■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

何を「売る」のか〜〜付加価値が商品の魅力

 何を売るか、どうやって売るか、だれに売るか――は販売革新そのものである。同じ品質の商品なら価格が安いものを提供する、という売り方もあれば、売る相手によっては、同じ品質ならば値段が高い方が売れる、という富裕層向けの売り方もある。もちろん、同じ品質でも、高級感や別の付加価値を提供しなければ高く売れるわけではない。

 駆け出しの新聞記者時代、朝鮮ニンジンの粉末を取材したことがあった。そのメーカーでこれまで販売してきた「健康食品」の簡易パッケージのものは1000円程度だったが、新たに発売する体力増強の効能が明記された医薬品としての新商品は1万円近い値段で、瓶に入り、桐の化粧箱に納められていた。

 商品の中身は同じだというので、何か割り切れなさを感じて質問したが、「医薬品として販売できるようになったのは、病院の協力のもと、はっきりと体質改善効果があることを証明できたからで、その証明作業のためには10年近い歳月と費用を投じている。副作用の有無、他の医薬品との服用の際の問題点の有無も確認した。その結果、桐箱の商品には効能を明記できるようになって、販売チャネルも薬局ルートでしか使わない」のだから、投資を回収するために高額になって当然だというのである。パッケージに効能をうたえるのは高額の医薬品として販売している方だけで、健康食品として販売してきたほうは、依然としてパッケージには効能は記入されていない。なるほど、それを付加価値というのか、と得心がいったしだいである。

 高額の医薬品を求める消費者は「効能の保証」という「付加価値」を購入しているのだ、と見ることができる。「販売革新」とは、付加価値の発明なのだろう。

 その後、取材をしていないので、効能をうたった薬局ルートの医薬品の方が売れたか、あるいは効能が漠然とした低価格の健康食品が売れたか、結果を知らない。「付加価値」を説明する教科書に掲載するには、高額の医薬品の方が売れてくれなければまずいのだが、果たしてどうだったか。






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