年間164億円の被害「獣害」が深刻化…対策の最前線を追う:ガイアの夜明け

9月26日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「緊迫!獣害と闘う」。
近年、人間と野生動物との関係に大きな変化が起きている。人が住む地域にクマが出没し、イノシシやシカが田畑を荒らす。
なぜ、野生動物による被害が増えているのか? 地球温暖化による動物の食料不足が起きるなか、過疎化による里山の荒廃や耕作放置地の増加、さらに猟師の高齢化による人手不足など、様々な要因が事態を深刻化させている。
国や自治体が主導する対策に限界があるなか、従来にない手法で害獣駆除とビジネスを両立させ、人間と野生動物の関係を新たに築いていこうとする企業が現れた。
それは一体、どんな仕組みなのか? 獣害対策の最前線を追いかける。
【動画】年間164億円の被害「獣害」が深刻化…対策の最前線を追う
北関東でイノシシが大量繁殖 深刻化する農作物被害

栃木県の南端から埼玉県、茨城県、群馬県に広がる渡良瀬遊水地。山から遠く離れたこの観光スポットに、10年前まではほとんど見かけなかったイノシシが急増。今では1000頭以上に。
農家の小堀貞雄さんは、収入源だったサツマイモをイノシシに掘り起こされ、わずか数日で食べ尽くされた。「全滅。被害額としては300万円ぐらい」(小堀さん)。
渡良瀬遊水地の周辺は、清らかな水を使った米づくりも盛ん。米農家の石川義夫さんは、150万円をかけて田んぼを守る柵を設置したが、それでもイノシシの侵入を防げないという。
畦が壊されると田んぼに水を引けず、コメを育てられない。

イノシシは体についたダニなどを取るために転がり回る「ぬた打ち」という行動を繰り返し、稲をなぎ倒す。たとえ収穫できたとしても大きな問題が。
「(イノシシの)臭いが(コメに)残る。嫌がられて、普通なら一等、二等だが、等外になって安くなってしまう」(石川さん)。

暗視カメラを設置すると、その夜もイノシシが現れ、柵の切れ目を見つけて田んぼに侵入。3頭のイノシシが稲穂を食べており、さらに巨大な1頭が柵を悠々と乗り越えていた。
カメラが捉えた映像を見た石川さんは、「最悪。このままでは、来年(コメを)作れなくなる」と嘆く。
栃木市役所には、連日イノシシ被害の相談が寄せられている。獣害対策係の栗原 靖さんは、「ここ数年で一気に問題が大きくなっている。捕獲に関しては、地元の猟友会に頑張ってもらっているが、ハンターの数が減っているので、駆除の担い手の確保が喫緊の課題」と実情を話す。
野生鳥獣による農作物の被害額は、全国で164億円(2023年度)。一方、ハンターの数はかつての半分以下で20万人ほどに減少し、60歳以上が約6割を占め、高齢化が進んでいた。

栃木県猟友会の関口 淨さん(75)は、栃木市役所からの依頼でイノシシの駆除を請け負っている。有害鳥獣に指定された野生動物は自治体が認めれば捕獲でき、関口さんが所属する猟友会は、去年1年間で30頭を捕獲した。
現状、被害を減らす手立ては他になく、1頭捕獲すると自治体から1万6000円の報奨金が出るが、人手は足りていない。
関口さんは「若い人は仕事を持っているから、見回りができない。(イノシシが罠に)入ったから今来てくれと言っても、仕事に行っていたら来られない。俺たち、あと何年持つか…」と、将来を案じていた。
獣害対策をビジネスに! 鉄道会社の挑戦
神奈川・小田原市。この街でも、境界線を越え、人間の生活を脅かすシカやイノシシが急増しているが、駆除を担うハンターは慢性的に不足している。

そこで始まったユニークな取り組みが「ハンターバンク」だ。狩猟に関心がある人を募り、指定された有害鳥獣の駆除に力を借りるというもので、狩猟免許の有無は問わない。
「ハンターバンク」を運営するのは「小田急電鉄」。小田急線沿線には田畑や山間部があり、野生動物との接触事故で電車が止まるなどの経済的な損失が出ている。

小田急電鉄ハンターバンクプロジェクトの有田一貴さんは、狩猟体験をビジネスにすることで持続可能な仕組みを作ろうと考えていた。
ハンターバンクでは、参加者が小田急に月額1万5000円の会費を支払う。その代わり、小田急は罠や監視カメラなどの狩猟道具を貸し出し、行政手続きのサポートなどを行う。
参加者は、3カ月にわたって捕獲や解体を体験。ハンターにお金を払って駆除するのではなく、狩猟の参加者からお金を貰い、駆除を手伝ってもらうという逆転の発想だ。
有田さんが発案し、3年前に始まったハンターバンクは、これまで約700人が参加。
現場には狩猟免許を持つ現地パートナーが同行し、この日は高校生の姿も。
参加者は当初の予想以上に増え続け、現状は赤字だが、来年度の黒字化を見据えているという。
「我々が予想していなかった趣向の人、例えば、家庭菜園をやっていて獣害問題に興味を持った人、自分で捕獲して食べることに興味を持つ人、狩猟がいろいろな角度から魅力を持ってもらえるコンテンツであることが見えてきてた。実はマーケットも大きいのではないか」(有田さん)。

8月下旬、ハンターバンクに「イノシシが罠にかかった」と連絡が入った。現場に行くと、大量のイノシシが。危険が伴う作業だが、どのように駆除するのか。
さらに有田さん、ハンターバンク事業拡大のため、“ある行動”を起こしていた――。
ハンターと飲食店を繋ぐ若き女性起業家

札幌・すすきの。ジンギスカンの激戦区に、連日満員の繁盛店「山小屋」がある。
人気の理由はエゾシカ肉で、臭みのない上質な赤身は、栄養価が高く低カロリー。うまみもたっぷり感じられる。
女性ハンターの高野沙月さんは、ジビエとしての評価が高まっているエゾシカに着目して起業。以前は、東京のデザイン会社に勤めていた。

「友達と行った店が、ジビエを扱う居酒屋さんだった。ジビエを食べたら、すごくおいしかった。自然にあるもの、山で育っているものがこんなにおいしんだとびっくりした」。
北海道出身の高野さんは、そんな経験から地元・十勝にUターン。狩猟免許を取得し、地域おこし協力隊として働きながら、北海道猟友会に所属した。

意外なことに、北海道猟友会には若いハンターが多く、全国のデータを見ても、20~30代の狩猟免許取得者は増加傾向にある。高野さんは、若手ハンターを活用すれば、駆除がビジネスになると考えた。
北海道では、近年、エゾシカの個体数が増え過ぎており、農作物被害や交通事故が深刻化。有害鳥獣に指定され、多くの地域で駆除が続いているが、食用として施設に持ち込まれるのは3割未満だ。
そこで高野さんは、2019年にハンターと飲食店をつなぐ会社「Fant」を設立。駆除したエゾシカの肉を飲食店に卸している。
繁盛している「山小屋」も、Fantからエゾシカのモモ肉を毎月120キロ仕入れている。

「お客様は、獣害対策のために買うわけではない。おいしいから買う、おいしくなければ買わない。魅力あるものが広まることによって、ハンターの活躍の機会が増えていくことが重要」(高野さん)。

高野さんが始めたのは、誰でも簡単にジビエ肉を購入できるネット販売サービスで、注文した肉は、宅配便で到着する。飲食店に限らず、個人でも購入可能だ。
注文があると、Fantから登録しているハンターに連絡が入り、対応できる場合はスマホを通じて返答。今回の注文は「シカのモモ肉3キロ」で、登録ハンターの鈴木克弥さん(33)が引き受けたが、この後、害獣駆除の知られざる苦労を目の当たりにする――。
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