KIRIN~美の巨人たち~

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ロバート・ハインデル「メシアを待ちながら」

今日の1枚は、ダンスとダンサーを描くことに身を捧げ、現代のドガと称された画家の作品。ロバート・ハインデル作『メシアを待ちながら』です。そこに描かれているのは、傷だらけの白いフロアと、どこまでも続くような青い壁のバレエスタジオ。一体となって天を仰ぐ男と女。
床には、ダンサーがどのタイミングでどこに動けばいいのかを確認するための、フロアマークと呼ばれるテープが貼られています。しかし、本来道しるべの役割であるフロアマークが、今日の1枚ではむしろダンサーを混乱させるかの如く、縦横無尽に描かれているのです。
画家は華やかな本番ではなく、練習場で孤独に自分自身と向き合うダンサーを描き続けました。しかし今日の1枚は、練習場にしてはあまりにも異質な雰囲気を漂わせています。

1960年代、アメリカ自動車産業の本拠地であるデトロイト。ロバート・ハインデルは、自動車とファッションを中心とする広告のイラストレーターとして名を挙げました。
そんな彼に転機が訪れたのは、24歳の時に見た英国ロイヤル・バレエ団のダンスでした。 幕が開いた瞬間、彼は心を奪われました。その後彼は、躍動するダンサーを1枚の絵に表現し続けることに生涯を捧げました。
商才のあった彼は、売れる絵を描いていくことで画家としても成功します。しかしその一方、「動き」を捉えることはできても、バレエが持つ「感情の深み」を捉えられないと、もがき苦しむ日々が続きました。ハインデルは、自分だけが描ける絵は何かを自問するのです。

新たなモチーフを求めてスコットランドのグラスゴーへと立ち寄ったハインデルでしたが、彼の人生を揺るがす出来事が起こりました。 息子トビーが進行の早い癌に侵されていたのです。家族を愛していた彼は息子を思い、絵の創作に打ち込めなくなります。そんな時に、バレエ『メシアを待ちながら』と出会います。

その演目の中の、一体となって天を仰ぐ2人のポーズに、彼は心動かされます。支えられてより高く飛び立とうとするひとりと、支えながらも地上に戻るよう懇願するもうひとり。 支えるほうは、最期の時までも見逃さないようじっと相手を見つめています。天と地の、互いに逆向きの力を見せることで、常に動きを生み出すフォルムとなっています。ハインデルは、このポーズに混沌とするフロアの乱れを描き、その中に息子トビーのイニシャル「T」を描き込みました。 重力に反して、天に届かんと踏ん張る姿。稽古場でもがくダンサーたちは、人が生きる美しさと悲しさを漂わせています。初めて自らの感情をキャンバスにぶつけたハインデル。 その絵に込められた思いとは……。

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