デジタル担当藤井内閣府副大臣がプロトスター栗島祐介氏と対談 デジタル庁の創設に向けて目標とする「人に優しいデジタル化」を語る

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「ハンコ出社」が大きく取り上げられた2020年。「脱ハンコ」をすることだけが果たして「正」なのか、従来の商慣習と「共存」していくのか。ワンストップ契約サービスを展開する「NINJA SIGN」による、企業法務、弁護士、実業家、官庁など専門家を招いて押印文化を考えるオンラインイベント『NINJA SIGN 1st Anniversary Conference』が2020年12月22日に開催され、ことし9月に発足するデジタル庁のキーパーソンである藤井比早之(ふじい・ひさゆき)副大臣も登壇した。

藤井副大臣は基調講演の中で「ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化」「データ資源を活用して、一人一人に合ったサービスの提供」「いつでもどこでも自らの選択で社会に参画できるようにする」というデジタル化のビジョンや「押印・書面・対面原則の見直し」「誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル化」などを目指すことが語られた。

前半、藤井副大臣による行政の展望ビジョンが語られたあと、後半ではモデレーターのプロトスター株式会社取締役CCOの栗島祐介氏との対談が行われた。この記事では対談パートを書き起こしで紹介する。

単純作業に費やしている社員さんはもっと生産的な場所へ


粟島:お話どうもありがとうございました。デジタル庁はいま、スローガンに「Government As a Startup」を掲げていますが、こちらはどういったものでしょうか。

藤井:日々スタートアップしていく、日々バージョンアップしていく。そのようなつもりでデジタル庁を作っていくということです。2021年9月1日にデジタル庁が発足します。はじめは500人程度の体制を考えておりますが、ここに多くの民間の方に来ていただいて、それぞれ新たにスタートアップしていただくような世界を築き上げていただきたいと思っています。

粟島:民間に対してどういった取り組み、姿勢を期待されていますか。

藤井:政府は、行政手続きの99%以上で不要な押印を見直すこととしておりますが、児童手当の受給資格や所得に関する届出、道路使用許可の申請、自動車の保管場所証明の申請、電子入札、電子契約、自動車税関連手続き、在留申請関連手続き、不動産登記関連手続き、国税申告手続きなど、ありとあらゆるもののオンライン化が可能になります。利用するのは民間の方々です。オンライン化の素地ができるわけですので、民間の方々にどしどし使っていただきたい。スマートシティであったり、新たなものを作るのは民間なんです。デジタルを活用し、データをいかに成長戦略に繋げていくか。データの活用で新たな企業がスタートアップしていく、そのような取り組みをお願いしたいと思っています。

粟島:非常にスタートアップへのチャンスが増えますね。大企業もそうですが、隙間産業が多くできると思ってます。その中で特に注目されている領域はありますか。

藤井:注目しているといいますか、いろいろと知恵を出したものにチャンスがあると思います。ですからスタートアップでいろんな企業が出てきたらいいと思います。先ほど言いました様々なオンライン化、請求書や領収書の世界はバックオフィスを持っているところはむしろ全部効率化していただいて、単純作業に費やしている社員さんはもっと生産的なところにいっていただきたい。また新たな分野がいっぱい出てくると思うんですよ。オンライン、デジタルがなければeスポーツなんてなかったわけですし、そういった新たな発想、様々なデータを活用すればいろんな商売ができる。そういったところでぜひスタートアップしていただきたいなというふうに思います。

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デジタル技術を通してお年寄りに優しい世界を


粟島:テクノロジーが非常に進む一方で、逆に取り残される方も多くでてくると思います。デジタル庁は誰にでも優しいDXということをおっしゃってますが、具体的にはどういうふうな形で進めていかれるのでしょうか。

藤井:デジタルということになると「そんなのもう無理だ」「パソコンなんか今から覚えられない」という高齢者の方などが大勢いらっしゃる。まさにデジタルディバイドの話だと思います。ただ自動運転そのものですとか、公共交通機関、バスや鉄道がない細かなところでも、手を挙げれば代わりばんこに自動運転サービスが回ってくる。そういったシステムもAI、デジタル技術を活用すればできるようになるんです。またデジタル化が進めば、買い物も「これとこれが欲しい」「孫にこういうのを買って直接送りたい」等の要望をAIが聞いて適切な商品を提案する等、デジタルを使って買い物を補助するサービスが可能になってくる。そういったところをぜひ理解していただいて、そういう世界を築くために、お一人お一人が、中心になるようなデジタル化、それを進める基盤を整備するのが政府には求められているんじゃないかというふうに考えております。

粟島:すごく正しいですね。5Gも普及するタイミングだと思いますので、今皆さんが見ているモニターの中にスーパーを再現して、その中で買い物する未来も今後起きそうですね。

藤井:お孫さんにどんなものを買えばいいだろ?というときにデジタルで相談して「今これが流行っているからどうですか」とか「鬼滅の刃のこのグッズはどうですか」とか、そういうところをぜひデジタル化を通じてやっていただければ非常に新しい世界が来ると思うんですよね。ドローンで配達する、AIロボットで物を運ぶとか、そういったのも含めて、実は地域にお住まいのお年寄りにすごく優しい世界を築く。また目が不自由であったり、耳が不自由であったりする方も音声認識や音声入力、自動字幕作成などのツールを使っていろんなことができる。そういう世界が築けるんじゃないかと思います。みなさんに理解を示していただけるような世界、5Gやさらに6Gもありますけれども、そういうソサエティー5.0という話がありますけれども、そういったところを理解していただけるように進めていくことが必要ではないかと思います。

粟島:科学技術も発達して、これだけITが普及した今は、いろんな方に優しい形で技術を普及できるタイミングに来ていると思います。民間の方にどんどん期待されるという話がありましたが、行政であえて指導していくようなこと、今すでにやられてるものは何かありますか。

藤井:スマホから60秒以内で何でも行政手続きが完結できる。これを目指すのがすごく大切なことだと思います。その際には国だけじゃなく地方自治体も同じように可能になるシステムを作っていかないといけません。地方自治体の現場のこともわかった上で、そのシステムの統一・標準化を国としてサポートすることが非常に大切だと思います。そういった役割をデジタル庁が主導的に担うことができるようにしっかりと進めてまいりたいと思います。

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デジタル化でもプライバシーを重視


粟島:よく自治体内でモデルケースを作ることがあると思いますが、そういった取り組みはすでにされているのでしょうか。例えばご出身の兵庫ですと淡路島でパソナさんが面白い場所を作っています。

藤井:モデル地域はどんどん作っていただいたらいいと思いますが、行政手続きとしてはやはりそれぞれの地域によってバラバラですと逆に不便になってきますので、しっかり国と地方自治体でクラウドなども活用しながら統一・標準化を進めていきたいと思っております。淡路島にパソナが移転するという話がありますけれども、いわゆる地方においても働くことができる。しかも大企業、東京の中心で働いておられた方々も、実は自然豊かなところで綺麗な空気、綺麗な水のところで仕事ができる。そのような世界を築いていければと考えております。それを繋ぐのがデジタル化、デジタル技術。そのような取り組みを進めてまいりたいと思います。

粟島:デジタル庁を出された際に、平井大臣がデジタル田園都市国家構想をおっしゃっていました。私もまさに千葉の田舎でリモートワークしながら働いているので、そういった世界はだいぶ近づいてきたなと思いますね。

藤井:そういう世界を築き上げていきたいなと思います。

粟島:最後の質問になりますが、先ほどの基調講演でお話いただいたビジョン、これを実現した暁には、日本が国際競争の中においてどういった存在になっていくのか、最終的にはどういった未来が描けるのか、展望についてお聞きできればと思います。

藤井:デジタル化の話で言いますとこれまで本当に日本も頑張ってきたとは思うんですけれども何周もやっぱ遅れているというのが現状だと思います。ここで成長戦略の柱としてデジタル化を進めていかないといけない。そこで様々なスタートアップ企業が生まれてくる取り組みをしないといけない。もう一つはプライバシーを重視する、人に優しいデジタル化ができないかということです。もう個人情報保護なんかどちらでもいいという大国があってもおかしくないですが、でも日本はそういう道はとらずに、しかしながら一人一人のプライバシーを大切にしながらも、デジタルで様々な利便性を享受できる。様々な産業が新しく生まれてくる。そのような世界を築き上げていきたいと思います。日本は逆に何周も遅れていたからこそ、チャンスが巡ってきたんだ、というような取り組みをしっかりとデジタル庁創設とともに進めてまいりたいと思っております。

粟島:改めてお話をうかがえまして、スタート企業や新しく挑戦する方にとっては、すごく素晴らしい環境が整ってきたように感じました。誠にありがとうございました。

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藤井比早之さん プロフィール
衆議院議員、内閣府副大臣。1971年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。95年に自治省(現・総務省)に入省し、秋田県庁出向、金融庁市場課課長補佐、消防庁救急専門官、総務副大臣秘書官、内閣官房・内閣府参事官補佐、彦根市副市長等を経て退官。2012年の衆院選で兵庫4区から出馬し、初当選。現在3期目。16年から17年にかけて国土交通大臣政務官を務め、現在は内閣府副大臣として縦割り打破やデジタル改革など幅広い分野を担当する。

栗島 祐介さん プロフィール
プロトスター株式会社 取締役CCO
早稲田大学商学部卒。三菱UFJ投信に入社し、トレーダー・ファンドマネジャーを経験。
アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、プロトスター株式会社を設立。HardTech領域の起業家コミュニティ「StarBurst」を創設し、日本最大のスタートアップコミュニティにまで育成。
現在は起業家・投資家の情報検索サービスStartupListの立ち上げ、運営も行う。

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イベント概要はこちら(本イベントは大盛況のうちに終了しました)
NINJA SIGN 1st Anniversary Conference
会期:2020年12月22日(火) 13:00~17:00
会場:オンライン(Zoom)
参加費:無料
主催:サイトビジット

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
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