欲しい人材は「社員全員」で獲れ! 職場を変える”知り合い採用”:WBS

「ワールドビジネスサテライト」 (毎週月曜~金曜 夜11時)では、新企画「イノベンチャーズ列伝」がスタート! 社会にイノベーションを生み出そうとするベンチャー企業に焦点をあてる。そこで、気になる第5回の放送をピックアップ。



東京・五反田に本社を構える、クラウド会計ソフトなどを手がけるベンチャー企業「freee(フリー)」。彼らが提供する会計ソフトは、クレジットカードなどの取引データからAIで自動的に管理ができるなど高度な機能を持ち、その開発には優秀なエンジニアが欠かせない。だが昨今、IT業界でのエンジニア不足は深刻で、人材獲得競争は激しいという。


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※ 東京・五反田の「freee(フリー)」。ここで約60人のエンジニアが働く

そうした中、フリーでは、ある新手の採用方法でエンジニアの確保に成功しているという。既存の社員が自分の「知り合い」を会社に紹介し、採用につなげる「リファラル採用」というものだ。


たとえば去年12月に入社したソフトウェアエンジニア・上原徹さんの場合。元々フリーの社員だった泉さんが、会社のリファラル採用制度を知り、前の会社で約7年一緒に働いた上原さんを紹介した。「(上原さんが)仕事ができる人なのは知っていた」と泉さん。一方、誘われた上原さんは「知っている人からの情報は安心して聞ける。入社した後もギャップはない」と、泉さんから聞いていた話によって、入社前から職場のイメージが持てていたようだ。このようにリファラル採用には、会社側にとっては「採用前から人材の能力や性格が分かる」、入社する側には「入ってからのミスマッチが少ない」、というメリットがある。

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※ リファラル採用で入社した上原さん(左)は「思った通りの職場だった」

フリーでは今や、社員の2割がリファラル採用による入社。採用担当者は「ベンチャーへの就職が心配だったり、聞いたことのない社名だったりした時、自分の先輩が働いていると安心できる。私たちにとって大切な採用方法」と話す。

ただこのリファラル採用、日常業務を抱える社員が勧誘や説明を普通にやってしまうと負担が大きく、社員が協力に二の足を踏む可能性もある。そこでフリーでは、社員の手間を大幅に減らして広く協力を得るための、ある"システム"を採用している。

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※ フリーが利用する、リファラル採用のシステム。社員の負担を軽減できるという


そのシステムを開発し、リファラル採用を日本に広める"先駆者"の1つとされている企業が、今回の「イノベンチャーズ列伝」の主役だ。2016年創業のベンチャー企業「リフカム」。わずか2年で500社以上のユーザー企業を獲得した。


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※ 東京・渋谷区の「リフカム」本社。システムはクラウドで提供する

ここのシステムの特徴である「利用の簡単さ」とは、どういうものか。まず最初に採用担当者が、欲しい人材の役職や技術といった条件を入力。その内容を社員たちはメールやアプリで確認する。社員はその条件に合いそうな知り合いがいれば、求人情報を閲覧できるURLをメールやSNSで知り合いに送る。社員の"手間"は基本的に、これだけだ。

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※ リフカムのシステム画面。採用担当者が欲しい人材の条件などを入力、社員がそれを確認する


誘った側の社員からメールなどが届いた「知り合い」は、URLをクリックすると、本人向けの求人情報が閲覧でき、興味があればそのまま面談などを申し込める。あとは基本的に、その「知り合い」と「採用担当者」のやり取りだけだ。もちろん、疑問があれば誘ってきた本人に連絡をとって、納得いくまで聞けばいい。


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※ 「知り合い」が閲覧できる求人情報。そこから応募もできる


取材に訪れていたWBSの相内優香キャスターが、ここで創業者の清水巧社長にチクリ。「まるで縁故(コネ)採用みたいですね?」。清水氏は「やっていることは古いようで新しい。採用を人事だけでなく"社員全体"でやろうということ」と、違いを説明する。


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※ 創業者の清水巧社長(27歳)。これが2度目のチャレンジ


実は清水社長、22歳の時に一度起業し、失敗した経験を持つ。当時は人材確保が難しいベンチャー企業向けに、採用サービスを始めようとしていた。だが「事業として結局立ち上がらなくて...。オフィスの家賃も払えなくなって、一度、実家のある金沢に帰った」という。


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そして清水氏は、「ベンチャー企業の"仲間集め"を、もっと大きな会社でもできるように」と、当時海外で広まりつつあった「リファラル採用」に着目。2016年、リフカムを創業した。エンジニアの獲得競争にしのぎを削るITベンチャーを中心に「採用市場に出る前の人を獲得できる」(清水社長)と人気を集め、システムの提供先は急速に広がった。


さらにいま、リフカムがニーズの高まりを感じているのが、慢性的な離職率の高さに悩む「飲食業界」だ。 うどん店チェーンの「はなまるうどん」は昨年6月にリフカムのシステムを導入。リファラル採用で入社した社員は定着率が高く、従来の方法より採用コストは大幅に減らせたという。


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※ リファラル採用を始めた「はなまるうどん」。採用コストは減少


そしてもう1つ、はなまるがリファラル採用で感じ始めているメリットが、既存の社員の「モチベーション向上」だ。昨年、後輩を会社に紹介した社員、塚見悠記さんは「紹介した後輩が頑張ってくれていて、それが励みになる」と話す。


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※ 「職場を知り合いに薦める」中で、社員の意識に変化が...

気に入った人を誘うからには、もっと良い職場にしようとする。そして知り合いを迎え、一緒に働けば"やる気"が出る--。そんな意識の変化が現場に生まれることこそが、リファラル採用の真のメリットだと、清水社長は強調する。「自分の会社を紹介したいと思えるような、"いい会社"を増やす力になれればと思っている」。人と人とのつながりが生む新たな"採用"は、日本の職場を変えるだろうか。


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