AIはどこまで進化したのか…問われるリスク、変化するAI時代に必要な能力:テレ東BIZ 3周年感謝祭

 
目覚ましいスピードで進化を続けるAI。その活用範囲は、この1年で日常生活から会社経営にまで、すさまじい広がりを見せている。
今回の「テレ東プラス」では、「テレ東BIZ 3周年感謝祭」で行われたセッション「AI進化論Part2~“AIニュータイプ”は生まれるか~」(MC:森本智子)の内容をリポートする。

【動画】「AI進化論Part2~“AIニュータイプ”は生まれるか~」

この日のセッションでは、「日本IBM(以下、IBM)」コンサルティング事業本部CTO執行役員 IBMフェローの二上哲也氏と、立教大学ビジネススクール・田中道昭教授の二人が、AIはどこまで進化し、日常やビジネスにどのような影響を及ぼすのか。また“これからのAI時代に求められる能力”などについて幅広く議論を交わした。

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AIはどこまで進化したのか?


最初のテーマは、「ChatGPT」が世間に浸透し、日進月歩で進化しているAIが、どのような方向に進んでいるのか。

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二上氏は、「生成AIが出てくる前までは、人間がAIに知識を与えて答えさせる形だったが、『ChatGPT』などの、すでに知識を持った生成AIが登場したことで、最新のAIでは、飛躍的な効率化が進み、『これを顧客サービスの向上や業務の効率化に使わない手はない』と、各企業が導入を進めている。IT業界では、プログラムのコード作成の8~9割くらいがAIで自動生成できるようになった」と現状を解説。

「例えばスマホのアプリを作る時も、人がAIに指示をするだけで、実際のプログラムはAIが作る。結果的に、サービスの開発時間が、これまでより短縮できるようになる。こうして、プログラム作成にかける労力を減らし、その代わり人間には、もっと付加価値の高い仕事を担ってもらえるようになる。つまり、人は新しいことを考えることに集中し、実際のプログラミングに関してはAIに指示するだけ。そんな時代が近づいてきている」(二上氏)。

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例えば「イオングループ」×「IBM」の事例では、AIで価格と購買数、そして販売時間の関係を分析し、適切な割引価格とシールを貼るタイミングが算出できるようになった。しかも、これにより店舗での廃棄ロス率は1割以上削減できたという。
さらに、「宮崎銀行」×「IBM」が共同開発した“融資稟議書作成アプリ”では、生成AIに過去の実例を学習させることで、AIで稟議書を作成する仕組みを構築。担当者の稟議に関する作業時間を95%も削減することに成功した。このAIの導入によって、これまで稟議書の作成にかかっていた時間を、融資事業の本質である“融資先の事業に関する検討”に充てられるようになったのだ。

一方、「パナソニック」では、AIを人事業務に導入。社員から人事部へ問い合わせがあった際、AIチャットボットに自動回答させる仕組みを構築し、その一方で、メタバース上で人事部員と社員が対話し、それでも解決できない場合に担当者が直接対応する仕組みも作り出している。このように、いま企業内のさまざまな場面でAIが使われて始めているのだ。

「AI経営」という言葉も出てきている中、実際に企業はうまく使いこなせているのか。

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このテーマについて田中教授は、「“AI経営”と呼べるほど使っている会社は、まだ少ない。実際、AIを使いこなすためには、まず、どういうデータを使って、どういうことがAIで実現できるのかを熟知しなければならない。つまり、AIを使う目的を明確にすることが重要。その上で、AIやデータを使いこなせる人材の育成や、その人材をマネジメントするリーダーの育成が必要になってくる。そして、企業のトップリーダーが“AI経営”にコミットし、リソースを割り当てることも重要」と話す。

さまざまなことがAIでできてしまうからこそ、“怖い”と感じる側面もあるが、リスクに対して「IBM」は、どんな対策を打ち出しているのか。

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「『IBM』には、すべてのAIプロジェクトでリスク審査を行う “AI倫理チーム”があり、『AIリスク教本』(『IBM』が積み上げてきた実績と知見をもとに、AIにおけるリスク、実践的な対策やノウハウをまとめた1冊)を出版している」と二上氏。

企業の中でAIを使いたいが、リスクが心配で、具体的にどう対処すればいいのかを知っておきたいという経営者やビジネスパーソンに、ふさわしい1冊だという。

AIの進化と使い方


今後、AIはどう進化していくのか。

「プログラムの生成や人事に特化したAIなど、今後は、より専門的なAIが求められるようになる。例えば、『ChatGPT』は汎用的で優秀だが、社員の給与明細を『ChatGPT』に教えようという気にはなりにくい。そうした外に出したくないデータなどに関しては、自社のためにカスタマイズしたAIに、社内の情報をインプットして学ばせていくことになる。
その流れを見据えて『IBM』は、今年、AIのオープン化に踏み切った。AIの基盤モデルをダウンロードすれば、各社の実情に合わせたAIが作れるようになる」(二上氏)。

「IBM」は、今年5月に開催した世界的なカンファレンス「Think 2024」(アメリカ・ボストン)で、AIのオープン化を発表。各企業はダウンロードで基盤モデルを取り込み、自社専用のモデルを作ることができるようになった。

しかし、どんどん進化していくAIを、企業側はどのように取り入れればいいのか。「最初の1歩が踏み出せない」という企業も多そうだが…。

田中教授は、「まずは既存の業務プロセスを見直し、AIの活用で、その業務がどう改善できるかを検討することが大事。他社のAIによる業務効率化の成功事例を参考にすることも有効」とした上で、自身のコンサル業務の経験を踏まえたアドバイスを送った。

「『ChatGPT-4o』になってから、動画や画像での企業診断ができるようになった。私が手掛けている小売業のコンサルティングの場合、これまでは対象の店に出向き、店舗のレイアウトや品ぞろえを1つ1つチェックしていたが、今はAIに理論と実践例を読み込ませることで、動画や画像だけで状況を診断できるようになった。このような画像診断から導入を始めるというのもいいのではないか。
“自分が旗を振っていく”という若い人に任せる、経営者がトップダウンで“ここはAI化しよう”というメッセージを打ち出すのが効果的」(田中教授)。

二上氏は、「まずは“手がかかっているな”と感じるところにAIを使ってみてほしい」とアドバイス。企業のリーダーが状況を見極めてAIにトライする…その姿勢が大切なようだ。

AI時代に必要な能力とは?


あらゆる分野にAIが広がることで、“仕事がなくなるのではないか”という懸念も。
アメリカで起きたストライキは記憶に新しいが、日本ではあまりそういう議論は行われていないと、二上氏は話す。

「日本では高齢化が進んでいることから仕事を奪われるという懸念より、人手不足の問題の方が深刻になっている。昔、自動車は人力で組み立てていたが、今では、ほぼロボットで作るようになった。その変化と同じで、単純に人間の仕事がなくなっていくのではない。人間には適応能力があるので、組み立てとは違う作業へと仕事をシフトできる。
IT業界も人材不足に困っている状況なので、プログラムの自動生成などは『ありがたい』と喜ばれている。つまり、人材をより付加価値の高い領域にシフトすることができる時代になったと考えられる。
例えば、どんなサービスを提供すれば商品を買ってもらえるのか、どうすれば、より社会が便利になるのか…という未来を創造する仕事に時間を費やすことができるようになる」

“AIニュータイプ”は生まれるか?


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「AIが進化すれば、同時に人間も進化する」と二上氏は話す。

「将棋の世界でも、『AI将棋が強くなると、もう人間が将棋をしなくなるのでは?』という話も出ていたが、実際、AI将棋と戦うことで、人間はより高度な将棋を打てるようになった。そして、AIを凌駕する藤井聡太さんのような“ニュータイプ”も誕生した」

AIの普及によって、今後、ビジネスで求められる能力も変わるのか。

「AIを使いこなすのか、AIに使われるのか。例えば、同時通訳アプリに身を委ねて英語力を退化させるのか、AI講師アプリと会話して英語力を進化させるのか。全てのスキルにおいて、人が進化するのか、しないのか。いま大きな分岐点を迎えている。AIは、過去のこと、データがあるもの、前例があるものに答えを出すことを得意としている。そんな時代の中でも、人に託されるのは、データがないもの、前例のないものに答えを出すこと、未来を創造すること」(田中教授)。

「IT業界では、これまで理系の人材はプログラムを作るのが得意だと思われてきた。しかし今後は、AIがプログラムなどを生成してくれるので、日本語で“こういうものを作りたい”と目的を明確に指示できる人材が必要になってくる。そうなると、理系よりも文系のスキルが求められるようになるかもしれない。日本語の能力やマネジメント能力があり、しっかりと指示ができる人。AI時代には、人間に求められる能力も変わってくるのではないか。
これからは、“AIを使って何かをする”という前提で教育も行う。AIがやってくれることはAIをうまく活用して、人間はAIを超えてやれることを学習する必要があると思う」(二上氏)。

最後に、AIの進化とともにどんな未来、どんな社会がやってくるのかを聞いた。

「人間は、もっとレベルを上げなければいけなくなる。『ChatGPT-4o』が登場したことで、今までコンサルティングとしてやっていた業務は、AIが肩代わりしてくれるようになった。だとすると、自分はもっとレベルを上げて、難易度が高いことをやるしかない。過去のことはAIに任せて、未来を創造する。前例がないことに挑むことが大切」(田中教授)

二上氏は、「私たちは、AIを使って新たな能力を身につけた人たちのことを“AIニュータイプ”と呼んでいる。そのニュータイプの人たちが、より付加価値の高い仕事にシフトして、新しいサービスや商品を生み出せば、社会はもっと良くなるはず。規則に準じてリスクを回避し、AIをうまくコントロールして使ってもらいたい」と話して、セッションを締めた。
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