福島県・猪苗代町の尼寺「妙安寺」の庵主・順心は、厳しくも心温まる法話が人気で、ラジオで身の上相談も行っている。寺には悩みを抱えた女性が数多く訪れ、今も聡美、陽子、富美、町子とカツの5人が宿坊していた。
ある日、会津若松市のパチンコ店に2人組の強盗が押し入り、店員をナイフで刺して現金を奪い逃走した。その後、犯人は「猪苗代錦酒造」に勤める矢野孝と接触し、現金の入ったバッグを預ける。しかしその後、孝がバッグこと行方をくらましたため、2人は孝の部屋を物色する。そこには「順心尼法話集」と記された膨大な数のカセットテープがあった。
その夜、カツが外で呻き声を聞き、順心と外へ出てみると、頭から血を流した男の死体を発見する。福島西警察署の千葉・荒木刑事らが駆けつけ、死因は石のようなもので頭部を殴打されたものと推測。順心たちが死体を発見したのは午前5時過ぎで、カツは男同士でもみ合うような声も聞いていた。
その後の調べで、死体の男は会津若松出身の飯塚光三・19歳で、窃盗と恐喝の常習犯と 判明する。その矢先、境内の縁の下からお札の入ったバッグが見つかり、鑑識の結果パチンコ店で強奪されたものと判かる。お札からは殺された飯塚の指紋も検出され、警察は強盗犯の飯塚が寺へ盗んだ金を隠した後、殺されたとの見解を強める。しかし会津若松の男が何故、猪苗代の尼寺にいたのか、疑問が残った。
話を聞いていたカツと陽子は事件当日、境内をうろついていた若い男のことを思い出す。陽子は、その男が中学の頃、塾で一緒だった会津木綿の染物屋の息子・矢野孝だったことを思い出す。それを聞いた順心は激しく動揺する。飯塚と同じ19歳だという矢野孝は、順心が生き別れた一人息子と同じ名前だった。
翌日、孝の消息を尋ね、順心は会津若松に降り立った。矢野家の墓を訪れた順心は、夫と姑の名前が刻まれた墓石の前に佇み、夫の暴行や姑からのひどい仕打ちを受け続けた末、息子を残して逃げた辛い過去を思い出す。その後、孝が通っていた中学校の教師・黒川と会い、孝が小学校の時からいじめに遭っており、そのいじめグループの子分として悪事を手伝わされていたことを知る。そのグループのボスが飯塚光三だった。
一方、警察は飯塚の兄の証言から、強盗のもう一人は光三とよくつるんでいた会津若松の暴走族・南博であることを突き止め、強盗傷害は飯塚・南の犯行と断定される。警察は金の取り合いの末、南が飯塚を殺したと睨み、南の行方を追う。
順心が寺を留守にしている間、宿坊のメンバーはそれぞれの身の内を語り合っていた。寺に来てから言葉数少なかった聡美は、子供が川で溺れ死に、自分も死にたかったが死にきれなかったと過去を打ち明けた。
程なく、千葉刑事が南の写真を持って寺を訪れた。順心は強盗犯が孝でなかったことにホッとする。しかしその後、飯塚らが乗り捨てた盗難車が発見され、その車が孝の勤務先に立ち寄り、それ以来、孝が会社を休んでいることが明らかになる。
そんな中、猪苗代湖畔で南の刺殺死体が発見される。順心は孝が事件に関わっていないことを祈るが…。
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