インタビュー
徳川家康役 松平定知さん


徳川家康役で出演されることになったお気持ちは。
晴天の霹靂(へきれき)です。本当にびっくりしました。
この8月に出演した映画を撮り終えた時に、同じ事を聞かれて、「金輪際、嫌だ……ということでもないですね」と答えちゃったのがいけなかったんじゃないかと(笑)。
今回は徳川家康役ということで、私にとっては無関係な人でもないわけで、好奇心からお受けした次第であります。
高橋克典さんの印象はいかがですか。
とても涼やかな方ですね。一瞬でファンになりました。
黒田官兵衛という人は、大変重要なことを事も無げに立案して実行する人なんです。
おそらく話し方も、あっさりと普通に話す人ではなかったかと、勝手な想像をしていたんですけれども、今日、まさにそういう台詞回しを高橋さんがしていらしたので、そういう意味では、高橋さんの解釈が私と合致しまして、とてもいいなと思いました。
家康という人物は、どのような人物だと思われますか。
優れた政治家ですね。あれほど待つことができる人は、おそらくいないでしょうね。待つことができたがために、彼は天下を獲ったんだと思います。そういうことで言えば、稀有な存在の大政治家だと思います。
官兵衛は、徳川のためを思って九州を席巻(せっけん)したわけじゃないんですね。「関ヶ原」は両軍を合わせて16万を超える大軍勢ですから、「これはひと月はかかるだろう。長ければふた月はかかるんじゃないか」と考えていたわけです。ですから、勝つのは家康だろうけれども、ヘロヘロに疲れて勝つだろうと。
一方で、島津や大友といった四国や九州の大名たちは、みんな関ヶ原に行ってますから、官兵衛はその間に、九州を獲って、四国を獲って、中国を獲ったわけです。
その余勢を駆って、疲れきった徳川家康と、日本一をかけて優勝決定戦をしようと思っていたんですね。そのことを、家康は知っているわけです。
今日は官兵衛が家康に謁見するシーンを撮影しましたが、官兵衛は「家康様のために九州を席巻してきました」と言うんです。家康も、「何を言ってるんだ」と心の中で笑いながらも、関ヶ原で活躍した官兵衛の息子に筑前一国を与える。筑前一国って、本当に異例ですよね。確か、50万石を超えていますから。
家康は、「私は静かに余生を暮らしたい」と話す官兵衛に対して、本当は違うんじゃないのと思いながらも「あなたの好きなようにするといい」と言う。武士の信義をそこに見たんですね。
「信義」って、すごい言葉だと思うんです。本当は自分のために戦っていたわけだから、信義も何もないわけですよね。まさに、虚虚実実の駆け引きです。
でも、その駆け引きに家康は勝っているわけですよね。にっこり笑って人を切る。しかも、自分が積極的に切るのではなく、周りが切るまで時期を待つ。この家康というのは、大政治家だと思います。
視聴者の方にメッセージを。
僕は9年間、『その時歴史が動いた』という番組をやっていましたが、特別番組や再放送、また9年を振り返った最終回をカウントせずに、354種類の「その時」を見てきたわけです。重複する人もいましたが、1000人近い武将が出てきました。
「その中で誰が好きですか?」と、よく聞かれるんですけれども、迷わず「黒田官兵衛」と言っているんです。男の生き方として、ナンバー2に徹して死んでいくのではなく、「あわよくば」という気持ちがあるというところに男の色気を感じて、私は大好きなんです。黒田官兵衛は、ナンバー2でもナンバー1でもない、オンリー1です。そのイメージを、高橋さんが非常に上手く演じていらっしゃいますので、ぜひ、黒田官兵衛と7時間の時代劇を観ていただきたいと思います。
今まで歴史戦国物というと、織田信長であったり、豊臣秀吉であったり、徳川家康であったりしたんですけれども、そういう人たちも、一人では天下獲りはできなかったわけでね。黒田官兵衛や竹中半兵衛、石田三成がいたからなんです。
信長だけは、突出したカリスマでしたから、ナンバー2といえるような人はいませんでしたが、しかし例えば、森蘭丸には気を許していろいろ話していただろうし、そういう人がいないと、世の中って動かないんですよね。
むしろ、本当に動かしたのは、そういう人なのかもしれないということも言えるので、その意味でも、新春の7時間ドラマは、自分自身、興味がありますし、ぜひ観ていただきたいなと思っています。
まず第一に、黒田官兵衛役の高橋克典さんを見ていただきたい。そして、二番目に徳川家康を見ていただきたいというふうに思っております(笑)。