■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

問題意識が希薄になった電子書籍の地球環境負荷軽減効果

 マーケティングの成果と言えるのだろう。「iPad」の大ブームである。iPad自体は多機能情報端末で、専用機である「電子書籍リーダー」ではないのだが、その機能の一つであるリーダー性能が優れているために、電子書籍への関心も一挙に高まった。先行しているアマゾンの「キンドール」などの専用の電子書籍リーダーの側でも機能拡充へと一斉に走り出したために、いよいよ「電子書籍」の時代の到来が早まったと言える。

 電子書籍はいろいろ便利なところがあるが、不便もたくさんある。わがままなユーザーに対して使いやすさが最も重要なポイントとして求められるが、実は、現在の関心からいえば、紙資源の節約というメリットの方をもっと追求すべきである。

 20年ほど前に筆者が日本経済新聞記者として、電子書籍を議論していたころは、もっぱら、森林の乱開発を抑制するという点だった。今日ほど二酸化炭素の排出による温暖化が深刻なものとして理解されてはいなかったが、森林を破壊するということに異常を感じていたための議論だった。今なら、地球環境への影響の有無を最大の焦点にできるはずである。電子書籍によって森林の乱伐をどこまで減らせるか、それに対して、電子書籍で使用するエネルギーはどこまで地球環境に負荷を与えるのか。正確な比較はできないが、おおよその計算で、電子書籍の方が有利なことは想像できる。

 しかし、ユーザーの大半は、依然としてわがままである。どちらが地球環境に負荷を与えるのか、現在はほとんど関心をもたれない。もっぱら、電子書籍の議論は、使いやすさに光が当たっている。このブームが一段落した時、改めて、地球環境問題から電子書籍を見直してもらいたい。






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