KIRIN~美の巨人たち~

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稲垣仲静「猫」

今日の一枚は、稲垣仲静作『猫』。わずか25歳で夭折した謎多き画家による一枚です。現在所在の分かる作品が少なく、その画業については謎に包まれている仲静が23歳の時に描きました。明治、大正と西洋絵画が取り込まれ日本画が新たな世界を切り開いていった時代。今日の一枚も、そんな時代が生み出した新しき日本画です。

稲垣仲静は、1897年京都に生まれました。父は、工芸品のデザインも手掛ける日本画家。弟は、染色家として後に人間国宝となりました。そんな家族に囲まれながら、仲静も早くから画家としての才能を開花させます。15歳の時に美術工芸学校に入学。美術学校卒業後、20歳の時には、その上級学校である絵画専門学校に進み、印象派や後期印象派などの最先端の西洋画も学びました。そして、そこで大きな出会いを果たします。美術工芸学校の卒業生達が作った絵画研究グループ「密栗会」に招かれたのです。「密栗会」は、当時画学生達のカリスマ的な存在だった入江波光を中心に、岡本神草や甲斐庄楠音といった画壇から注目を集めていた若手のホープ達によって組織されていました。仲静は、西洋画を取り入れながら独自の画風を切り開いていったこうした「密栗会」の先輩達の作風に大きな刺激を受け、今日の一枚「猫」が生まれました。

一匹の猫が朱色の座布団に端座している様子が描かれています。毛の1本1本まで丁寧に描き込むのは、伝統的な日本画の手法。顔やポーズには岡本や甲斐庄らの影響が見て取れます。そして、特筆すべきは猫の目。彼は日本画の画材を用いながら油絵の表現技法を駆使してこの目を描いたのです。

日本画を超え新しい画風を生み出そうとしていた仲静の姿勢は、彼が同じ年に描いた『軍鶏』という作品からも伺えます。この作品は、仲静が憧れていたルネサンスの巨匠デューラーが描いたイエス・キリストを軍鶏に擬人化して描きました。絵の題材を擬人化して描くことで、自分なりの個性を表そうとしていたのです。
とすれば、同時期に描かれたこの「猫」にも何かの意味が込められているはず。その謎を解く手掛かりは、日本画であれば本来は余白であるはずの背景に描かれたアーチ型の空間にありました。今回は、夭折の画家・稲垣仲静が遺した傑作『猫』に迫ります。

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