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テレ東

2018.9.5

空から農業革命!ドローンが「お掃除ロボット」のように...:WBS

「ワールドビジネスサテライト」 (毎週月曜~金曜 夜11時)では、新企画「イノベンチャーズ列伝」がスタート! 社会にイノベーションを生み出そうとするベンチャー企業に焦点をあてる。そこで、気になる第11回の放送をピックアップ。

8月下旬、栃木県下野市。一面に広がる田んぼで、稲穂が収穫期を迎え色づき始めた。ここで代々農家を営む大越一雄さん、田んぼに入って稲穂をつかみながら「これは三十何本ぐらい生えている...」。猛暑の中、自分の目で稲穂を数えて生育状況を確かめているのだ。稲作は機械化が進んだとはいえ、まだまだ人の手に頼る部分が多い。農薬や肥料の散布も、1区画あたり30分以上はかかる。農家の負担は依然、重い。

その大越さんが何とか作業を効率化できないかと、まもなく実用化される、ある「農業ドローン」を試している。これが、"ただ者"ではない。

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※ 大越さん親子が導入を検討する農業ドローン。驚きの機能が...

稲穂のわずか30センチ上を飛行し、通ったところだけに農薬や肥料をまいていくのだが、これが操作不要の「全自動」。田んぼをすき間なく飛び回り、端まで来たら自動で折り返す。その動きはまるで「お掃除ロボット」を。独自のシステムで作った飛行ルートを、GPSを頼りに、誤差わずか数センチという精度で飛んでいる。

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※ 田んぼに描かれた黄色い線の通りに、ドローンが飛ぶ。誤差は数センチ

大越さんは「(肥料や農薬の散布が)均一で、重複もない。散布していないところもない。普通の農業ドローンだと『かかったよな?』という感じだが、これはそうではない」と、自動飛行の精度に舌を巻く。

だが、このドローンの真骨頂はここからだ。実は肥料などをまきながら飛行する際、1秒間に10枚の画像を撮影している。この画像で、稲穂の数、稲穂に付いた「もみ」の数、そして田んぼ全体の予想収穫量まで割り出せるというのだ。


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※ ドローンの撮影画像。それぞれ稲穂と「もみ」の数、右上には合計が...

これまで、長年蓄積した経験や勘で稲作を続けてきた大越さんだが「これがあれば誰でも稲作のプロになれる」と断言。このドローンを導入するつもりだ。世界に類のない機能を持つこの農業ドローン、農家の人件費や肥料などを含めた生産コストは、4分の1に減るとの試算もある。1台数百万円で、2019年に発売される予定だという。

そのドローンを生み出したのが、2015年に創業したベンチャー企業の「ナイルワークス」だ。さいたま市にある研究所は、開発の最終段階とあって慌ただしい雰囲気。ここでドローンを一から手作業で組み立てている。この会社を創業したのが柳下洋社長、58歳。


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※ ナイルワークスの研究所(さいたま市)。中央が創業者の柳下洋社長

柳下社長はドローンを見せてくれながら、ちょっと自慢げに「こんなところにセンサーを入れているのは、世界でうちだけだと思う」と話す。そのドローン、よく見ると確かにハイテクの塊だ。飛行ルート上を正確に飛んだり、イネの状態を把握したりするために、12個ものセンサーを搭載している。



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※ ナイルワークスのドローン。カメラにGPS、数々のセンサーを搭載

ドローンの機能は、これらのセンサーを総動員して実現されている。田んぼの上を飛行しながら画像を撮影する際、実はセンサーで、イネが反射した太陽光に含まれる電磁波から、様々な情報を得ている。それら全てを組み合わせて、分析画像を作成。最終的には、「もみの数」から「光合成の進み具合」まで、細かく把握できるという。


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※ 青い部分は「光合成が活発でない」ことを示す。

柳下社長がこんな独特な方法を思いついたのには、かつて志した「天文学」が大きく関係している。中学生のころ、天体望遠鏡を自作。レンズを一から削り出し、4年を費やすほど没頭した。東京大学でも教養課程などで天文学を学び、後にその"考え方"が生きた。「天文学なら星が生まれてから何年経ったとか、そういう細かいことを電磁波から調べて見つけ出す。イネの場合でも同じ方法を突き詰めれば、生育の度合いが分かる」(柳下社長)。


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※ 柳下氏がかつて志した「天文学」が、イネの状況把握のヒントに...

そして柳下氏にはもう1つ、技術の「軸」がある。「人工知能」だ。実は東大で専攻を決める際、希望の天文学科に進むことが叶わず、人工知能を選択。卒業後は人工知能の知見を生かしたキャリアを進む。ソフトウェア開発会社への就職を経て、大手に先駆けて電子書籍を手がける会社を起業。さらに動画配信の会社を興した。これら2社は、後に売却した。

そして「次の起業」を考え始めていた柳下氏は、2011年に初めて「ドローン」を目の当たりにする。「これはすごいぞと。(機械自体は)難しい仕掛けではなく、"ソフトウェアの世界"で飛ばすことができる」。自らのソフト=人工知能の知識が、ドローンに生かせると直感したのだ。


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「すぐに"農業"に行き着いた。農業とドローンで、世界の誰にも負けないものを作れる、という自信がわいた」という柳下氏は、2015年、ナイルワークスを創業。いまは2019年の商品化に向け、全国55カ所で実証実験を進めている。

経済界での注目度は高く、2017年秋には産業革新機構や住友化学、住友商事、全農など6社から、総額8億円の出資を受けた。住友商事の担当者は「技術が圧倒的に優れている。海外の人にこの技術を見せると、早く買いたい、すぐに欲しいと言う人が多い」と高い評価を示す。

柳下社長はこの農業ドローンを、まずは国内の大規模農家を中心に売り込む考え。アジアなど海外への展開も視野に入れている。「上から見ながら作業する農業って、ナイルの時代、エジプト文明の時代から存在しなかった。新しい農業の姿を、世界中に普及させる」(柳下氏)。


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※ 開発は最終段階。「"ナイルの時代"から続く農業のやり方を、変えたい」

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ビジネスや生活に役立つ「自分につながる」経済ニュース番組。ヒット商品を先取りした「トレンドたまご」、経済の最新情報を伝えるコーナーなど。

放送日時:テレビ東京系列 毎週月曜~金曜 夜11時

出演者

大江麻理子、滝田洋一、山川龍雄、相内優香、須黒清華、片渕茜、北村まあさ

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