41.8℃の酷暑…日本を変える「国産バイオ燃料」不屈の研究者20年目の逆襲:ガイアの夜明け


9月12日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、SDGsウイーク「バイオの炎 20年目の逆襲」。

【動画】41.8℃の酷暑…日本を変える「国産バイオ燃料」不屈の研究者20年目の逆襲

この夏は40℃に達する酷暑が続き、地球温暖化による気候変動の深刻さを実感させられた。
その温暖化の主な原因とされるのが、化石燃料の使用により排出されるCO2だ。
私たちは未来に向かってCO2の排出量を削減し、温暖化の進行を食い止めることができるのか。

2006年、ガイアは石油代替燃料として国産バイオエタノールの事業化に挑む研究者を取材した。大手ビール会社に勤めていた小原 聡さんだ。
当時番組では、小原さんのチームがエタノールの製造に成功するまでに密着。しかし会社では、2016年にバイオエタノールのプロジェクトが中止になっていた。
小原さんは2019年に会社を退職し、東京大学の特任教授としてバイオ燃料の事業化を目指している。

今回は、小原さんが種子島で進めているバイオ燃料のプロジェクトを取材。小原さんはなぜ、数々の困難に直面してもバイオ燃料の事業化を諦めないのか。新たな仲間たちとプロジェクトを成功させることができるのか――。
一人の研究者の不屈の挑戦を追い、日本におけるバイオ燃料使用の現状と未来への可能性を考える。

種子島で進む国産バイオ燃料プロジェクト


9/12ガイア
小原さんは20年にわたり、「九州沖縄農業研究センター 種子島研究拠点」の研究員と共に、新種のサトウキビづくりを進めてきた。

9/12ガイア
その成果が「はるのおうぎ」という品種。従来品種に比べて収穫量が約3~5割も多いのが特徴で、糖度は約22度。強風にも負けず真っすぐ育つため、機械での収穫にも適している。
この「はるのおうぎ」が、小原さんが挑むプロジェクトの可能性を一気に高めてくれた。

「新しいエネルギーをつくることができる。サトウキビには、人類が通ってこなかった道がある。砂糖の道だけを歩いてきた。それ以外の道を通っていない」(小原さん)。

小原さんは、主に植物由来の原料を使ってつくる「バイオ燃料」一筋の研究者。
バイオ燃料は、燃やせばもちろんCO2は出るが、植物は成長する過程で光合成によってCO2を吸収するため、プラスマイナスゼロとみなされる。
「(植物が)吸った分が出ていくので、そこはチャラ」(小原さん)。

「東京大学 先端科学技術研究センター」(東京・目黒区)にある小原さんの研究室には、賞状や表彰楯がずらりと並んでいる。2016年、3年に1度開かれるサトウキビ技術者の国際学会で「最優秀論文賞」を受賞。小原さんは「サトウキビのオリンピックで金メダルを取ったようなもの。この賞をもらったのは日本人では初めて。僕の中では一番価値がある賞だけど、これをもらった3日後に、経営会議で研究が中止になった。これを見るたびに思い出す」と話す。

9/12ガイア
小原さんは以前、「アサヒビール」の研究員として、ビール以外の新規事業に着手。サトウキビからガソリンに代わる自動車燃料「バイオエタノール」をつくろうとしていた。
2006年、ガイアは当時33歳の小原さんを追っていた。会社の片隅にサトウキビを植えてその可能性を試すなど、研究に明け暮れていた小原さんは、実証するためのエタノール実験工場を沖縄・伊江島に造ってもらい、苦労の末にバイオエタノールを完成させた。
「国産バイオ燃料」が事業化できる可能性を示したのだ。
ところが2016年、アサヒは海外のビール事業を買収するなど、本業に回帰。小原さんの研究は本格的な事業化を目前に控え、中止の憂き目をみることに。

「がっかりした。『もういいや』と、頑張る気がうせた。でもそのまま終わらせるのではなく、アサヒビール発の技術を使って、もっと発展させていく。事業化までもっていくことが、支援していただいた方への恩返しになる」(小原さん)。

2019年、会社を辞めた小原さんを受け入れてくれたのが、「東京大学 先端科学技術研究センター」杉山正和所長だった。小原さんの研究の先進性を買ったのだ。
「小原さんのように、企業で異端児として、自分の信念に基づいて事業を立ち上げてきた人が壁に当たった時、大学に移るのは決して悪いことではない。そのトンガリ具合が社会のニーズと整合し、あるところで社会の主流になる。これを私は『先端』と呼んでいる。大逆転を狙っている」(杉山さん)。

9/12ガイア
居場所を得た小原さんの研究グループには、東大を中心に20の企業などが参画。プロジェクトの軸はサトウキビで、多くの仲間が知恵と技術を持ち寄り、新しいエネルギー事業に結びつけようとしている。

舞台は、鹿児島・種子島。小原さんが頼りにするのが、サポートしてくれるプロジェクトのメンバーたちで、その一つが、種子島唯一の製糖工場「新光糖業」(鹿児島・中種子町)。
小原さんが企業の研究者だった時代から、実験などに協力してくれている。

9/12ガイア
工場内には、アサヒ時代に使っていたバイオエタノール実験用の設備も。新光糖業がアサヒから買い取ることで、その後も実験を続けることができた。

9/12ガイア
砂糖もエタノールも、原料は同じサトウキビ。煮詰めた糖液から結晶となってできるのが砂糖のもととなる「粗糖」で、その粗糖をつくった後に残る糖蜜は、食品廃棄物として島の外の業者に買ってもらっている。しかし糖蜜には、まだ糖分が残っているため、エタノールの原料として使えるのだ。
「島内で消費できるようにするといい。島内で利益が回る」。小原さんは糖蜜からエタノールをつくり、島の中で活用してほしいと考えている。

9/12ガイア
まずは島内でバイオエタノールを事業化し、夢への第一歩を踏み出したい小原さん。
しかし、砂糖の製造で手一杯の新光糖業は、事業化には慎重だ。今ある小さな設備でエタノールをつくったところで売り先があるのかも分からず、うかつには手を出せないという。

一方、世界に目を転じると、バイオエタノールを使うことはもはや常識だ。
アメリカでは、政府がガソリン消費量の10%相当をエタノールに置き換えることを義務づけている。エタノールの原料は、中西部の農業地帯で大量に作られるトウモロコシだ。
ブラジルやインド、タイなどでも自国でエタノールをつくり、少なくとも10%以上をガソリンに混ぜている。もちろん、CO2を減らすためだ。

9/12ガイア
世界に後れをとる日本も、ようやく動き出した。資源エネルギー庁が6月に出した方針で、2030年度までにガソリンにバイオエタノールを最大10%混合する目標を掲げたのだ。
そのため、ブラジルやアメリカなどから、エタノールの輸入を進めようとしている。
こうした国の方針に、自動車業界も賛同。実は日本国内でも、2023年度時点で、新車の4割がE10(エタノール10%混合ガソリン)に対応している(※日本自動車工業会 調べ)。

宇宙事業からの熱視線に応えられるか


9/12ガイア
この日、小原さんは「JAXA 種子島宇宙センター」へ。施設部の田渕 豪さんは、「『世界一美しい』と言われているこの射場に対して、見た目の美しさだけではなく、クリーンエネルギーにもつなげていきたい。先生と一緒にバイオ燃料の活動に取り組んでいる」と話す。
この宇宙センターも、小原さんのプロジェクトチームの一員なのだ。

9/12ガイア
見せてもらったのは、宇宙センター内にある自家発電所。ロケットを安全に打ち上げるためにも停電は決してあってはならないので、電力を自家発電している。
発電機の燃料に使っているのは、重油。石油製品なので、使う分だけCO2を出すが、年間約6000キロリットルの重油を使用している。「量を使っているので、燃料が変わるのはかなりのインパクトがある」(田渕さん)。JAXAはバイオ燃料を使うことで、CO2の排出を減らしたいと考えていた。

9/12ガイア
そんな中、「JAXA 沖縄宇宙通信所」でバイオ燃料によって発電機を動かせるのか、日本初の試験を行うことに。バイオ燃料である木材の炭を1000分の1ミリレベルに粉砕して混ぜることで、重油の使用量を減らすというが、果たして試験の結果は――。
小原さんと仲間たちは、地産地消かつクリーンなエネルギーを、宇宙事業に供給できるのか。

9/12ガイア
この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!
※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。
x
x