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鈴木小百合さんに聞く、憧れの「ハリウッドスターの通訳」になる方法

ビジネス

テレ東プラス

2019.3.11

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「あの超大作をひっさげハリウッドスターが来日!」
こんなニュースを朝のワイドショーで見かけますよね? そのニュース映像を見ていると、ハリウッドスターの横にいる方が...そう通訳さんです。ハリウッドスターと一番近くにいる職業といっても過言ではありません。

日本には10人もいないと言われる「ハリウッドスターの通訳」。この狭き門をどうすれば通過できるのでしょうか? 過去にレオナルド・ディカプリオ、ヒュー・ジャックマンにアンジェリーナ・ジョリーなどのスターを担当し、ウィル・スミスがInstagramを通じてその仕事ぶりを称賛したことでも知られる鈴木小百合さんにお話を伺いました。

▲ウィル・スミスのInstagram

「ご縁」を大切にしたことでハリウッドスターの通訳になった

まずは私と映画との出会いをお話しますね。
小学校2年から中学校2年生までオーストラリアのシドニーに住んでいました。ここでは週末になると、チャールズ・チャップリンやバスター・キートンなどのクラシック映画をまとめて観られる、こども劇場のような上映会が開催されていたんです。毎週末、飽きずに通っては、昔の映画を何10本も観ていました。今だから言えるんですが、観たい映画がテレビで放送されるときは学校をずる休みして観たりしていました(笑)。

14歳で日本に戻り、インターナショナル・スクールを経て、国際基督教大学(ICU)に通いました。高校でドラマ・クラブに所属していて、大学でも演劇サークルへ。大学時代には映画館通いをして年間250本くらいの映画を観ていました。なので、学生時代はずっと映画や演劇に触れていましたね。大学卒業後は広告代理店に就職。でも仕事が合わず2年くらいで辞めて、海外の友人を訪ねて世界旅行を楽しみました。

tsuyaku_20190311_01.jpg▲鈴木小百合さん

貯金も使い果たして、どうしよう?と途方にくれていたある日、演劇サークル時代の先輩から、今はなき新宿コマ劇場で上演する舞台の通訳をしないかって相談がきたんです。この舞台で1か月くらいお手伝いをして、これがはじめての本格的な通訳のお仕事でしたね。

ただ、その後すぐにエンタメ業界の通訳仕事のオファーがきたわけではないんですよ。最初の頃は自動車や商談などエンタメと関係ない分野の通訳もしました。でもそれらの業界は自分に合わなくって...。一方で演劇の通訳はやっぱり楽しい。舞台をイチから作り上げるプロセスの一員になれるわけですから。海外から招いた演出家の通訳をするうち、自分のアイデアが沸いてきて、通訳なのに演出家にアイデアを出したり(笑)。合間に翻訳の仕事もしましたよ。

tsuyaku_20190311_02.jpg▲「マンハッタンの女たち」という舞台の通訳を担当していた頃の鈴木さん(手前右端)

そんなふうに演劇の世界を中心に通訳をしていたところ、東京国際映画祭で通訳の仕事を手伝ってくれないか?とオファーがきたんです。これが映画業界との決定的な出会いでした。東京国際映画祭って映画業界のお祭りでしょ。私が通訳している姿を映画会社の方が見てくれていて、映画監督やスターが来日したら、お仕事を依頼してくれたんです。そうやって人とのご縁が生まれる中で、徐々に映画関係者の通訳が増えていきました。こうしてみると、この仕事においてネットワークはすごく大切ですね。

仕事をするうえでモットーは?

ハリウッドスターの通訳という仕事でモットーとしていることは「挑戦を恐れないこと」。東京国際映画祭って、来日した映画監督やプロデューサー、俳優・女優たちが記者会見をするんです。それも毎日。最初はこの記者会見が嫌で嫌で...。記者さんの目が笑ってなく恐いと感じていました。でもこの仕事では記者会見は、しょっちゅうある業務。ここで苦手を克服しないといけない、と思って挑戦しました。最初は緊張したけどやっていくうちに慣れちゃって。今では平気ですけど、当時は心臓バクバクでした。

tsuyaku_20190311_03.jpg▲ジャック・ニコルソンが「最高の人生の見つけ方」で来日した時の記者会見

挑戦の大切さはヒュー・ジャックマンも言ってましたね。「リスキーだけど、そんな役をやるんだ。挑戦するとハードルを乗り越えたような気分になる」と。そんな言葉を横で聞いているから、私もチャレンジをしないといけないと思うんです。日本に来られる方って基本的に成功している監督や役者さんばかり。そういう方って"いい言葉"を持っている。いつも横にいて「なるほど!」って頷きながら聞いてます。いい言葉を聞けることも、この仕事の醍醐味ですね。

ハリウッドスターの通訳をするうえで大切なことは?

この仕事の大変なところは「時間との闘い」です。TVインタビューの場合、短い時はたった5分で終えないといけない。挨拶をしてTVスタッフが質問して、スターが答える。このやりとりの合間に通訳しないといけない。通訳がダラダラしていると、時間が取られてちゃんとしたコメントがとれないんです。だからとれだけ素早くするかが大事。

tsuyaku_20190311_04.jpg▲「アリータ:バトル・エンジェル」のジャパンプレミア

最近でもありましたね。「アリータ:バトル・エンジェル」のプロデューサーであるジェームズ・キャメロンにビデオ記者会見をしたのですが、その時はロンドンと東京を繋いだ取材でした。記者さんがたくさん来ていて、質問がたくさん用意されている中、時間はたったの30分。で、映画会社から言われたのが「鈴木さん、早口で訳してください」というオーダー。こういう場合は、やるしかない。ライブですから、その場で「こうして!」と注文がくれば、対応する。

そういう意味で、ハリウッドスターの通訳という仕事は「柔軟性」と「臨機応変さ」が求められます。
ハリウッドスターが来日すると、インタビューやイベントなどのスケジュールが決まります。でもそのスケジュールが変更することはしょっちゅう。誰とは言いませんが(笑)、インタビューに遅刻することもありますよ。すると予定変更にも対応しないといけない。

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昔の映画も観ておくといいですよ。映画監督の通訳を担当していると、昔の映画のタイトルがぽんぽん出てきます。そういう時、その映画を知っていると、スムーズに訳せます。先ほどシドニーの映画館でクラシック映画を観続けていたと言いましたが、あの時の経験が今の私の映画知識の礎となっていますね。

映画ファン必見。思い出のスター

忘れられないスターと言われて、一番に思いつくのが大女優ジュリー・アンドリュース。
「メリー・ポピンズ」や「サウンド・オブ・ミュージック」が大好きで、私が唯一ファンレターを送った方。

tsuyaku_20190311_06.jpg▲憧れの大女優・ジュリー・アンドリュースと会えた時は大感激!

はじめて会った場所はカンヌ国際映画祭。彼女が声優を務めた「シュレック2」の各国のメディア取材の時に会いました。時間はたった10分でしたけど、「ジュリー・アンドリュースだ!」って感動しました。風格があって、役柄同様に女王様のよう。

そのあと、「プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング」で来日した時はたっぷり2日間、一緒に過ごせました。本当に素敵な方でしたね。インタビューとインタビューの合間って、だいたいの方はスマホをいじっているんですよ。でも彼女は優雅に紅茶を飲み、「小百合、あなたは英語をどこで覚えたの?」って聞いてくれる。自分のことに、興味をもってもらえる!と嬉しさでいっぱいでした。

基本的に来日するとスケジュールが詰まっているし、ちゃんと喋らないといけないし...と余裕がない方がいるなかでジュリー・アンドリュースは余裕があって、落ち着いている。そういえばメリル・ストリープやヘレン・ミレンもそう。二人とも同業者が憧れる大御所だけど、好奇心旺盛で優しい。

ジョージ・クルーニーも印象的でしたね。
「トゥモローランド」で来日した時、TVインタビュー中に大きな地震があったんです。そういうトラブルの時ってその人の素が出るじゃない。彼はさっと動き出し周囲の人に「そこは危険だから離れた方がいいよ」と、ディレクションをしはじめ、その姿は船のキャプテンみたい。「パーフェクト ストーム」でキャプテンを演じていたけど、あの姿は役だけじゃなく本当だったんだ!って思いました。ジョージもゆとりがある方。あんなに有名でキャーキャー言われているのに、普通の感覚を持ち合わせ、ユーモアもあって、チャーミング。

tsuyaku_20190311_07.jpg▲スティーブン・スピルバーグ監督の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のLA記者会見

監督ならスティーブン・スピルバーグ。あれだけのベテランなのに、仕事への情熱を失わず、映画のことを語っている時の目はキラキラ輝いていて少年のよう。かわいい!って思っちゃいました。あとはJ・J・エイブラムス。彼は数回、来日してますが、そのたびにご指名いただいてます。来日キャンペーンが終わって、帰国したらアメリカからお礼の手紙を送ってくれたり、私がゴルフすると聞いてゴルフボールをプレゼントしてくれたり...と気配りが素晴らしい。

やっぱり、地位を築いてきた映画監督やスターは、プロフェッショナルだからでもありますが、周囲への気遣いもできていますね。時間も守ります。そういう方って仕事をしたいと思われるから、オファーが絶えないんですよ。特にハリウッドのような競争の激しい世界では、傲慢だと干されちゃう。

通訳の仕事も同じ。先ほど「この仕事においてネットワークはすごく大切」と言いましたが、人間同士ですから今後も一緒に仕事したいと思えるような関係を築くことがハリウッドスターの通訳になる、大切な要素じゃないかしら。


【プロフィール】
鈴木小百合
翻訳家、通訳者。東京生まれ。広告代理店勤務、イベント会社勤務などを経て、フリーの通訳・翻訳家に。これまでにスティーブン・スピルバーグ、クリント・イーストウッド、ブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオ、アンジェリーナ・ジョリーなど数多くの映画監督やスターの通訳を担当。現在は麗澤大学の外国語学部客員教授も務める。

【写真提供】
「アリータ:バトル・エンジェル」
http://www.foxmovies-jp.com/alitabattleangel/
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