インタビュー

尾西兼一さん 脚本

「撮影直前の衣装合わせの時に、黒い冑姿の高橋さんと赤い冑姿の山本君を見て、『あっ…、この2人ならできる』って。見た瞬間、わかることがあるんです。」

今作品で脚本を務めたのは、刑事ドラマや時代劇など幅広いジャンルを手掛ける、尾西兼一さん。人間ドラマを丁寧に描くことでも定評があります。今回、高橋克典さんとは初顔合わせ。山本耕史さんとは「坂崎磐音」を主人公としたドラマで馴染みの深い間柄。尾西さんが2人に持つイメージを、黒田官兵衛と竹中半兵衛にどう重ね合わせていったのか。貴重な誕生秘話を、尾西さんに伺いました!

尾西さんが、今回の脚本で描きたいと思った事があればお聞かせください。

台詞の中で「信義」とよく言ってるんですが、今は「信義」なんてないだろうな…と。テレビでも、いろんな人達が謝ってばかりじゃないですか。それを観て、子ども達が呆れた顔をしているのが、なにか嫌で。だから、大人達が自分の信じるところを貫き通す話がいいな、と思ったんです。
書いていく時に、「そういう心情が出てくれば、一番いいな」という気持ちはありましたね。人は権力を握ると、すぐ変わるでしょ。醜いじゃないですか。そういう醜くない人達がいたんだということを、もう一度、自分達で確認したほうがいいなという、そんな思いがありました。

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天下を獲ることも念頭にあった黒田官兵衛が、何より「信義」を
重んじたからこそ、その言葉も生きているという気がします。

自分が言葉を吐いたときに、それを守り貫くという姿勢が、昔の人にはあったんでしょうね。
黒田官兵衛にもあっただろうし、竹中半兵衛にもあったということなんだろうな、という気がします。

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楓と源蔵は、原作とは違った描き方がされているのでしょうか。

原作とは、まるっきり違います。楓と源蔵は庶民として、本当に下の人達が何を考えているのかという、僕らが政治家を見ているような目線でいられればいいな、というふうに思いました。
原作からは名前だけをいただいて、楓と源蔵のシーンに関しては、全部、自分のオリジナルでやっています。

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キャストの方に印象に残ったシーンをお聞きすると、ご自身が出ていらっしゃらないシーンを挙げる方も非常に多くて、そういう意味では、メインのストーリーだけでなく、印象深い場面の多い作品だと感じたのですが。

そこがドラマで、書いているライターの腕の見せ所だろうな、という気はしますね。そこを面白がってもらえれば、一番いいな…と。
要するに歴史は決まってますから、決まってないところに出てくる人達がいて、彼らのドラマを作るわけですから、それが面白ければ、皆さんにも観てもらえるという気がしています。ドラマって、そういうものだという気がしているので。
紙芝居って、ワクワクするじゃないですか。大きなストーリーはあるんですけど、泣いたり笑ったりして、そういう泣いたり笑ったりするものがあればいいですよね。

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山本耕史さんとは何度か仕事をご一緒されていますが、
どのような印象をお持ちですか?

いやもう、「すごいな」という…。
脚本に書いたものをそのまま体現するという、役者としてのその技量。どんな脚本でも文句を言わず、与えられたものを自分で消化してやるということに長けていて、確実に役を演りこなす、すごい役者さんだという気がします。役者って、こういうものだろうと。

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半兵衛に関しては、磐音のイメージと少し重なる部分も
あったとお聞きしたのですが。

半兵衛と磐音って、ちょっとだけ似てるんですよ。雰囲気的なところなんですけど。
半兵衛は山本君が演るということだったので、そこはちょっとだけ意識しましたね。

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高橋克典さんとは初顔合わせだと伺ったのですが、高橋さん演じる黒田官兵衛については、どのようなイメージを持って書かれたのですか?

「きちんと前を見据えて、この役のためにやる」という姿勢がすごいじゃないですか。きゅっと見える真摯な態度が、官兵衛と同じですよね。
書く前に、高橋さんが官兵衛を演るというのは決まっていましたので、そのイメージを脚本に返した部分もあります。「この台詞は、こういうふうに言うんだ」という感じで。山本君はそういうふうには見せないで、自在にふわっといくじゃないですか。その違いは、官兵衛と半兵衛にぴったりですね。
脚本は春から8月頃までに書いて、書き終わった後に撮影が始まったんですが、撮影直前の衣装合わせの時に、黒い冑(かぶと)姿の高橋さんと赤い冑姿の山本君を見て、「あっ…、この2人ならできる」って。見た瞬間、わかることがあるんです。

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官兵衛ファミリーと半兵衛ファミリーも、とても対照的に描かれていますね。

そうです、それは狙いですから(笑)。
放送がお正月ということは、家族と一緒に観るということじゃないですか。だから、ただ単にチャンチャンバラバラやればいいというものではなく、家族がいないとダメなんです。

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尾西さんは時代劇も多く書いていらっしゃいますが、
時代劇の魅力は何だと思いますか?

絵空事なんです。何でもできるんです。だからいいんです。
いないような人も、書くことができるじゃないですか。現代ドラマだと「いないだろ、こんな奴」っていう話になりますけど、時代劇は存在するんです。そこが、とても素敵ですよね。

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放送を楽しみにしている視聴者に向けてひとこと!

「観てください」としかないですよね。本当に観てほしいです。
そして、普通に泣いて、笑って、腑に落ちてほしいなって思います。「ドラマって、こんなものですよ」というのを感じてほしいですね。というのも、奇をてらうものではないドラマですから。
最近、奇をてらうドラマが多いので、そうじゃなくて、真っ正直な、真っ当なドラマとして、紙芝居を見ているような雰囲気で観てもらえればいいなという気がします。

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