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新戦略「大人のレゴ」の全貌:読んで分かる「カンブリア宮殿」

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テレ東

2022.4.28 カンブリア宮殿

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子どもだけじゃない~スニーカーからギターまで


いろいろなものが作れるレゴブロック。子どもの頃に夢中になっていた世代が父親になり、自分の子どもにも買う。「親から子どもに伝えたい」玩具だ。

レゴが活躍している幼児教育の現場もある。子どもの能力を伸ばす教育を掲げる東京・港区の保育園「ポピンズナーサリースクール広尾」では毎日、レゴで遊ぶ時間が設けられている。少し大きめで、通常のタイプの4倍ある「デュプロ」というレゴだ。

レゴは子どもたちの想像力や集中力、記憶力などを育てるという。

「例えば空に飛行機が見えた時、それを自分で形にしてみるというように、自分が見たものを表現することにつながります」(「ポピンズ」社長・轟麻衣子さん)

幼児だけではない。東大や阪大など全国、およそ20の大学にレゴ部がある。メーカーの調べでは、東大生のおよそ7割がレゴで遊んだことがあると答えたと言う。

レゴブロックは1949年、デンマークで小さな子どもの知育玩具として生まれた。社名のレゴはデンマーク語で「よく遊べ」という言葉を組み合わせた造語だ。同社は世界最大の玩具メーカーで、去年の売り上げは過去最高の9400億円と、今、絶好調なのだ。

神奈川県・横浜市の専門店「レゴストア」横浜ランドマークプラザ店は家族連れで賑わっていた。「レゴは初めて」という人がまず買っていくのが、黄色いボックスにいろいろな形のレゴブロックが入ったセット「黄色のアイデアボックス<プラス>」(3980円)。また最近は、スーパーマリオやミッキーマウスといったキャラクター物が主力商品になっている。

その一方で、店内を見渡すと1人で来ている大人の客の姿が。実は今、レゴに大人がはまっているのだ。

仕事帰りに立ち寄っていた男性が買ったのは「マクラーレンフォーミュラー1レースカー」(2万980円)。箱の中には1432ピースのブロックが入っている。「細いところがレゴらしく、作っていると車の構造が分かる。めちゃめちゃ楽しい」と言う。

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東京・赤坂のレゴジャパン本社。オフィスの一角では社員たちがレゴに興じている。社長・長谷川敦(46)は「我々は大人ですが、心の中には子どもの部分を持っている。レゴで遊ぶことによって子どもの心を解き放って楽しんでいただきたい」と言う。

「大人向け戦略」を打ち出したのは2年前から。一番の狙いはレゴに興味のない大人を振り向かせること。そのため、あえてコアなファンしかいない狭い分野を狙い今までとは違う層を引き込んだのだ。

例えばアディダスのスニーカーの箱そっくりの中に入ったバスケットシューズの70年代のモデル「アディダス オリジナルス スーパースター」(1万2980円)。スニーカー好きの心を捉え、品薄状態が続いている。

エレキギターは「フェンダーストラトキャスター」(1万1980円)もギター好きにはたまらない完成度。「Every Little Thing」のギタリスト伊藤一朗さんが自身のYouTubeチャンネルでうれしそうに組み立てる映像が公開されていた。

女性客が一目ぼれしたというのは「スターウォーズ」の「ミレニアム・ファルコン」(9万4980円)。「細かさ、世界観がすごい。ただただ感動した」と言って購入。去年、16歳以上向けの商品は2倍以上の売り上げになったという。

一流企業でも大活躍~レゴを作る研修とは?


レゴは大企業でも意外な使い方をされていた。

「ソフトバンク」の本社の一室で社内研修が始まった。この日のテーマは「入社してからこれまでで一番、うれしかった時の気持ちを形にしましょう」というもの。参加者はレゴブロックで「うれしい気持ち」を形にする。

カスタマーサクセス本部の菅沼晋太郎さんは顧客対応の部署に所属。さまざまなお客さんと接している。形にしたのは「お客様にすごく怒られている気持ちを表現しています。そしてやっと心の橋がお客様と通じた時、何がうれしかったかというと、ひと言『ありがとう』と言われた、そう言われただけで、こっちはパラダイスになる、と」。

業務を管理するプロセスマネジメント本部の小島綾香さんが形にしたのは「先輩に『あなたの機動力がなかったらできなかった』と言われたのがうれしくて、その気持ちを表現しました」。

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ここで行われているのはレゴが開発した研修プログラム。ブロックとともに研修パッケージとして販売している。

「ブロックを触って説明することを繰り返すうちに、だんだん自己開示ができるようになる。そこから相互理解が生まれることが魅力だと思います」(「ソフトバンク」石原亮さん)

レゴ研修はソフトバンクだけでなくトヨタ自動車やリクルートなど300社以上が導入している。

「『わあ、今のレゴってこんなふうになっているんだ』とよく言われますが、それは大事なこと。どの年代にもレゴが提供すべき価値かなと思います」(長谷川)



日本発のアイデアが世界のレゴを変える


去年の11月に発売された商品、「ホーム・アローン」(2万9980円)。家族に置いてきぼりにされた少年が家に入ろうとする泥棒をあの手この手で撃退する大ヒット映画の舞台が、外観だけでなく内部まで忠実にできている。泥棒の顔に当たったアイロンの跡まで。実は泥棒の顔が表裏になっていて、ひっくり返せばアイロンバージョンになるのだ。

レゴの本拠地はデンマーク南部の町・ビルン。住宅街のど真ん中にレゴブロックのような建物が立つ。レゴの本社、通称「レゴハウス」だ。屋上は開放され、住民の憩いの場となっている。

創業は1932年。デンマークの職人、オーレ・キアク・クリスチャンセンが自分の子どものために作った木工玩具から始まった。創業から17年後の1949年にはレゴブロックが誕生。これが知育玩具として高い評価を受けて世界に広がり、日本にも上陸した。

レゴはどの家庭にもある玩具のスタンダードとなった。しかし、1988年、レゴブロックが取得していた噛み合わせる構造の特許期限が切れた。すると、安い模倣品が数多く出回り、レゴは売れなくなっていく。1998年には創業以来、初めて赤字に転落。映画とコラボしたシリーズを出すなどして、なんとか立て直そうとするが、厳しい時代が続く。

「ユーザー目線というより、デザイナーが作りたいものを作っていた。マーケットが求めるものと乖離していた」(長谷川)

2004年には過去最大の赤字を計上。しかし、その翌年赤字は解消。売り上げは急激に伸びて、この17年間で8倍以上になった。何が起きたのか。デンマークの本部でグローバル戦略を指揮したスティーン・コッケンバーグに聞いた。

「日本は我々のビジネスに欠かせない存在です。なぜなら『レゴ空想』と『専門店』、この二つのアイデアを出してくれたからです」

日本発の戦略の一つ目はユーザーの空想を商品化だった。2008年、レゴジャパンが立ち上げたのが「レゴ空想」というウェブサイト。ここで一般ユーザーから商品のアイデアを募り、支持が集まれば商品化、という仕組みを作った。

「ユーザーの皆さんは我々が思っている以上に刺激的なアイデアを考えている。それをうまく取り入れながらビジネスにしていこう、と」(長谷川)

このサイトに応募したというフリーデザイナーの永橋渉さんは、海洋学が趣味で、目をつけたのが潜水艇だった。「子どもたちもこういう物は好きなはず」と、日本の潜水調査船「しんかい6500」をモデルに3カ月がかりで試作品を作りレゴ空想に応募した。

「こんな難しい世界を子どもにやっても無駄だと。さんざん言われました」(永橋さん)

ところが「レゴ空想」では大反響が。子どもではなく、大人たちが食いついた。絶賛する声が殺到し、「レゴ空想」初の商品化が決定。2011年に販売を始めると、限定1万個が予約だけで完売。伝説の商品となったのだ。

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この仕組みに目をつけたのがデンマーク本社だ。

「我々にとってファンと直接コミュニケーションが取れるこの仕組みは画期的でした。『レゴ空想』はレゴがどんなに革新的でクリエーティブなものなのかを伝える最良の手段になったんです」(コッケンバーグ)

2014年、デンマーク本社は「レゴ空想」を「レゴアイデア」と名前を変えて世界展開。すると世界中のユーザーからアイデアが投稿され、ユニークなアイテムが、次々と商品化されていく。

イギリスからの投稿で生まれたのはレトロな「タイプライター」(2万3980円)。ちゃんとタイピングの動きもして、インテリアになりそう。「ホーム・アローン」もファンの投稿から作られた。日本が始めた「レゴ空想」は大人向けレゴのきっかけだったのだ。

日本発の戦略の二つ目は「ファンとつながる専門店」だ。

日本法人は2000年にレゴ専門店「クリックブリック」をオープン。商品を小売店に卸すだけでなく、自ら販売に乗り出した。専門知識のあるスタッフがお客さんと直にすることで、ファンとしっかりつながることで売り上げを伸ばした。

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するとデンマーク本社も2002年、ドイツに「レゴストア」1号店をオープン。ユーザーとの接点を広げ、商品開発にも生かすようになった。

「日本のイノベーションと想像力はすばらしい。それがマーケットに支持されレゴブランドを支えているのです」(コッケンバーグ)

世界が認めた日本人~レゴの可能性に挑戦


レゴに人生を捧げた三井淳平さん(35)。三井さんのオフィスには、天井近くまで収納ケースがビッシリ。その中に入っていたのは全部レゴブロックだ。「だいたいこのオフィスだけで400万ピースあります」と言う。約30色のレゴが1000種類以上。世の中にあるほぼすべてのパーツを持っている。

三井さんは「レゴ認定プロビルダー」。レゴが認めた日本人ただ一人のプロだ。「風神雷神」の屏風絵に見える作品も、よく見ると全部レゴ。依頼を受けてはこうした作品を作り商業施設などで展示している。

三井さんは子どもの頃からレゴが大好きで、中学3年生の時には3メートルを超える宇宙戦艦ヤマトを作成。テレビ東京「TVチャンピオン」のレゴブロック王選手権には高校3年生で出場。そこで作ったのはレゴで組んだ2本の巨大な歯ブラシ。これを上下から重ねるとシマウマになってしまう。この作品で初出場にして準優勝に輝いたのだ。

その後は東京大学に入り、「東大レゴ部」を創部。大学院生の時にレゴ認定プロとなった。

最近の活動では葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を立体作品にした。完成までにかかったのは400時間。特にこだわったのが波だという

「波といってもいろいろな種類があるので、どんなものがあるか論文を読み、『富嶽三十六景』に出てくる波はどんな感じか調べて形を決めます」(三井さん)

ちなみに一つの作品で、報酬は多い時は「外車1台を買えるぐらいの金額」(三井さん)になるそうだ。

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※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

サプライズで「6個のピースでアヒルを作ってください」と言われ、焦ってしまい、完全に失敗した。まずアヒルをイメージする必要があった。それでそのアヒルを6個のレゴピースでどう表現するかを考える。それこそがレゴが言うところの「知育」だ。子どもたちは、自然に自分が知っているアヒルをイメージできる。さらに高級になると、自動車や飛行機もイメージするだろう。イメージとレゴの集合体が一致すると、快感と誇りが湧き出る。まさにそれがレゴの魅力だ。

<出演者略歴>
長谷川敦(はせがわ・あつし)1975年、愛知県生まれ。1998年、一橋大学商学部卒業後、大手総合商社入社。2004年、P&G入社。2014年、レゴジャパン入社。2018年、レゴシンガポール赴任、アジアパシフィック地区ゼネラルマネージャーを務める。2020年、レゴジャパン代表取締役就任。

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※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。

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カンブリア宮殿

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ニュースが伝えない日本経済を、村上龍・小池栄子が“平成カンブリア紀の経済人”を迎えてお伝えする、大人のためのトーク・ライブ・ショーです。

放送日時:テレビ東京ほか 毎週木曜 夜11時06分放送

出演者

【メインインタビュアー】村上龍【サブインタビュアー】小池栄子

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