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JAL・赤坂社長に聞く コロナ後の”離陸戦略”

ビジネス

テレ東

2021.7.6

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JALの赤坂祐二社長

新型コロナウイルスによって航空業界は大きな打撃を受けました。この苦境を回復へどう転換させるのでしょうか。日本航空(JAL)の赤坂祐二社長がモーサテに生出演し、新しいLCC(格安航空会社)の戦略、さらにこの先のCO2(二酸化炭素)排出量削減の取り組みなどについて語りました。

ーーまず業績回復の見通しです。JALの株価は赤坂社長が就任直後の2018年は4000円近辺で推移も、コロナ後に急落。直近はやや株価を戻していますが、それでも以前の水準とは遠いものです。

株価がこれだけ落ちたことについては、株主の皆さんに対して本当に申し訳ないと思っております。先般発表しました中期経営計画をしっかりやれば、企業価値もしっかり回復できますし、その後は企業価値の向上を図れると確信をしています。私としてはこの計画の実現達成を不退転の決意でやっていきたいと思っています。

ーー今年5月に発表した決算は減収減益で、2866億円の最終赤字となりました。今期の業績見通しも未定としましたが、決算発表から2ヵ月が経ち、何らかの見通しは見えてきたのでしょうか。

4月以降、いわゆる第1四半期は同じような状況が続いていましたが、6月後半に入り、緊急事態宣言の解除やワクチン接種も少しずつ進んできたことで、若干改善の兆しが見えてきました。

ーー改善の兆しとは具体的にどのようなところでしょうか。

6月前半までは、国内線の利用は1日当たり2万人を切っていましたが、6月後半に入り、特に最終週は3万7000人に跳ね上がりました。この回復基調が着実なものになるか分かりませんが、第2四半期に入れば、回復のカーブの傾きが見えてくると思っています。コロナ前は1日10万人近い利用がありましたので、まだまだ先は険しいですが、着実に兆しは見えてきたと思います。

"コロナ後"...LCC強化の狙い

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JALのLCCネットワークのイメージ。

JALでは事業の構造改革のうちの一つとして、LCCのマーケット開拓を掲げています。東南アジアやハワイなど中長距離の「ジップエア」、日本各地を結ぶ「ジェットスター・ジャパン」を傘下に持っていたJAL。ここに中国の主要7都市と日本を結ぶ「春秋航空日本」を加え、アジアを中心に国内外の観光客の移動をLCCで賄うネットワーク作りを目指します。JALは2024年3月期決算で、LCC3社の収益120億円と新たな事業の柱にしたい考えです。

ーー手厚いサービスを売りにしてきたJALが、LCCを強化する狙いはなんでしょうか。

新型コロナによる移動のリスクやリモートワークの浸透で、対面の必要性が特にビジネスにおいて下がってきました。一方で実際に人に会う価値も改めて見直され、観光や訪問需要に表れています。こういったニーズの中で、低価格で移動することだけを志向されるお客様に合わせたサービスをこれからは提供していかなければいけない。今までやってきたフルサービスの事業ではマッチできないため、そこにフィットするLCCモデルの事業をこれから伸ばしていかなければいけない。ポストコロナの変化に合わせた事業改革をしていかなければいけない、ということだと思います。

ーーLCCはフルサービスキャリアに比べると航空運賃が安い分、利益率も低くなります。利益をどう確保していくのでしょうか。

LCC事業は、価格が安いから儲からないと思われがちですが、1機当たりの生産性が高い。1機あたりの座席数が多く、たくさんのお客様に乗っていただけます。またビジネスのお客様はいつ出発して、いつ到着するというダイヤを大事にされますが、LCCの場合はその部分はフレキシブルに、多少不便な時間帯でもやっております。そういう意味で、1機あたりのフルサービスの事業と収入はそれほど変わらない。従って、コストは確実にフルサービスの事業よりも下がり、逆にフルサービスよりも収益率を上げられる可能性が高い。ここにJALグループのさまざまなアセット、リソースを使うことでさらに効率化を図れますので、利益水準についても十分可能性が高いと思っています。

ーーフルサービスとお客を取り合うような状況にはならないのでしょうか。

これまでの経験、さまざまなデータを見ても、フルサービスのお客様とLCCに乗られるお客様は全くマーケットが別。むしろ今までフルサービスをやってきた我々の飛行機に乗ってこられなかったようなお客様が、LCCの方に乗っていただけると期待しております。

CO2排出をどう抑えるのか

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JALの二酸化炭素排出量実質ゼロに向けたロードマップ。

2020年6月のJALの株主総会で、赤坂社長は「JALグループでの2050年のCO2(二酸化炭素)排出実質ゼロ」を目標に掲げました。CO2削減に向けた取り組みの一つが、これまでの主力機ボーイング777から、省エネ性能に優れた最新鋭のエンジンが売りのエアバス社の旅客機A350への変更。既に9機導入しています。

もう一つの取り組みがバイオジェット燃料です。2020年3月にベンチャー企業などと組み、バイオジェット燃料の共同開発に成功。2月には日本初の国産バイオジェット燃料で乗客を乗せたフライトを実現しています。さらにJALは、アメリカのフルクラム社に約9億円を出資。ゴミから作る新たなバイオジェット燃料のプラントを建設しています。JALではバイオジェット燃料の活用で、2050年までに、JALグループ全体のCO2排出量の45%削減を目指します。

ーー省燃費機材への更新でCO2削減を目指すJALが選んだのが、これまで使い続けてきたボーイングではなくて、エアバス社のA350でした。CO2排出量実質ゼロを進める上でエアバスの新機材が必要だったということなんでしょうか。

エアラインのコストの一番大きな部分は燃料費ですので、燃料効率が良い飛行機にどんどん更新していくことが、経営にとっても重要です。燃料消費が少ないことで、当然CO2排出量も少ない。エアラインの経営課題とCO2削減の問題で一致する話なんです。A350は従来のボーイング777よりも非常に燃料消費率が優秀で、すぐに導入したかったということです。

ーーバイオジェット燃料の活用でも45%のCO2排出量の削減を目指します。バイオジェット燃料をめぐっては、多くの航空会社が取り組んでいますが、コストも高い。これどう見ていらっしゃいますか。

これはもうしょうがないですね。ある程度、コスト増になることは十分織り込み済みです。先ほど語った飛行機の部分で燃料消費量を下げられますので、その残ったところをバイオジェット燃料を使って、CO2の排出をゼロに持っていく。もともとの燃料消費量が下がりますから。たとえば今の消費量よりも、2050年の飛行機の消費量が半分であれば、バイオジェット燃料が仮に現在の燃料の2倍のコストだったとしても、今と変わらない構図になります。

ーーコロナが直撃した航空業界では変化が加速しています。先日、アメリカのユナイテッド航空が購入を発表した、コンコルド以来の超音速機。その開発企業、ブーム社にもJALでは2017年に1000万ドルを出資していますが、狙いはどこにあるのでしょうか。

飛行機の強みはやはり高速性で、時間価値を上げることを非常に大事にされる方はたくさんいらっしゃいます。コンコルド以来、超音速は実現できていませんが、あれはもう1960年代の技術です。今の技術をもってすれば、コンコルドが失敗の原因になった燃費の問題、騒音の問題を十分克服できると思っています。

ーーJALではこの超音速機を優先的に20機購入できる権利を持っていますけれども、購入の予定はあるんでしょうか?

もちろん準備をしていきたいと思いますが、まだプロトタイプを飛ばす段階ですので、量産機のスペックを確認し十分に我々としても飛ばせるという確信があれば、購入していきたいと思います。

ーー海外では航空会社がかなり経営破綻しましたけれども、今後の業界の再編、統合をどう見ていますか。

各エアラインの借入金が非常に増え、あるいは政府の支援をいただいていますが、これから返済が始まり、いろいろな対応していかなければいけない。ポストコロナにおいて、そういう影響がこれから顕在化してくると思います。そうした中で業界がどう変わっていくか、私どもも注意深く見ていかなければならないですし、何よりも自分たちがしっかり生き残っていかなければいけない。大事なことはポストコロナをいかに準備するか。これからが本当の勝負だと思っています。


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