■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

究極の念力コンピューター

 筆者が日経マグロウヒル社に出向中、『日経コンピュータ』の創刊を準備していたころ、編集メンバーたちとの雑談で「念力コンピューター」の話題で盛り上がったことがある。操作者が欲していることを念ずれば、コンピューターがそれを解読して処理してくれるという装置である。もちろん、念じた中身を受け取って情報処理するところまではできても、その後に実行してくれる仕組みがなければ意味がないが、それにしても、入力業務を念力だけでできればそれだけでも革命的なことに違いない。まじめに議論してみたが、どうも「その時にいかがわしき雑念でも入って別の方向に結果が出たら、操作者は大恥をかくではないか」というような結論で大笑いして終わった記憶がある。

 「念力入力」ができたら素晴らしい、と思える場面はいくらでもある。たとえば、キーボードをたたきながら文章を作成するのをなくしてくれる。画面をみながら文章を作成してゆく。画面を見ながら推敲して、メールも送れるし、ブログやツイッターなども気軽にできるようになる。その画面も携帯電話のサイズでもかまわないので、混雑した電車の中でも何とか念力入力は実行できそうである。

 今回の脳科学の取材をしていて、かつては遠い夢のように感じていた念力コンピューターが決して遠い将来の話ではないように思えてきた。信号を検知する端子を装着した帽子をかぶって脳の該当部位の脳波の動きを受信すれば良いのではないか。パソコンでも音声入力装置が開発されていて、利用している人もいるようだが、サンプリングのために最初にたくさんの言葉を音声で試さなければならないので、入口で挫折する人も多い。今回も同じ伝に陥らないとも限らないが、考えることをテストするのは、言葉を発声するよりは楽なような気がする。

 もちろん、いかがわしい雑念などは、あらかじめセットした「雑念キャンセラー」の機能で消去できる。

 ただ、別の心配がある。自分の考えていることを、他人に盗み見られるのではないか、という不安である。だれかが自分の脳の動きを傍受して心の動きを見破ってしまうのではないか。究極のプライバシー侵害である。この辺のところも将来はプライバシー保護のルールで規制しなければならなくなるかもしれない。






Copyright (C)2002-2009 TV-TOKYO / TX-BB All Right Reserved.
このWEBサイトに掲載されている文書・映像・音声・写真等の著作権はテレビ東京に帰属し、個人で楽しむ目的以外に、許諾なく複製・頒布・貸与・上映・有線送信等を行うことは法律で固く禁じられています。