|
■監修者・中島洋の深読み
中島洋=MM総研代表取締役所長1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。 「古着」の魅力 新興企業の成長を支援する一環として「ニュービジネス大賞」があるが、現在の制度の前にあった制度の時代に、筆者は7、8年ほど選考委員を務めた。その中で強く推薦して表彰した、印象に残る企業がいくつもある。その一つが、箪笥の中にある「着物」を発掘して循環させるビジネスを始めた企業だ。「着物」という伝統的な衣服は、最近の衣服に比べてはるかにリサイクルには適した商品である。 着物は、女性にとっては卒業式、結婚式、正月などに着る「晴着」だが、実際には、同じ着物を何度も着る機会がない。かと言って、その時々に別の着物を着るほど何種類も購入するものでもない。その時だけ、貸衣装などで済ませる女性も多くなっている。 母親や姑から贈られて、大事にしているが、着る機会を逸して、「箪笥の肥やし」になっている着物もたくさんある。引っ越しの際には整理したいが、母親や姑から譲り受けたものなので廃棄処分するのも気が引ける。そうした着物を箪笥から引き出して、それを求める若い人たちに安く供給して、新しい着物ブームを起こしたいというのが、企業家の思いだった。 もっとも、市場は日本国内だけではないそうだ。たとえば、ハリウッドのパーティーなどでは、少ししゃれた衣装として着物が人気なのだそうだ。日本の「サムライ」を主人公にした映画がヒットしたのをきっかけに、着物がパーティー衣装として登場し、定着したのだそうである。展示販売会では、手頃な価格(と言っても富裕層にとっての値ごろ感であるが)の古着が飛ぶように売れるそうである。 これも着物が耐久性のある衣装だからできる話で、箪笥から取り出した着物は、糸を抜いて洗い張りに出して、清潔なものにし、色も再生させてから縫い直して古着として展示するという。それなりの努力と投資が必要なのである。 |