今度は“株配り”前澤友作氏が仕掛ける“国民総株主”構想:ガイアの夜明け
8月29日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは、「株主になる選択肢」。

【動画】今度は“株配り”前澤友作氏が仕掛ける“国民総株主”構想
NISAの拡充などを背景に、株式投資への関心が高まっている。8月18日の日経平均株価終値は4万3757円84銭となり、史上最高値を更新した。
1989年末に日経平均が38915円87銭を付けてから、再びその値を更新するまでに34年を要したが、日経平均はその後も上昇を続け、今ではバブルのピークより10%以上も値上がりしている。
相場の変動は不可避だが、個人株主のすそ野が広がり、株式市場に厚みが出てくるためには、「株式を長期保有する」考え方の浸透が必要だと訴える人たちがいる。
短期的な株価の値動きに一喜一憂するのではなく、価値を認めた企業の株を資産として保有し、長期的に株主になるという考え方だ。
ガイアは、「株主になる意義」を説く人たちを取材。さらに、企業価値を高めるために株式持ち合いを解消し、投資家との対話を強化する企業の取り組みを追う。
バブル経済の崩壊から30年…日本でも今度こそ、「株主になる選択肢」は定着するのか。
奥野一成氏 “バフェット流”長期投資の極意とは
7月、東京・千代田区にあるビルの一室で、個人投資家向けのあるセミナーが開かれた。主催したのは、投資信託「おおぶね」を運用している「農林中金バリューインベストメンツ」。投資信託は、広く集めた資金を投資の専門家が運用する商品で、「おおぶね」の最高投資責任者が奥野一成さん(55)だ。

「事業が強くなければ、(株価が)安くても持つ気はない」(奥野さん)。
NISAでも購入できる「おおぶね」の運用方針は、クレジットカードの「VISA」や「Amazon.Com」「Microsoft」など、自社で厳選した28社に投資(2025年7月時点)。その株を、原則的には長期で持ち続ける。
運用実績は1年以内で見るとマイナスになる場合もあるが、5年以上の保有を見ると、倍以上に増えていた。奥野さんは月に1度、個人投資家に運用方針を説明し、質問に答えている。

奥野さんは「日本長期信用銀行」などを経て、2014年に仲間と「農林中金バリューインベストメンツ」(社員:44人 運用額:3213億円 2025年7月時点)を設立。2017年から、個人向けの投資信託「おおぶね」の運用を始めた。
奥野さんが運用の手本にしているのは、“投資の神様”と呼ばれるアメリカのウォーレン・バフェット氏。バフェット氏は「買うのは株や債券ではなく、企業そのもの」という投資の哲学を持つ。
この日、投資先についての検討会議が行われた。集められたのは社内のアナリストたちで、それぞれ担当する会社がある。
「おおぶね」シリーズの投資先の一つが「味の素」。この日は「味の素」の経営状況を分析し、収益性が低い冷凍食品について議論を交わす。
「(冷凍食品は)場合によっては赤字。大手を含めてかなり多くのプレーヤーがいて、中小零細も多く、競争は激しい」(社内アナリスト)。

検討会議の翌週。奥野さんたちは「味の素」の本社(東京・中央区)を訪ねた。
中村茂雄社長と対面した奥野さんは、利益率の低い冷凍食品事業の今後について切り出す。
「安価なプライベートブランド品が増えていて、お客様の節約志向もあると思う」(中村社長)。さらに原材料などの高騰もあり、利益を生み出しにくい状態が続いていると教えてくれた。そんな中、中村社長は、自社の強みをアピールする。
「AIで栄養価値をしっかりと評価できる。我々は、真面目にサイエンスでやっている。そこを訴求できればと考えている」。
奥野さんは、「味の素にしかできないような勝ち筋のやり方に絞っていくべきかな」と助言。1時間じっくり中村社長と語り合った。こうして、企業の成長性を見極めていく。
「定点観測的に“去年より今年”“今年より来年”と見ていくのが、我々の長期投資としての目線」(奥野さん)。
本当に価値がある企業を探して株を持ち続ける…それが、奥野さんが示す“株主になる”選択肢だ。

6月中旬、ブラジル・サンパウロ。奥野さんは、10年前から投資している企業を訪ねた。その株価は10年間で7倍にも。奥野さんが、今後さらなる成長を見込んでいる世界大手メーカーとは――。
前澤友作氏「国民総株主」を目指すわけ
一方、日本で個人株主を増やすために前代未聞の仕掛けを考え、勝負に出た人がいる。かつてファッション通販大手の「ZOZO」を一代で築き上げた、実業家・前澤友作さん(49)だ。

「国民総株主」という理念を掲げる前澤さんは、去年2月に新会社「カブ&ピース」を設立し、11月にかつてないサービス「カブアンド」をスタートさせた。

電気、ガス、携帯電話など生活インフラ関連のサービスを提供し、その利用料金に応じて「カブアンド」の未公開株と交換できる株引換券を付与する。
「普通は、サービスを利用したお客様に対してポイントを配ると思うが、カブアンドではポイントではなく、株式そのものを配る。株式投資というハードルの高い世界に皆さんをいざないたい」(前澤さん)。
※実際に株式の付与を受けるにあたっては、所定の手続きを行う必要があります。

6月20日、第一期株主69万151名が誕生した。発行された株式は4億株以上、金額にして約12億5000万円に上る。
法務局への登記申請の書類も、前例のない量を持ち込むことに。約69万人という株主数は、「NTT」「トヨタ」といった日本を代表する大企業に次ぐ、国内9位(2025年6月17日時点)。未上場の会社としては異例のことだ。
しかも、今回株主になった人たちの半数以上は、株式投資未経験者だと言う。

ガイアは、「カブアンド」で初めて株式を保有した医師の路川さん(43)を訪ねた。軽い気持ちで株主になったという。
「カブアンドのサービス自体はポイントの付与と変わらない。それを株にするか、ポイントとして使うか。“ポイ活”の一環に入る」。
路川さんは、電気や携帯電話、ウォーターサーバーなどを「カブアンド」のサービスに切り替えた。
この時、路川さんが保有する株は7897株。発行価格が1株3円なので、単純計算で2万3691円になる。
「これが5年後、10年後にうまいこと上がってくれたら、それはただただラッキー」(路川さん)。
配送ドライバーをしている倉沢さん(35)も、「カブアンド」で初めて株主に。「衝撃的だった。『株あげちゃいます』という言葉が」。
テレビのCMで知り、すぐにクレジットカードやネット回線などを「カブアンド」に切り替えた。株式投資に興味があったものの、なかなか手を出せなかったという。
倉沢さんも、第一期の募集で6708株を保有。すると生活にも大きな変化が生まれ、今は株の勉強をしているという。

ガイアは、前澤さんを直撃。その先に思い描くものを聞くとともに、率直な疑問をぶつけてみた。
「カブアンドという仕組みが成功していった先に、大株主である前澤さんが一番儲かるのでは?」。
前澤さんが出した答えとは――。

市場と向き合う“ガチンコ経営”アシックスのCFO に密着
株主との向き合い方を変えることで、成長を模索する企業もある。スポーツ用品大手「アシックス」だ。

CFO(最高財務責任者)の林 晃司さん(53)が取り組んでいるのが、個人株主の拡大。「アシックス」のシューズを愛用している人が、「アシックス」の株も持ってくれる…これが林さんの描く構想だ。

「アシックス」は、2022年から売上高が3年連続で過去最高を更新。好調をけん引しているのがランニングシューズ。高級ラインの「オニツカタイガー」は海外でも人気だ。業績の好調を受けて、株価はこの3年で6倍に成長し、最高値を更新し続けている。

6月29日、「アシックス」は札幌のホテルで、個人投資家向けの企業説明会を開いた。「アシックス」の会長兼CEO 廣田康人さん(68)も駆けつけ、自ら業績を説明。このイベントでは、個人が企業のトップに直接質問をぶつけることができる。
会場には、足の形状を正確に測定できる装置も。自分にぴったりなシューズを見つけて愛用者になってもらう作戦だ。「アシックス」の株を持っている人も持っていない人も参加でき、今年は全国8都市で開催予定だ。
なぜ、個人株主へのアピールを強化しているのか。
世界のスポーツ用品大手の時価総額を見ると、「アシックス」は約2兆7000億円(2025年6月30日時点)で、「ナイキ」や「アディダス」に大きく差をつけられている。さらに去年、「アシックス」は、政策保有株、いわゆる「持ち合い株」を売却。企業株主との持ちつ持たれつの関係を手放したのだ。
「日本発のグローバルブランドになりたいということで、一生懸命やっている。世界で戦う。世界で“株式の持ち合い”をやっているところはない」(廣田会長兼CEO)。
2018年の赤字転落を機に経営改革を進める「アシックス」。その改革の肝は、株主の声を重視し、緊張感を持って経営にあたる“ガチンコ経営”にある。
林さんたちは個人投資家や海外の投資家の声を経営に生かし、さらなる成長につなげていきたいと考えていた。

企業間の株式持ち合いをやめたことにより、「アシックス」の株式の半分以上を海外の投資家が持つことに。「アシックス」は、売り上げの約8割が海外。つまり、林さんの主戦場も海外だ。
この日は、各国の財務責任者とミーティングをするが、そこで、海外の投資家が注目している“重要な経営指標”について課題が浮き彫りになった。
「投資家と“裸”で向き合う」ことを強調する林さんは、現場の状況を把握するために、すぐさまオーストラリアへ。株主ととことん向き合う経営改革に密着した。

この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!
※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。