奥村土牛「城」「門」

奥村土牛の日本画『城』(1955年)と『門』(1967年)は、いずれも姫路城を描いた作品です。姫路城は「白鷺城」とも呼ばれ、国宝にして日本初の世界遺産となった城。今回は、日本が誇る名城の実際の姿をじっくりご鑑賞いただきながら、土牛が作品に込めた思いに迫ります。

土牛の絵画の特徴はその構図にあります。『城』は櫓と小天守、大天守を縦長に切り取った構図ですが、実際に描かれた場所に行ってみると何となく印象が違います。実はこの印象の違いにこそ、土牛が城に込めた思いが表れているのです。その思いとは一体…?
『城』の完成から12年後、土牛は『門』を描き上げます。こちらは門と壁だけを描く大胆な構図。21ある姫路城の門の中から土牛が選んだのは、比較的地味な「はノ門」でした。8月の炎天下、78歳の画家は ここで“一瞬の光景”との出合いを3日間待ち、この絵を仕上げました。画家の目はその時何を捉えたのでしょうか。

姫路城の大天守は昨年、平成の大修理を終えたばかり。江戸時代初期の築城から400年もの時を経て真っ白な姿に再生しました。築城当時に思いを馳せ、改めて土牛の作品を見ると、城が重ねてきた歳月の重みを感じずにはいられません。