当コーナーは、いわゆる“アルバムレビュー”ではない。
収録曲を聴いての感想はもとより、曲目紹介や
ディスコグラフィ的な要素も、ほとんどない……。
ならばいったい何をするのか?
…………「利く」のである。
「聴く」ではなく、「利く」のである。
どうやって「利く」のか?
…………見つめる、のである。
ひたすら、一枚のジャケットを凝視するのである。
アルバムの“顏”から名盤を味わう……。
それが「利きジャケ」なのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「花に嵐の喩えもあるさ、
さよならだけが人生だ」
(井伏鱒二)
愉快な時間も、必ず、終わる…………。
最終回をお届けしよう。
最後の利きジャケをお送りするにあたり、
私が選んだ一枚は、果たして……
←コレなのであった。
当コーナーの第一回で取り上げた運命のジャケ、
ハスキーボイスのカリスマによる、
この一枚を、
私、ヴィンセントが、
最後にあらためて……
利かせていただきます!!!!!!!!!
「釣りは、フナに始まりフナに終わる」
(三平一平)
ラストに何を利くべきか、悩んだ……。
新しい一枚にチャレンジし、
何らかの可能性を感じさせつつ幕を引くのも
なかなかクールなアイデアとして想いついた。
しかし、
ここはやはり原点回帰であろう……。
私を妄想の海へと誘ってくれたジャケへの
感謝の気持ちも鬱陶しいほどに込めて、
もう一度私は
ロッドのジャケを凝視したかったのだ。
……いやはや、
今さらこんなことを言うのもアレですが。
振り返ってみれば、
少々、
いや、か・な・り、
無理がありました。
←これはやっぱり、
後ろにいる女性の足です。
単なる見間違いとしか言えません。
しかし……
当時の私の目に、
←これが一瞬、
スチュワートと伸びたロッドの足に見えた
という事実には、
これっぽっちの嘘はないのである。
……あぁ、懐かしい。
スチュワートと伸びた足……。
ちょっとリプレイしてみようじゃないですか……。
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さあ、諸君も一緒に左のジャケを見て!
「あれ? これ、ロッドの足?」
もう一度。
「あれ? これ、ロッドの足?」
←よーく見ながら。
「あれ? これ、ロッドの足?」
どうしてもロッドの足に見えない場合は、
少しモニタから離れて目を細くして……。
そうそう、はい、いきますよー。
「あれ? これ、ロッドの足?」
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……これだけだった。
本当にこれだけだったんだ。
先のことなんか何も見えちゃいなかった。
どんなアルバムを利くかも決めずに私は
「この行為には伸びしろがある!」
と思い込み、連載をスタートさせたのだった。
それから約1年、毎週1枚……。
正直、キツイときもあった。
無理があるのを自覚しながら
ギクシャクと利いた回も、そりゃああったさ。
でも、想い込みだけは薄れなかった。
スマートにいかないときもあるけれど、
とにかく利いて利いて利きまくった。
そうして訪れた書籍化の話。
これに関してはもう、
君たちと関係各位に感謝する
としか申し上げようが無い。
実際、よくもこんなトンチキが
本を出したりできたものだ……。
せちがらい都会に起きたファンタジーである。
……と、
基本的には
多くの人々への感謝で溢れている
わけだが……
が……
だがしかし……
まだまだ、
まだまだまだまだまだまだまだだ!!
と私は想っております。
本が出せたんだから上出来じゃないか
と、みなさんはお想いかもしれない。
この、ごうつくばり!
と…………。
しかし、
私には、
もっとでっかい野望があるのです。
野望……。
それはぶっちゃけ、
金銭的なものでは、それほどありません。
とはいえ、
「いやいや、お金なんかいりませんよ」
と白い歯を輝かせて笑えるほど、
私は裕福なる善人ではない。
愛猫・ハル(最後に久々の登場!)を養い、
己の衣食住を揃えてゆくには
最低限必要なものは必要なのである。
「本を出したら印税で左うちわ」
というのはこれ、もちろん幻想。
生きるためには
あれこれ頑張らねばならぬわけですよ。
……よそう。
なんか話が急に赤裸々になってきた。
引きました? 引きますよね。
ともあれ、
その野望は
金銭とはややベクトルを異にした座標に
設定されているのであります。
本質的に、
私は生来の「愉快犯」である。
自分の想いつきで
何か面白いことを起こすことに
全身全霊を投じて日々を過ごしている
といっても過言ではない。
これについては胸を張って言える。
そんな私の野望は……。
「利きジャケ」が
一般的な名詞になることです!
もしも「利きジャケ」が
普通に使われるコトバになったら……
私は死んでもいい、
とは言わないが、
かなり、強烈に、うれしい……。
CDショップで、
若いカップルかなんかがさ、
「ねえねえ、これ利きジャケできそうよね」
「ほんとだ。ええと、俺ならこう利くね……」
とかなんとか言っちゃったりして。
陳列棚には、
“利きジャケするのも楽しい1枚!”
とかなんとか書かれたショップ店員の
レコメンドが貼られてたりして……。
あぁ……あぁぁぁぁ……ああ!!!
そんな未来に、よだれが出る!!!!
というわけで、
現状、
まだまだまだまだまだまだなわけです。
「利きジャケっていうのはですね……」
ってとこから話を始めなきゃならない。
流行語大賞とまではいかないまでも、
現代用語にひっそり登録されるような
そんな存在になることを私は、
いや、
いやさ、
「利きジャケ」というコトバ自体が
強く求めていると断言したい。
「ボクを日本語のレギュラーにして!」
という利きジャケくんの訴えが
耳について離れないのだ。
……さて、
そんな病的な明るい野望があるのに、
この連載は今回で終わる……。
終わっちゃう……。
野に放ったままで叶うほど
野望というものが甘いとは想っちゃいない。
ここからまた、
きっと、
何かをしなければならないんだ。
だが、何をする?
……例によって、見えてない。
ま、いいさ。
ひとまずこのまま、
なんでもないように最終回を終えよう。
そしてまた、
なんでもないように
「利きジャケ」のタネをまこう。
私は信じる。
「本気の妄想はちょっとだけ真実になる」
と。
みなさん、
近い将来ぜひまた、
本気で遊びましょう…………。
以上!
『ザ・グレイト・アメリカン・ソングブックvol.3』、
最後にもいちど利きました。
利いたからには、聴かねばなるまい!!!
(ヴィン★セント)