新マーケティング論「日本デザイン」大坪拓摩×鹿毛康司「消費者の幸福度を上げることが重要」:テレ東BIZ 3周年感謝祭
いい製品やサービスを作ったのに売れないのはなぜか? 現代に求められる「クリエイティブ」「マーケティング」とは、どういうものなのか?
今回の「テレ東プラス」では、「テレ東BIZ 3周年感謝祭」で行われたセッション「『モノが売れる』の本質“新マーケティング論”」(MC:森本智子)の内容をリポートする。
【動画】
![日本デザイン]()
この日のセッションのテーマは「マーケティング」。SNSやAIの浸透で、全てのビジネスパーソンがマーケターになりうる時代に…何を心得え、どう動くべきなのか。
クリエイティブからマーケティングまで一気通貫のサービスを行う「日本デザイン」代表・大坪拓摩氏と、元「エステー」で「消臭力」シリーズのCMなどを手掛けた「かげこうじ事務所」代表・鹿毛康司氏が登壇。全てのビジネスパーソンに役立つ「新マーケティング論」を展開した。
まずは2人のビジネスについて紹介。大坪氏が代表を務める「日本デザイン」とは、どんな会社なのか。
大坪氏は、「大成建設」に入社後「東京ミッドタウン」などの現場監督を務め、グラフィックデザイン、空間設計など20 以上の職種でマネジメント、セールス、マーケティングの実務を経験。2013年に「日本デザイン」を設立し、2015年には“パソコン一つで生きられる力”が身につくデザインスクールをスタートさせた。
![日本デザイン]()
「社名の通り、会社の目的は“日本をデザインすること”。国力や日本人の幸福度を上げるにはどうしたらいいのか…について、常に考えてきた。それを実現するための第一歩として、まずは中小企業を幸せに、豊かにすることで、世の中が変わっていくのではないかと考え、起業した。
独立後は、フリーランスのデザイナーからスタートし、デザイン、ライティング、動画、広告、マーケティングなどの分野で、BtoBビジネスのサポートを行ってきた。
未経験の状態からデザイナーとしてプロになるまでの一連の過程を経験し、2015年からは、そのスキルを提供するデザインスクールを運営している。Webマーケ・集客・LPやSNSの制作・運用、イベントの企画からノベルティの制作にいたるまで、バラバラに存在しがちな仕事を一気通貫で行っている」
さまざまなことを経験した結果、“最初から最後まで同じ人が手がける方が効率がいい”と感じた大坪氏。もちろん自社オフィスも、自らデザインしたという。
![日本デザイン]()
![日本デザイン]()
「目指したのは、家よりも居心地がいい空間。飲食店としても使える場所をオフィスにしたのでキッチンやバーカウンター、暖炉も置いてある。社員と料理を楽しんだり、お客様を招いてパーティーを開くこともできる。
そもそも、企業の皆さんは“デザイン=ビジュアル(見た目を良くすること)”ととらえがちだが、そもそもデザインとは、意志を表し設計すること。課題の解決や目標の達成など、すべてがデザインに含まれる。それを体現しているのが、わが社だと思っている」
![日本デザイン]()
一方の鹿毛氏も、クリエイティブディレクター兼マーケターとして、今も現場でクリエイティブに携わっている。アン ミカが関西弁の魔女に扮する「ほけんの窓口」や「消臭力」シリーズなど、鹿毛氏が手がけたCMは、どれも特徴的で印象に残る作品だが、いったい、どんな視点で考えているのか。
「あまり人の言うことを聞かずにCMを作っている。かつて松下幸之助さんが『お客様の心が読めないかん。一を聞いて十を知るのが商人』とおっしゃっていたが、私は、マーケティングも同じで“商売”だと思っている。
例えば『ほけんの窓口』のCMの場合、コロナ禍で、多くの人が『保険に入らなきゃ』と焦っていたが、実際に窓口には来る人はほとんどいなかった。『保険に入らなきゃ』と口にする人の割合が1割だとすると、残りの9割は“死んだことがないからわからない。行ったら勧誘されるんじゃないか”などの葛藤があったと思う。そこでCMでは、“じゃあ勉強をしにおいでよ!”というメッセージを送った。表面的な思いと本心との雪解けを目指したのが、このCMの狙い。
例えば恋愛の場合、たいていの人は“相手の心を読み解こう、相手を喜ばせよう”と努力する。それと同じことで、恋人に『ネックレスが欲しい』と言われて普通のネックレスをあげたら、そこで終わり。期待を上回るギャップがないといけない。人の心を読み解くことが重要なので、常にお客様の心を動かすことを突き詰めて考えるようにしている」
そんな2人から見た、日本におけるマーケティングの課題とは?
大坪氏の見解は、「“マーケティング”という言葉に、マーケット(市場)という言葉が入っている通り、市場に携わること全てがマーケティングだと思う」。
しかし、そのトータルで考えるマーケティングが現状では、できていないという。
「今は消費者に違いが伝わらない商品が数多く並んでいて、その結果、過当競争を巻き起こしている。いいサービス、いい商品を作ったとしても、その価値がそのまま消費者に届くわけではない。コピーやデザイン、広告というフィルターを通して消費者に届けられるので、メーカー側が思い描いた形とは、全く違うイメージで受け取られるケースもある。つまり、マーケットに関するすべてを包括して考えられる人が、まだまだ少ない」
「一般的には、セールスのプロモーションを行う人がマーケターだと思われがちだが、マーケティングは、もっと大きな枠で考えるべきで、私は、商品の届け方や接客もマーケティングに含まれると思っている。そういう認識がないまま企業が過当競争を繰り返している状況は、消費者にとっても不利益。無意味な販促にお金をかけるくらいなら、その分をサービスの拡充に使った方が、お客様も幸せ。マーケティングの課題は、この認識のズレにあるのでは」と、問題提起した。
今回の「テレ東プラス」では、「テレ東BIZ 3周年感謝祭」で行われたセッション「『モノが売れる』の本質“新マーケティング論”」(MC:森本智子)の内容をリポートする。
【動画】

この日のセッションのテーマは「マーケティング」。SNSやAIの浸透で、全てのビジネスパーソンがマーケターになりうる時代に…何を心得え、どう動くべきなのか。
クリエイティブからマーケティングまで一気通貫のサービスを行う「日本デザイン」代表・大坪拓摩氏と、元「エステー」で「消臭力」シリーズのCMなどを手掛けた「かげこうじ事務所」代表・鹿毛康司氏が登壇。全てのビジネスパーソンに役立つ「新マーケティング論」を展開した。
「モノが売れる」の本質とは?
まずは2人のビジネスについて紹介。大坪氏が代表を務める「日本デザイン」とは、どんな会社なのか。
大坪氏は、「大成建設」に入社後「東京ミッドタウン」などの現場監督を務め、グラフィックデザイン、空間設計など20 以上の職種でマネジメント、セールス、マーケティングの実務を経験。2013年に「日本デザイン」を設立し、2015年には“パソコン一つで生きられる力”が身につくデザインスクールをスタートさせた。

「社名の通り、会社の目的は“日本をデザインすること”。国力や日本人の幸福度を上げるにはどうしたらいいのか…について、常に考えてきた。それを実現するための第一歩として、まずは中小企業を幸せに、豊かにすることで、世の中が変わっていくのではないかと考え、起業した。
独立後は、フリーランスのデザイナーからスタートし、デザイン、ライティング、動画、広告、マーケティングなどの分野で、BtoBビジネスのサポートを行ってきた。
未経験の状態からデザイナーとしてプロになるまでの一連の過程を経験し、2015年からは、そのスキルを提供するデザインスクールを運営している。Webマーケ・集客・LPやSNSの制作・運用、イベントの企画からノベルティの制作にいたるまで、バラバラに存在しがちな仕事を一気通貫で行っている」
さまざまなことを経験した結果、“最初から最後まで同じ人が手がける方が効率がいい”と感じた大坪氏。もちろん自社オフィスも、自らデザインしたという。


「目指したのは、家よりも居心地がいい空間。飲食店としても使える場所をオフィスにしたのでキッチンやバーカウンター、暖炉も置いてある。社員と料理を楽しんだり、お客様を招いてパーティーを開くこともできる。
そもそも、企業の皆さんは“デザイン=ビジュアル(見た目を良くすること)”ととらえがちだが、そもそもデザインとは、意志を表し設計すること。課題の解決や目標の達成など、すべてがデザインに含まれる。それを体現しているのが、わが社だと思っている」

一方の鹿毛氏も、クリエイティブディレクター兼マーケターとして、今も現場でクリエイティブに携わっている。アン ミカが関西弁の魔女に扮する「ほけんの窓口」や「消臭力」シリーズなど、鹿毛氏が手がけたCMは、どれも特徴的で印象に残る作品だが、いったい、どんな視点で考えているのか。
「あまり人の言うことを聞かずにCMを作っている。かつて松下幸之助さんが『お客様の心が読めないかん。一を聞いて十を知るのが商人』とおっしゃっていたが、私は、マーケティングも同じで“商売”だと思っている。
例えば『ほけんの窓口』のCMの場合、コロナ禍で、多くの人が『保険に入らなきゃ』と焦っていたが、実際に窓口には来る人はほとんどいなかった。『保険に入らなきゃ』と口にする人の割合が1割だとすると、残りの9割は“死んだことがないからわからない。行ったら勧誘されるんじゃないか”などの葛藤があったと思う。そこでCMでは、“じゃあ勉強をしにおいでよ!”というメッセージを送った。表面的な思いと本心との雪解けを目指したのが、このCMの狙い。
例えば恋愛の場合、たいていの人は“相手の心を読み解こう、相手を喜ばせよう”と努力する。それと同じことで、恋人に『ネックレスが欲しい』と言われて普通のネックレスをあげたら、そこで終わり。期待を上回るギャップがないといけない。人の心を読み解くことが重要なので、常にお客様の心を動かすことを突き詰めて考えるようにしている」
そんな2人から見た、日本におけるマーケティングの課題とは?
大坪氏の見解は、「“マーケティング”という言葉に、マーケット(市場)という言葉が入っている通り、市場に携わること全てがマーケティングだと思う」。
しかし、そのトータルで考えるマーケティングが現状では、できていないという。
「今は消費者に違いが伝わらない商品が数多く並んでいて、その結果、過当競争を巻き起こしている。いいサービス、いい商品を作ったとしても、その価値がそのまま消費者に届くわけではない。コピーやデザイン、広告というフィルターを通して消費者に届けられるので、メーカー側が思い描いた形とは、全く違うイメージで受け取られるケースもある。つまり、マーケットに関するすべてを包括して考えられる人が、まだまだ少ない」
「一般的には、セールスのプロモーションを行う人がマーケターだと思われがちだが、マーケティングは、もっと大きな枠で考えるべきで、私は、商品の届け方や接客もマーケティングに含まれると思っている。そういう認識がないまま企業が過当競争を繰り返している状況は、消費者にとっても不利益。無意味な販促にお金をかけるくらいなら、その分をサービスの拡充に使った方が、お客様も幸せ。マーケティングの課題は、この認識のズレにあるのでは」と、問題提起した。
https://japan-design.jp/design-school/
![日本デザイン]()
ヘルスケアの会社を起業した森本氏も「どうすれば売り上げが伸ばせるのか、コストをかけずに、どうPRすべきなのか」という課題を抱えていた。同じような悩みを持つ経営者も多いと思うが、何かアドバイスはあるのか?
「皆さん、売り上げを伸ばすためにマーケティングをするが、そもそもの課題を構造分解しないと、施策は当てにくい。売り上げは、“客数×客単価×購買頻度”。企業側の施策も、コピー、デザイン、広告などが、それぞれ、どこに、どれだけ作用するのか…客数や客単価に対して、個別の施策を考えなければいけない。例えば、“客数を増やしたいのであれば、露出を増やす”“客単価を上げたいのであれば、パッケージに高級感を出す”のように、それぞれの項目ごとに分けると考えやすくなる」(大坪氏)。
![日本デザイン]()
一方の鹿毛氏は、熱くこう語る。「まず、お客様を喜ばせないと詐欺になる。どうすればお客様を喜ばすことができるのか? どう知ってもらえれば購入につながるのか?
「分かりやすいので“合コン”で例えるが(笑)、年収が高く、優しい人がモテると聞いたとする。それを真に受けた私が、合コンの席で『私は鹿毛康司です。お金持ちで、優しいです』と、2時間ずっと言い続けたら、みんな引く(笑)。“あなたが鹿毛康司で、お金持ちで、優しいことは分かった。じゃあ鹿毛は、どんなことをして恋人を喜ばせることができるのか?”実は、この部分こそがクリエイティブで、プラスアルファ。そこを本当は伝えなければいけない。
実は、これを一瞬で伝える方法がある。それが“いい時計をしてサラダを取り分けてあげること”。その上でさりげなく“鹿毛康司”という名前を覚えてもらう。これがマーケティングの枠を超えたクリエイティブだと思う」
実際には、マーケ的な施策やクリエイティブを、どう商品に落とし込めばいいのか。
「“その商品で社会にどう貢献するのか”を、まずはどーんと打ち出す。そしてそれを大坪さんのような方に伝えれば、要素を因数分解し、きれいに整理整頓して、施策を作ってくれる。“どうすれば売れるか”は一旦置いておき、商品そのものの価値を考え、誰にどんなものを届けて喜んでもらうか、社会貢献できるのか、などを突き詰めて考えることが重要で、これがマーケティングの基礎。商品やサービスを使って喜んだお客様は引き続きお金を払ってくれると思う。
ちなみに、マーケティングを考える時に、私は禁止用語を設定している。それが“ターゲット”という言葉。そもそも“ターゲット”とは、“標的”という意味で、つまり “えじき”という意味。だから、商売の相手はターゲットではなく、喜ばせるお客様。そうやって考えるだけで、“どう喜ばせようか”という視点に立てて、具体的な案も出てくるようになる」(鹿毛氏)。大坪氏もこの意見に同調した。
「売りたい」ではなく「喜ばせたい」。いまや企業もマインドを変えなければ生き残れない。そんな時代の中で、消費者の心をつかむために、企業が進化すべきポイントとは?
「SNSで間口を広げて成約させたとしても、お客様が商品やサービスに満足しなければ、結果的に、アンチになってしまい、成約率を下げることになりかねない。だから、嘘をついてはいけない。
『日本デザイン』のケースで言うと、約5.6万人のフォロワーがいるデザインスクールのYouTubeチャンネルの動画では“うちの商品を買ってください”のような発信は一切していない。フォロワーが“こういうことで悩んでいるだろう”という部分にコミットし、その悩みに社員が答える動画をアップしている。
“プロセスエコノミー”という言葉もあるが、プロダクトが生まれた経緯などを消費者と共有しながら、お客様と一緒に商品やサービスを作っていく。そうすることで、熱量のあるファンが増え、コミュニティーも生まれやすくなり、必然的に、消費者のニーズに自然とフィットした喜ばれる商品やサービスになると思う」(大坪氏)
一方、鹿毛氏は、こんな警鐘を鳴らす。
「“SNSは無料広告だ”と考える企業もいる。『お金がないからSNSを使って無料で広告しよう』と。しかし、これはアウト。お客様がSNSで仲間と遊んでいるところに”広告”や“お知らせ”を挟んでいくと、たいていは失敗する。これは知らない仲間のところに土足で入り込むのと同じ構図。SNSは人間関係そのものなので、まずは友達になって『こんにちは』とあいさつをして入っていくのが礼儀。
マーケティングの世界には、AIでできることがたくさんあるが、逆に、AIには絶対できないこともある。それが人の心を読むこと。ここにフォーカスできれば、マーケティングもうまくいくと思う」
まずは仲間を作り、対等の立場で発信することが重要だと、鹿毛氏は語る。
![日本デザイン]()
最後に、大坪氏は将来を見据え、「“マーケターの仕事は、現行の商品やサービスを、市場にどうフィットさせるか、だと思っている人も多いが、その考え方だと、既存のマーケットに迎合する形にしかならない。これからの時代のマーケターは、新たな市場を開拓し、お客様が今までかなえられなかった希望を実現させることで、売り手と買い手を幸せにする。そんなWin-Winな状態が作れる仕事を、今後もやっていきたい」と話し、セッションを締めた。
「売れる」ために必要なこと

ヘルスケアの会社を起業した森本氏も「どうすれば売り上げが伸ばせるのか、コストをかけずに、どうPRすべきなのか」という課題を抱えていた。同じような悩みを持つ経営者も多いと思うが、何かアドバイスはあるのか?
「皆さん、売り上げを伸ばすためにマーケティングをするが、そもそもの課題を構造分解しないと、施策は当てにくい。売り上げは、“客数×客単価×購買頻度”。企業側の施策も、コピー、デザイン、広告などが、それぞれ、どこに、どれだけ作用するのか…客数や客単価に対して、個別の施策を考えなければいけない。例えば、“客数を増やしたいのであれば、露出を増やす”“客単価を上げたいのであれば、パッケージに高級感を出す”のように、それぞれの項目ごとに分けると考えやすくなる」(大坪氏)。

一方の鹿毛氏は、熱くこう語る。「まず、お客様を喜ばせないと詐欺になる。どうすればお客様を喜ばすことができるのか? どう知ってもらえれば購入につながるのか?
「分かりやすいので“合コン”で例えるが(笑)、年収が高く、優しい人がモテると聞いたとする。それを真に受けた私が、合コンの席で『私は鹿毛康司です。お金持ちで、優しいです』と、2時間ずっと言い続けたら、みんな引く(笑)。“あなたが鹿毛康司で、お金持ちで、優しいことは分かった。じゃあ鹿毛は、どんなことをして恋人を喜ばせることができるのか?”実は、この部分こそがクリエイティブで、プラスアルファ。そこを本当は伝えなければいけない。
実は、これを一瞬で伝える方法がある。それが“いい時計をしてサラダを取り分けてあげること”。その上でさりげなく“鹿毛康司”という名前を覚えてもらう。これがマーケティングの枠を超えたクリエイティブだと思う」
実際には、マーケ的な施策やクリエイティブを、どう商品に落とし込めばいいのか。
「“その商品で社会にどう貢献するのか”を、まずはどーんと打ち出す。そしてそれを大坪さんのような方に伝えれば、要素を因数分解し、きれいに整理整頓して、施策を作ってくれる。“どうすれば売れるか”は一旦置いておき、商品そのものの価値を考え、誰にどんなものを届けて喜んでもらうか、社会貢献できるのか、などを突き詰めて考えることが重要で、これがマーケティングの基礎。商品やサービスを使って喜んだお客様は引き続きお金を払ってくれると思う。
ちなみに、マーケティングを考える時に、私は禁止用語を設定している。それが“ターゲット”という言葉。そもそも“ターゲット”とは、“標的”という意味で、つまり “えじき”という意味。だから、商売の相手はターゲットではなく、喜ばせるお客様。そうやって考えるだけで、“どう喜ばせようか”という視点に立てて、具体的な案も出てくるようになる」(鹿毛氏)。大坪氏もこの意見に同調した。
「売りたい」ではなく「喜ばせたい」。いまや企業もマインドを変えなければ生き残れない。そんな時代の中で、消費者の心をつかむために、企業が進化すべきポイントとは?
「SNSで間口を広げて成約させたとしても、お客様が商品やサービスに満足しなければ、結果的に、アンチになってしまい、成約率を下げることになりかねない。だから、嘘をついてはいけない。
『日本デザイン』のケースで言うと、約5.6万人のフォロワーがいるデザインスクールのYouTubeチャンネルの動画では“うちの商品を買ってください”のような発信は一切していない。フォロワーが“こういうことで悩んでいるだろう”という部分にコミットし、その悩みに社員が答える動画をアップしている。
“プロセスエコノミー”という言葉もあるが、プロダクトが生まれた経緯などを消費者と共有しながら、お客様と一緒に商品やサービスを作っていく。そうすることで、熱量のあるファンが増え、コミュニティーも生まれやすくなり、必然的に、消費者のニーズに自然とフィットした喜ばれる商品やサービスになると思う」(大坪氏)
一方、鹿毛氏は、こんな警鐘を鳴らす。
「“SNSは無料広告だ”と考える企業もいる。『お金がないからSNSを使って無料で広告しよう』と。しかし、これはアウト。お客様がSNSで仲間と遊んでいるところに”広告”や“お知らせ”を挟んでいくと、たいていは失敗する。これは知らない仲間のところに土足で入り込むのと同じ構図。SNSは人間関係そのものなので、まずは友達になって『こんにちは』とあいさつをして入っていくのが礼儀。
マーケティングの世界には、AIでできることがたくさんあるが、逆に、AIには絶対できないこともある。それが人の心を読むこと。ここにフォーカスできれば、マーケティングもうまくいくと思う」
まずは仲間を作り、対等の立場で発信することが重要だと、鹿毛氏は語る。

最後に、大坪氏は将来を見据え、「“マーケターの仕事は、現行の商品やサービスを、市場にどうフィットさせるか、だと思っている人も多いが、その考え方だと、既存のマーケットに迎合する形にしかならない。これからの時代のマーケターは、新たな市場を開拓し、お客様が今までかなえられなかった希望を実現させることで、売り手と買い手を幸せにする。そんなWin-Winな状態が作れる仕事を、今後もやっていきたい」と話し、セッションを締めた。
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