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「自ら考えて動く」ロボット “人手不足”の現場を変える?

ビジネス

テレ東

2019.1.7 ワールドビジネスサテライト

「ワールドビジネスサテライト」 (毎週月曜~金曜 夜11時)では、新企画「イノベンチャーズ列伝」がスタート! 社会にイノベーションを生み出そうとするベンチャー企業に焦点をあてる。そこで、気になる第16回の放送をピックアップ。


あらゆる産業で「人手不足」が深刻なテーマとなる中、急がれるのが省力化や自動化だ。そこで期待が集まるのが「産業用ロボット」だが、実は"ある作業"が普及のネックとなっている。それが「ティーチング」。ロボットにどういう動作をさせるか事前にプログラミングするもので、長い場合は半年以上の時間がかかる。しかも、できるようになる動作は1つだけで、急に他の動きを求めても対応できないのだ。この「融通がきかない」という産業用ロボットの"弱点"を克服しようと、あるベンチャー企業が技術開発を進めている。

新潟県見附市にある、物流倉庫。日用品の卸売りを手がけるPALTACが去年、増え続けるドラッグストアからの注文に対応するため、新たに稼働させた。出荷数は1日1万箱にのぼる。今後も倉庫を増築する考えだが、商品の積み下ろしをはじめとする重労働がネックとなり、人手が思うように確保できないという。

PALTACは過去、産業用ロボットの導入を検討した時もあったが、研究開発本部の馬場和弘さんは「物流業界では多種多様な箱を扱うので、それぞれ(大きさや形を)正確に把握してピッキングするのが難しかった」と振り返る。従来のロボットにティーチングを施した場合、順序正しく並んだ商品を取ることはできても、箱の向きが変わっただけで対応できなくなる。商品の配置は常に変わるため、ティーチングしきれないと判断し、導入を諦めていた。

しかし、日本のあるベンチャー企業から導入した技術が、この問題を解消した。

倉庫の一角で、ロボットが箱を吸引して持ち上げている。よく見ると、小さな箱を持ち上げる場合は吸引ノズルが他の箱に当たらないよう動いている。"自分で考える力"があるため、様々な状況に臨機応変に対応できるという。PALTACの馬場氏は「生産能力は従来の人と比べて2倍から4倍。労働力不足解消だけでなく、生産性がアップする」と話す。

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※ 箱の大きさに合わせた動きを"考えて"ピッキング。

"考えるロボット"を実現する技術。それを生み出したベンチャー企業は、東京・墨田区にある物流倉庫の中に拠点を構えていた。倉庫や工場の作業を研究し、ロボットを制御するシステムを開発するベンチャー、「MUJIN」(ムジン)だ。

早速、彼らが開発した技術を見せてもらった。ロボットがつかんでいるのは、中央に穴が空いた、小さな金属の部品。ケースの中に雑然と入れられ、それぞれ様々な方向を向いている。その1つ1つの"向きが違う穴"に、ロボットは細い「指」を通して、難なくピッキングをこなしている。MUJINの技術なら、2週間程度でここまでできるようになる。それを可能にしたのが、カメラの映像などからモノの状況を把握して、自律的に動作を考えるAI(人工知能)技術「モーションプランニング」だ。これにより、時間や費用が掛かるティーチングは不要になるという。

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※ 向きがバラバラの部品を正確にピッキング。その裏にはAI技術が。

彼らの制御装置は世界大手のファナックなど、主要メーカーのロボットに対応。自動車などの工場や物流倉庫への導入が進んでいるほか、"完全無人"をうたう中国のネット通販大手「JD.com」の倉庫にも採用されている。このシステムを世に送り出したのは、MUJINの滝野一征CEOと、開発者であるロセン・デアンコウCTO。ロセン氏はアメリカの名門工科大学で博士号を取得した、AIのスペシャリストだ。

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※MUJINの滝野CEO(左)と、開発者のロセンCTO(右)

2人が出会ったのは、2009年に東京で行われた国際ロボット展。ロセン氏は、あるアメリカ企業のインターンとして来日していた。その会場で、海外の大手工具メーカーでトップセールスを上げていた営業マンの滝野氏と出会い、彼の営業力に"一目惚れ"。一緒にビジネスができないかと滝野氏を誘った。その時は「現実離れした夢を語られ、ちょっと引いた」という滝野氏に断られ、いったんアメリカに帰国。しかし、それだけでは終わらなかった...。

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「彼と一緒なら成功できる、というよりは、これだけしつこくて情熱があれば、失敗してももう1回一緒にできるかなと思った」と滝野氏。2011年、ロセン氏とMUJINを創業。国内外から優秀なエンジニアを集め、世界初のロボット制御装置を作り上げた。

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※ MUJINは2011年創業。国内外から優秀な人材が集う

そしていま、開発に取り組んでいる技術が「単品ごとのピッキング」だ。見せてもらうと、歯磨き粉のチューブを1つ1つ持ち上げている。「形も素材もプニプニしている」(滝野氏)ため、当然難しい。すでに袋状のものにも対応していて、今後、人の2倍以上のスピードと正確さを目指すという。

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※ 菓子の箱や袋、歯磨きのチューブ...。「単品」への対応が今後の課題。

こうした技術開発が進めば、やがて日本にも完全に"無人"の工場や倉庫が登場するのだろうか? 滝野氏はこう答える。「全体の90%や80%自動化できれば十分。その先にロボット市場のさらなる拡大がある」。日本の産業にとって人手不足解消への"決め手"となるか、今後も注目が集まりそうだ。

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ビジネスや生活に役立つ「自分につながる」経済ニュース番組。ヒット商品を先取りした「トレンドたまご」、経済の最新情報を伝えるコーナーなど。

放送日時:テレビ東京系列 毎週月曜~金曜 夜11時

出演者

大江麻理子、滝田洋一、山川龍雄、相内優香、須黒清華、片渕茜、北村まあさ

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