公務員YouTuber!? たった一人で映像を作り続ける福井県庁の女性職員、その動機は「悔しさ」だった

YouTuberという職業も一般的になりましたが、YouTubeで大活躍している公務員がいるのをご存知でしょうか。彼女の名は岩田早希代さん。福井県庁広報課で「おいでよ!ふくい」というYouTubeチャンネルを開設し、福井県の魅力を県外に伝える情報発信に取り組んでいる人物です。
企画・演出・撮影・出演・編集すべてを一人でこなし、YouTubeのみならずFacebookやインスタグラムでも広報活動を行っている"スーパー公務員"である岩田さんの撮影現場に密着し、お話を伺いました。
本当にたった一人で取材・撮影・編集。仕事現場に密着!

いつもは福井県内で取材・撮影を行っている岩田さんですが、この日の現場は東京・表参道。
福井県の特産品や名産品のアンテナショップである「ふくい南青山291」と、その隣にある日本料理店「ふくい、望洋楼」を撮影されるとのこと。
重い撮影機材一式を背負い、新幹線に乗って一人でやってきたという岩田さん。挨拶に始まり、取材の段取り説明をテキパキとこなし、早速撮影を開始します。
その丁寧なコミュニケーションとエネルギッシュな働きぶりに、我々テレ東プラスの取材班だけでなくお店の方々も触発されたように動きます。
「こんな感じでどうですか?」と、お店の方がいけすから名物のカニを取り出してくれました。
お店の方の協力があってこそ撮影できる画を、岩田さんは次々と引き出していきます。
岩田さんが担当しているのはYouTube用の動画だけではありません。
インスタグラムで受けそうなネタを見つけたら、ビデオカメラを置いてすかさずデジタルカメラを手に写真撮影を行います。
「このお店は福井の老舗料理旅館がプロデュースしていて、食材も福井から直送している都内でも貴重なお店なんですよ」と教えてくれました。
とてもスタッフ一人とは思えないスピード感で撮影とインタビューをこなしていく岩田さんですが、何よりも印象的なのは、お店の方をはじめとした関係者と向き合い、丁寧なコミュニケーションを心がけていること。
瞬く間に取材対象者と打ち解け、自然な笑顔をはじめ、協力や情報を引き出していくのです。
こうして出来上がったのがこちらの動画。
とても一人で作っているとは思えないクオリティーと取材量。このような仕事ぶりで動画と写真記事を合わせて年間200本もの更新を行っているというだから驚きです。
彼女はそもそも何者なのか。どうしてここまで仕事に一直線なのか。お話を伺いました。
テレビ局・制作会社から県庁広報課へ転身。その理由は「プライド」

――今日の撮影お疲れさまでした!そもそもなのですが、県庁のスタッフが一人でここまで情報発信するのはどうしてなのでしょうか?
実は私は民間企業から福井県庁に飛び込んだスタッフなんです。2016年7月、福井県の魅力を県外向けにPRする専門職員を配置するプロジェクトを福井県庁広報課が立ち上げたのですが、そこで動画制作経験のある民間出身の専門職員を3年契約で募集していて。それに応募し採用されたのが私というわけです。
――応募の動機は何だったのでしょうか?
募集を知った時「絶対に自分がやりたい」と思いました。私はずっと地元のテレビ局やローカル局関連の制作会社で、福井の魅力を掘り下げて伝える取材を行ってきたのですが、県がSNSで情報発信するとなるとテレビとは違うスタンスでスピーディーに発信・PRができて魅力的だと感じたんです。
――民間から行政に移ってギャップはありましたか?
いやー、大変ですね(笑)やはり人員と機材は圧倒的に足りません。これまで務めてきたテレビ局や制作会社では、カメラマンとは別にディレクターがいるというチームプレーでしたし。でも、県庁は行政機関なので、仕方のないことです。そのなかで工夫してやっていかなければということで、自分がリポートしたり、とんでもないスピードで編集したりとか、いろいろと工夫しています。
――以前のインタビューを拝見したところ、やはり役所だけあって企画段階から承認の判子がたくさん必要だそうで。
ははは(笑)私もまだ慣れないんですけど、県民の大切な税金を使っての活動ですから、SNSといえど他の事業と変わらない進め方に合わせてやる、ということで私も納得してやっています。
――元々テレビ業界でも福井の魅力を発信してきて、現在は県庁に移って福井を取材し続けている。そんな岩田さんのモチベーションはどこにあるのでしょうか?
とにかく自分が大好きな福井を発信したい、自慢したい、知られていないのがくやしいんです。県外の方に会うと、「福井ってどこにあるの?」とか「何が有名なの?」と聞かれることも多いんです。
――なるほど。
福井はすごくシャイな県民性で「福井なんて何もないわ~」「すごい田舎やし」なんて謙遜するところがあるんですよ。実際にすごい技術を持っていたり、素敵な商品を作っていたりする方に取材を申し込んでも「うちなんてたいしたことないでぇ~。うちよりも○○さんのほうがすごい」なんてシャイな反応が多いんです。福井県は幸福度ランキングで全国一位なのに。だから、私としては「そんなことない!」と言っていきたい。福井には素晴らしいところがたくさんあるし、知られていないのはおかしいんです。微力だけど私がそれを伝えたい。
――責任感のようなものなのでしょうか?
うーん、責任感というよりも"福井プライド"ですね。私は自分の故郷にプライドを持っている。それを発信したいんです。
大好きな地元、その"日本一の幸福度"を伝えるために、一人で挑み続ける

――福井の魅力を発信するにあたり心がけていることとは?
「おいでよ!ふくい」のミッションは、福井が"幸福度日本一"である理由を発信すること。でも、幸福って漠然としたものだし、それって難しいじゃないですか。そこで私は、福井の皆さんが暮らしているリアルな現場を切り取ることでそれが伝わるのではないかと思っています。もちろん私一人で自撮りして完結する動画もたくさんありますが、できるだけたくさんの県民の方にゲストとして出ていただいています。
――「おいでよ!ふくい」に出ているゲストの方々はとても楽しそうにされているのが印象的です。
取材先では台本などはいっさい渡さず、その場で進行しているのですが、私自身が楽しんでやっているので、緊張せずにやってくれているのかなと思います。一人で撮影して取材するのは、荷物も重いし、ぶっちゃけ辛いんですけど、これがメリットにもなるんです。
――プレッシャーにならない、と。
カメラマンや音声マン、リポーターがいて、といった感じでスタッフが大勢だとゲストの方は緊張すると思うんですよ。でも私がたった一人で「どうも岩田です~」って行くと気楽じゃないですか。だから取材先の方が身構えたり緊張せずに、お友だち感覚で出てくれるというのが「おいでよ!ふくい」の柔らかい雰囲気につながっていると思いますね。撮影が一人だから、リポートもしなきゃいけないし、どうしても手が足りなくて、ゲストさんにカメラをやってもらうんですけど(笑)そのおかげで距離がグッと近くなる部分もありますね。
――そうした取り組みが評価され、先日「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」も受賞されましたね。
そうなんです。そして先日は「ぐろ~かるCM大賞」特別賞「継続は力なり」賞をいただきました。毎年秀逸な自治体PR動画が選ばれるアワードなのですが、賞をいただくことができました。「おいでよ!ふくい」は制作費もなく、広告費ももちろんないので、再生回数的には厳しい部分もありますが、毎月季節ごとの福井の"ナウ"な話題をコンスタントに生き生きとした動画で発信し続けるところが評価されたのかなというところで、続けてよかったなと思っているところです。
――周りの方々の反応はいかがですか?
これまで直接関わった方以外、視聴者の方との心の交流を感じる場がなかなかなかったのですが、その時にいっぱいおめでとうというコメントをいただいて、たくさんの人たちに支えて応援してもらってできているんだということが実感できて、本当にうれしかったですね。
――今後のご活躍も期待しております。
ありがとうございます!私、休みの日に母や友人と遊びに行っても、取材しちゃうんですよ。「私を撮って!」とか言って(笑)。ある意味では休めていないのかもしれませんが、根っからの取材好き、福井好きなのでしょうがないですね!(笑)
YouTubeチャンネル「おいでよ!ふくい」
https://www.youtube.com/channel/UCWlL1QEUajjZCwUhHNDkMQQ
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日本を元気にしようとしている人々にフォーカスを当て、もっと日本各地でどんな人達がどんなことに取り組んでいるか、さらに言うとまだそれほど知られていない日本のヒト、モノ、コトを知るための企画です。