料を支払っていないのは不当である、という訴訟が起きて、外食チェーン業界の過酷な実態が明らかになった。店長だけではなく、現場のアルバイトも運用マニュアルを習得するなど、仕事が厳しいとして敬遠されてしまった。大手のチェーンでも人材確保が難しいのである。
すでに多くの外食産業が手を打ったように、一定の条件を満たした外国人の活用も考慮している。しかし、躊躇がある。他の従業員と十分な意思疎通ができるだろうか。きっちりと決めた出勤日のシフトを守って仕事をしてくれるか。ポカ休や気まぐれな退職で混乱させられないか。
こうした模索の中で、筆者は知人にアドバイスし始めたことがある。人材の需給関係の異変である。ここ数年、全産業で人手不足が常態化して、人材が枯渇したが、その需給が逆転し始めたことだ。また、若者はいつまでもフリーターで、その場限りの仕事に当たっていても未来が開けないことを自覚し、手に技術を持ちたいとようやく思い始めたのではないか、という期待である。もちろん、外国人やシニアの活用などの工夫も重要だが、即戦力ではなく、「見習い」から柱になる人材に育てられる人員をどのように確保するかに戦略を移すべきではないか。ここ数年のような「人材難」はそう長くは続かない。風向きの変化に注目してもらいたい。
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