「ボキューズ・ドール2025」舞台裏に密着!「チームJAPAN」悲願の優勝なるか:ガイアの夜明け
2月28日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「“美食世界一”をかけた戦い!」。
「美食のワールドカップ」と称されるイベント「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」に密着。海外からも高い評価を受けているニッポンの食。しかしフランスで開催される世界最高峰の料理コンクールで、日本は何度も高い壁に阻まれてきた。というのも、名だたる強豪国では国を挙げたバックアップ体制が整っており、日本とは練習環境などにおいて大きな違いがあるためだ。日本は逆境をはねのけ、悲願の優勝を果たすことができるのか。
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悲願達成へ…「チームJAPAN」の挑戦

フランス第2の都市・リヨンで2年に1回開催されるのが、現代フランス料理の父と称されるシェフ、ポール・ボキューズが創設した「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」。
「美食のワールドカップ」と呼ばれる大会で、出場するのは、選ばれし24カ国の精鋭たち。厳しい予選を勝ち抜いた新進気鋭の料理人ばかりで、「コミ」と呼ばれるアシスタントと2人1組で戦う。
制限時間は5時間30分で、肉をメインにした大皿料理と魚をメインにした料理を16人分作らなければならない。

今回日本でその栄誉を勝ち取ったのは、貝沼竜弥さん(31)とコミの藤田美波さん(22)。しかし日本は、これまで1度も優勝したことがない。
「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」が始まったのは1987年。今回で20回目を迎えるが、その歴史において日本が上位に食い込んだのは、2013年に3位になった1度きりだ。
貝沼さんは、「丸の内ビルディング」(東京・千代田区)35階にある高級レストラン「サンス・エ・サヴール」で副料理長を務めている。フランス人の三つ星シェフが監修する南フランス料理が人気だ。
新潟出身の貝沼さんは、地元の調理師専門学校を卒業後、全国にレストランを展開する企業に入社。10年間、研さんを積んできた。
そして今回、「ボキューズ・ドール」の国内予選にエントリー。全国の強敵を抑えて、見事、日本代表の座を勝ち取った。

「世界の有名なシェフに自分の料理を食べてもらえる。そういう機会を大会で得られるのは、僕のこれからの料理人人生にとって大きな財産になる」。
去年7月、貝沼さんは、自身が所属するレストランの系列店舗(東京・代官山)の調理場を借りて、料理の試作を続けていた。そこにやって来たのは、大阪「HAJIME」オーナーシェフの米田 肇さん。「チームJAPAN」で監督を務める米田さんは大阪から毎週のように上京し、貝沼さんをサポートする。米田さんは前回の大会で審査員を務め、世界最高峰のレベルを身をもって知る人物だ。
「1位2位のレベルは標準の三つ星よりもおいしい。1位2位は何を食べてもすっと口になじむ、とける、バランスがいいというところを徹底的に研究している」(米田さん)。

今回、貝沼さんをサポートするために、米田さん以外にも多くのシェフが集まった。
「星のや」の総料理長を務める浜田統之さんは、2013年に歴代最高の3位に輝いた人物。
京都にある高級レストラン「都季–TOKI–」の料理長・浅野哲也さんは、2年後の日本代表に選ばれている。こうしたトップレベルのシェフたちが「チームJAPAN」を結成し、日本代表の貝沼さんを支えている。
しかし日本は、資金面で世界から大きな後れを取っていた。スポンサーを募っているが、足りていないのが現状。「チームJAPAN」のメンバーは、無償で参加している。

「大観光時代になって、インバウンドの取り合いになる。そうなった時、世界でトップの技術を争う『ボキューズ・ドール』で優勝するというのは、ミシュラン三つ星と同じくらい価値がある。どこに行こうかという評価ツールの1つになる」(米田さん)。
世界一になることが、日本の食や観光にとって価値あることなのだ。
残暑が厳しい10月中旬。大会まで約3カ月となり、主催者側から肉料理の食材が発表された。メインは鹿肉で、他にフォアグラを加えたパイ包みなどを添えることが条件。伝統的なフランス料理だ。

その1週間後。貝沼さんは、課題に沿った試作品「鹿肉のソーセージとロースト」「鹿肉とフォアグラのパイ包み」を作り上げた。鹿の角をイメージした飾りも。
しかし試食が始まり、米田さんがきれいに仕上げたパイにナイフを入れると、粉々に。
「今回は0点に近い。洗練さというのをもうちょっと見極めていかないと、上位にはいけない」(米田さん)。
突きつけられた現実…。貝沼さんは、課題の食材と徹底的に向き合う日々を過ごしていた。
12月。大会まで1カ月をきり、大みそかの前日まで試作を続ける貝沼さんたち。今回魚料理の食材となるのは、フランスで広く使われている白身魚「ストーンバス」だ。
この日は、「ジョエル・ロブション」の総料理長、関谷健一朗さん、2007年の大会で6位に入賞した「DOWNTOWN CUISINE」オーナーシェフの長谷川幸太郎さんも参加。「チームJAPAN」に協賛している「辻調理師専門学校」辻 芳樹校長も駆けつけた(※“辻”は一点しんにょう)。

魚料理の試食はこの日で2回目。ストーンバスは、塩麹に漬け込んでロースト。これに指定食材のオマール海老とセロリを合わせる。

続いて運ばれてきたのは肉料理。貝沼さんは改良に改良を重ねたが、「パイのところだけが及第点からまだもう一歩」「側面で何かしたい。パイ生地が焼き上がった後に何か仕事が必要」「“美しい”まできていないので、そこが問題」と、またしても辛辣な指摘が。
大会まで残りわずか…貝沼さんは大きなプレッシャーと闘っていた。
優勝を狙う世界の猛者たち…日本を待つ結末は?
1987年から2年に1回開催されてきた「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」。 大会が始まってしばらくは、開催国・フランスが強さを見せていたが、徐々に北欧の国々が優勝を勝ち取ることが多くなっていた。中でもデンマークは優勝3回、前回も世界一に輝いている。

首都コペンハーゲンの郊外に位置する「コペンハーゲン・ホスピタリティ・カレッジ」に、強さの秘密があった。校内の一角に作られていたのはデンマークチームのトレーニングキッチンで、そこにいたのは、今回代表の座をつかんだセバスチャンさん(26)だ。
「セッティングは、大会の本番とほぼ同じ。同じコンロ、同じテーブル。寸法も全く同じ」。
セバスチャンさんは本番と同じキッチンを使用。しかも自分の仕事を1年近く休み、大会に向けて練習に専念していた。
作る料理の内容は早々に完成。あとは制限時間内で確実に調理できるよう、毎日タイムアタックを行っている。
国内の農家や食品産業を束ねる組織「デンマーク農業理事会」が代表チームのために集める資金は約1億円で、日本の3倍以上。さらに出場者には、トレーニング期間中の給与や住まいも提供し、サポートメンバーにも手厚い保障がある。
「予算の50パーセントが政府からの資金で、残りは民間のスポンサーにお願いしている。
『ボキューズ・ドール』で優勝すると、レストランはいつも満席になり、他国での評判が良くなる。デンマークを“美食の国”としてブランド化するのに役立つ」(「デンマーク農業理事会」メーテ・ヤスパー・ガミッキアさん)。
「ボキューズ・ドール」で勝つことが海外から観光客を呼び込むことになり、さらに自国の農産物の輸出を増やすことにもつながるという。
一方のフランスでも、大会での勝利が大きな経済効果を生んでいた。
フランス中部の山あいにある小さな村、サン・ボネ・ル・フロワ。交通の便が良いわけではないが、この村には、年間数万人の観光客が訪れるレストラン「レジス・エ・ジャック・マルコン」がある。オーナーシェフは、1995年の大会で優勝したレジス・マルコンさんだ。

「当時の私は、人口たった250人の小さな村から大会に参加した。それ以来、村の知名度は高まり、私自身も自分の腕を磨き上げる上で、さらに自信を持てるようになった」(レジスさん)。

そして今回フランス代表として戦うのは、激戦のヨーロッパ予選を勝ち抜いたレジスさんの息子、ポール・マルコンさん。国中が親子2代の優勝を期待している。
2025年1月11日。いよいよ、決戦の地・リヨンに乗り込んだ貝沼さん。向かったのは、リヨンから車で1時間ほどの場所にあるヴォー・ザン・ボジョレー村。ここにあるホテルレストランを借り切って、2週間の大会直前合宿を行う。

調理場には、作業台や調理器具が本番のキッチンと同じようにレイアウトされていた。
合宿の指揮を執るのは「チームJAPAN」の兵頭賢馬さんで、フランス滞在中のサポートを担当する。
この日は、本番を想定したタイムアタック。本番では、魚料理と肉料理を同時に作り始めるが、4時間40分までに魚料理を、5時間30分までに肉料理を仕上げなければならない。
2年後の日本代表を務める浅野さんは、コーチとして時間などを管理することに。

しかしこの日はアシスタント・藤田さんの遅れが目立ち、すべての調理を終えるのに7時間30分…規定より2時間オーバーする結果に。細かい作業が多く、時間配分が難しいのだ。
さらに料理の出来にも納得がいかない様子。一番の懸案は、やはりパイ生地だった。
試食したホテルレストランのオーナーシェフも「パイの生地が厚すぎて繊細さが失われている」とアドバイスする。
調理時間を短くしながら料理の質をより高めていかなければならない…貝沼さんは追い詰められていた。

そして迎えた1月25日。「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」決戦の舞台に、料理人たちが集結。貝沼さん、デンマークのセバスチャンさん、フランスのマルコンさん…日本が世界に挑む戦いが、いよいよ始まった――。
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