約3割が赤字経営「道の駅」に広がる格差…老舗が閉館のピンチ 再建の秘策:ガイアの夜明け


8月15日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「道の駅サバイバル!〜誰のためのものか〜」。

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夏休み真っ只中、旅の途中に、あるいは旅の目的地として「道の駅」を訪ねた人も多いはず。地域振興の目玉としても注目される道の駅は、今や全国に1200カ所以上もある。
地元の特産品販売や観光案内だけでなく、近年では防災拠点としての役割も期待されるなど、その存在感は増すばかり。しかし、盛況なイメージの裏で、約3割が赤字経営とも言われている。廃業に追い込まれる施設もあり、「格差」が広がりつつあるのだ。

成功すれば“地方創生の切り札”に、失敗すれば“負の遺産”にもなり得るが、自治体、事業者、住民、観光客…道の駅は誰のためのものなのか? “日本一”から赤字が続く施設まで、密着取材からその存在意義と可能性を探る。

神奈川・湘南エリアに誕生!ハイブリッド型「道の駅」とは


神奈川・茅ヶ崎市。7月7日、湘南エリア初の道の駅「湘南ちがさき」がオープン。この日は朝から100人以上が行列を作っていた。

約3割が赤字経営「道の駅」に広がる格差…老舗が閉館のピンチ 再建の秘策:ガイアの夜明け
道の駅の目玉といえば新鮮な野菜だが、この日はキャベツ1玉が50円。2階のフードコートも盛況で、「舟盛り定食」は地元の漁師が朝獲った魚をたっぷり使って2500円。湘南名物のしらす丼は、トロッとした卵も楽しめて1400円だ。

新たに誕生した大型施設に、地元の人は「びっくりした。自分の住んでいるところに道の駅…そんな風になったんだ、茅ヶ崎も」と笑顔で話す。
同じ湘南でも、江の島がある藤沢市や大仏のある鎌倉市は多くの観光客で賑わうが、茅ヶ崎の観光資源と言えば、サザンオールスターズとビーチぐらい。

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そんな街の起爆剤になればと誕生した道の駅。仕掛け人は「ファーマーズ・フォレスト」の松本 謙社長だ。松本さんは宇都宮市にある「うつのみや ろまんちっく村」など、全国各地で人気の道の駅を立ち上げてきた。
今回狙ったのは、観光客と地元客を取り込むハイブリッド型で、ただ単に地元食材を使うだけでなく、他にはないオリジナル商品として提供している。

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湘南のブランド豚をぜい沢に使った「湘南みやじ豚 角煮まん」が食べられるのはこの店だけ。地元で人気のアイスクリーム店も、茅ヶ崎の牧場から仕入れた牛乳だけを使ったオリジナルのソフトクリームを開発。湘南エリアの魅力が詰まった約2000商品がそろっている。

地域経済の期待を背負う道の駅は、誕生から30年、右肩上がりで増え続け、今や1200以上。しかし、ここ3年半で4駅が閉館し、全体の3割が赤字と言われている。
松本さんは「1200カ所もあると、うまくいっている所もあれば、うまくいっていない所もある。柔軟な発想でイノベーションを起こす取り組みをやっていかないと難しい時代」と話す。

人口2300人 の小さな村を支える“日本一”の「道の駅」


京都・南山城村(人口約2300人)は、京都で唯一の村。特産品はお茶で、これまでは宇治茶の主な産地の一つに過ぎなかった。
そんな茶どころが脚光を浴びるきっかけとなったのが、2017年にオープンした道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」だ。

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週末は朝9時の開店と同時ににぎわい、兵庫県から来た夫婦は、朝5時半に家を出たという。
お目当ては生産者の顔が見える「村のお茶」で、茶葉は1袋1000円。村のお茶を「村茶」とブランディングしたオリジナル商品も好評で、約30種類に増えた。

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レストランもお茶づくしで、抹茶の衣で揚げる天ぷらに茶そばがついた「お茶づくし御膳」が人気。抹茶ジェラートに点てたばかりの抹茶をたっぷりとかけたパフェも。
地元のお茶にとことんこだわった店づくりが話題を呼び、去年の来場者数は60万人以上。売り上げは6億円を超え(2024年度)、専門家が選ぶ「道の駅 最強ランキング」(2024年)で全国1位に輝いた。

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この道の駅を一から立ち上げたのが駅長の森本健次さん。地元出身の森本さんは元役場の職員で、過疎化が進む村ににぎわいをつくれないかと道の駅に目をつけた。その後は役場を辞めて、自ら駅長になったのだ。

村を知る森本さんだからこそ村茶のブランド化にこだわり、そうした取り組みが後継者不足に悩む地元農家にも変化をもたらしている。
茶農家の辻本英巳さん(※辻の字は一点しんにょう)は年収が3割増え、「農家はお茶の時期しか収入がない。(今までは)5~7月だけしか収入がなかった。道の駅に出荷したら毎月収入が入ってくる。それも魅力」と話す。道の駅は、村民を支える存在になっていた。

森本さんは「勝負するには、地域資源の価値を今一度見つめ直す。なりわいとして継続していける、暮らしとして続けられるところに持っていきたい」と、さらなる発展を見据えている。

建設計画に住民が真っ二つ!「道の駅」は誰のためのものか…?


茨城・那珂市は、水戸市に隣接する人口約5万3000人の街。カボチャやサツマイモなどが特産品で、農業が盛んな地域だ。
那珂市は4年前から道の駅の建設を計画。農産物の直売所や飲食店をはじめ、野菜の収穫体験ができる施設として2028年に開業する予定だが、市内に住む自営業の関 尚人さん(39)と6年前に会社を退職した遠藤秀男(69)さんは、この計画に反対していた。

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「30数億円をかけて箱物をつくるリスク。市民の税金が多数なので」(関さん)。
「正しいことをやろうとしているように見えない。そこに憤りがある」(遠藤さん)。
道の駅の建設に関わる費用は約30億円。国の補助金なども活用するが、それでも市は10億円近く負担することになる。

地元の農家は「道の駅ができたら、干し芋を出さないかという話が来た。出せたらいいなと思う」と前向きだが、街のスーパーで話を聞くと、「あった方がいい。地域的に寂しいから」「70代の主婦からしたら後世に負の遺産を残したくない。この街は、近隣にたくさん店があるし、直売所もある」と、市民の意見は真っ二つに割れていた。

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元々は先﨑 光市長の肝入りで始まった今回の計画。すでに議会で予算も承認されているが、1月に開かれた市民説明会では、十分な議論が尽くされないまま打ち切られたという。
そして、その説明会に納得のいかない市民たちが集まるようになった。

遠藤さんたちが問題視しているのが、売上予測の数字。那珂市は、道の駅の農産物直売所の売り上げを年間4億8000万円と試算しているが、遠藤さんの調べによると全国の平均は2~3億円。約2倍の売り上げを見込んでいた。

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また、近隣の常陸大宮市で営業している道の駅が年間60万人の来場で利益が約1300万円なのに対し、那珂市は年間95万人の来場で約7000万円の利益を見込んでいる。遠藤さんは「素人の僕でさえ見たらすぐ分かる。数字がおかしい」と話す。

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6月中旬、遠藤さんは那珂市役所を訪れた。実は遠藤さん、市議会に陳情を出しており、数字の根拠の提示と市民への説明会をもっと開いてほしいと訴えていた。
陳情が承認されれば、議会が市に対して要求してくれるが、この日、5人の市議会議員による多数決で、遠藤さんの訴えは認められなかった。

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陳情が退けられて1カ月。関さんたちは住宅街でチラシを配り、「道の駅を考える会」を開催しようとしていた。より多くの市民と情報を共有して広く意見を集め、市に見直しを求めようというのだ。市民の意見が割れる事態をどう考えているのか…取材班は那珂市長に話を聞いた。

赤字続きの「道の駅」が閉館のピンチ!再建の秘策は!?


一方、富山・南砺市。門前町として栄えた井波地区もまた、道の駅で揺れていた。
街の通りで目につくのが、木彫りの工房。250年前から続く「井波彫刻」は、200種類のノミを使ってツギハギせずに一つの木から作品を生み出すのが特徴。そんな日本一の木彫りの街にある道の駅が「いなみ 木彫りの里」だ。

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名前の通り、至る所に彫刻があるが、昼過ぎに館内を訪ねると、客の姿がほとんどない。
駅長の江尻大朗さん(40)は「道の駅と言っても山あいにあり、主要幹線道沿いとは別のところにある。目的地として選んでもらえないとなかなか来てくれない」と話す。
道の駅の多くは交通量の多い幹線道路に面しているが、「木彫りの里」はそうではなく、近くに人気スポットもない。

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目玉のはずの地元野菜も入荷はほとんどなく、棚はスカスカ。さらに、地域の憩いの場だった温浴施設も老朽化で閉鎖、10年も放置されたままになっている。

1992年、第3セクターとして誕生した「木彫りの里」は、国が道の駅の制度をつくると、1993年、道の駅 第1回登録の103駅に選ばれた。いわば道の駅の老舗だが、人口の減少に加えて団体旅行も減り、客足が遠のいた。

さらに2018年、市の財政健全化の方針で補助金も打ち切りに。幹部が退職していく中、江尻さんは火中の栗を拾う形で駅長になり、初めて経営の実態を知る。なんと、就任当時(2018年度)の赤字は、年間約5000万円に上っていた。

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江尻さんは、唐揚げ1キロとご飯をてんこ盛りにした爆盛メニューや、10段重ねたソフトクリームなど、アイデア商品を次々投入。集客を増やし、赤字は約1200万円にまで改善したが、今の自転車操業をいつまで続けていけるか分からない。

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富山県出身の江尻さんは、大学卒業後、地元の企業に入社。営業で回った井波の街に魅了され、今に至る。
早朝、道の駅に出勤した江尻さんはカマを持って草刈りをし、営業終了後も最後まで残って館内を回る。金融機関との交渉も大事な仕事で、返済を待ってもらう中、迷いも生じていた。
「誰のための道の駅なのか…毎日悩んで生きている」。

崖っぷちの江尻さん、大勝負に出ようとしていた――。

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