【野菜が高騰!】「アキダイ」とレタス農家の挑戦 猛暑の窮地を救う「ヒートガイ」とは:ガイアの夜明け
10月24日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは、「野菜高騰の秋~レタス農家とアキダイの挑戦~」。
【動画】野菜が高騰!「アキダイ」とレタス農家の挑戦 猛暑の窮地を救う「ヒートガイ」とは
今年の夏の平均気温は、3年連続で過去最高を記録。こうした猛暑が引き起こす問題、それが野菜価格の高騰だ。暑さで野菜の生産量が減り、市場の需要に対して供給が追い付かないため、値段が上がっている。
長野・川上村は、夏秋レタスの生産量で全国シェアの約3割を占める一大産地。しかし川上村では、猛暑など異常気象の影響で、腐敗するレタスや規格外品が増え、市場に送る商品量が激減していた。結果、1個あたりの売値は上がったものの、農家の収入は例年に比べて落ち込んでしまうことも。
こうした野菜の異常事態に、小売りの現場も頭を悩ませている。「日本一有名な八百屋さん」と呼ばれる「スーパー アキダイ」(東京・練馬区)の秋葉弘道社長は、仕入れ値の上昇や品質の低下に直面しながらも、安くておいしい野菜を消費者に届けようと奮闘していた。
野菜の価格が高騰する中、作り手と売り手は何を考え、どんな対策を講じているのか…厳しい局面を打開するために挑戦を続ける人々の姿を追った。
消費者だけでなく、生産者も支える小売りの形…アキダイの挑戦

9月中旬、横浜市。野菜の品ぞろえが豊富なスーパーをのぞくと、大根1本299円(税抜き 以下同)、きゅうりは3本で250円、トマトは3個入りで499円の値段が付いていた。
客は「(野菜が)全て高い。安いもので料理するしかない」と話すが、その原因の1つが異常気象だ。特に夏の猛暑は野菜の生育不良を引き起こしている。
野菜の価格はこの5年間で、1キロ204~266円と約30パーセントも値上がりしていた。

「スーパー アキダイ」の秋葉弘道さん(57)は、年間のテレビ出演が約400件。どんな取材も断らず、野菜の現状や値動きについていつも熱心に伝えている。アキダイは安さを売りに、都内に9店舗を展開している。
しかし、そんなアキダイでも野菜の価格が上がっていた。「限界がある。(売値を)上げなかったら赤字になってしまう」と秋葉さん。
今年の猛暑の影響は秋葉さんの想定をはるかに超え、仕入れる野菜にも変化が生じていた。
中でも手を焼いていたのがレタスで、3割高くらいの状況が続いているという。
「品質が悪い時ほど相場が高い。レタスは特に言える」(秋葉さん)。品質は落ちるのに、価格は上がる…一体どういうことなのか。

秋葉さんが届いたばかりの野菜の状態を確認しに行くと、この日仕入れた長野・川上村のレタスが傷んでいた。外側の葉っぱが黒ずんでおり、段ボールの中に入っていたレタス12個のほとんどが傷んだ状態。
小売店によっては、野菜が1つでも傷んでいれば、他は問題がなくても箱ごと返品する場合があり、そうした野菜は廃棄されることに。食べられる野菜が廃棄されれば店頭に出る量も減り、結果的に価格が高騰する。誰も得をしないのだ。

「生産者の立場になったら、ちょっとダメなものが返品されることがうれしいかと言われると違う。多少ダメでも手をかけて販売してもらいたいと、僕なら思う。生産者が何カ月もかけて一生懸命育てた野菜だから」(秋葉さん)。
傷んだレタスを見た秋葉さんは、ここから勝負に出るが、果たしてどんな秘策があるのか。
さらに「野菜を安く仕入れる工夫は他にもある」という秋葉さんが向かった先は――。
“シェアNo1”レタスに迫る危機…救世主は「ヒートガイ」?
長野・川上村。村全域が標高1000メートルを超える高原地帯で、涼しい気候がレタス栽培に適している。本格的に栽培が始まったのは1950年頃で、進駐軍用に作ったのがきっかけだった。その後、食の欧米化でレタスの需要が高まり、高原野菜として人気に。
夏場は、全国シェアの約3割を占めるレタスの一大産地だ。

8月下旬、番組は収穫真っ盛りのレタス農家・川上真人さんのもとを訪ねた。
6~10月はレタス農家にとってかき入れ時だが、川上さんは「4つに1つくらいしかいい球(のレタス)がない。だんだん作りにくくなってきた…」と話す。

この日は、出荷予定だったレタスの4分の3が規格外。正常だと中心部分が丸まって球の形になるが、畑で大量に発生していたのは、葉が広がったまま球にならない「不結球」と呼ばれるレタス。主な原因は極端な暑さと乾燥で、今刈り取った2列はすべて不結球で出荷できないという。結局、予定していた7割しか出荷できず、約10万円の収入減少に。

川上さんのレタス畑は18カ所あり、その面積は合わせて5.5ヘクタール、サッカーグラウンド約8個分だ。レタスは約60日で育つが、川上さんはその面積を生かしてレタスをずらして栽培し、シーズン中はほぼ毎日収穫している。出荷用の段ボールは名前入りで、品質への責任が伴う。
農協の集荷場へ行き、朝採ったレタスを引き渡すと、出荷作業は完了。川上さんのレタスは、周辺農家から集まったレタスと一緒に冷蔵トラックに積み込まれ、東京はもとより、全国の市場やスーパーに運ばれていく。
今日の売り上げはどのくらいになるのか、川上さんに聞くと…実は野菜の価格は農家が決められないため、はっきり分からないという。

日本全国から農産物が集まる東京の大田市場。野菜の価格は市場で決まる。
仲卸や小売店が買いたい量に対し、出荷された野菜の量がどれだけあるのか…その需要と供給のバランスで価格が決まるのだ。

大田市場にも、川上村のレタスが届いていた。高温の影響を受けたため、今年7月下旬から8月中旬にかけて、川上村のレタスの出荷量は減少。同じ時期のレタスの卸売価格の推移を見ると、川上村の出荷量が減った時に価格が高騰している。
9月2日の卸売価格は1キロ283円(出典:農水省 青果物卸売市場調査)で、去年の同じ日と比べると、約1.2倍の価格。しかし、高くなりすぎると売れないため、レタス農家の損失を補えるほど価格は上がらない。

川上さんは、他にもさまざまな悩みを抱えていた。農薬や肥料は輸入の依存度が高く、年々価格が高騰している。2年前にトラクターと農薬散布に使う機械を買い替えたばかりで、さらに雇用しているフィリピンの技能実習生の時給もこの秋から上がることに。
「肥料や農薬、段ボール、機械、人件費は上がっているのに、上がらないのはレタスの値段だけ」(川上さん)。
上がる一方の生産コスト、猛暑による不良品の増加…川上さんは窮地を脱するために、次の一手を考えていた。

長野・塩尻市。標高600メートル以上の町に試験農場を持つ「タキイ種苗」は、日本でトップクラスの売り上げを誇る老舗の種苗メーカー。
1835年(天保6年)に京都で創業。代表作はトマトの「桃太郎」シリーズで、発売から40年のロングセラーだ。

農場長の石田 了さんが率いるレタスの研究チームは、暑さに強い新品種の開発に取り組んでいた。ハウスにあったのは、新品種開発のカギとなる植物。地中海沿岸から西アジアにかけて分布するレタスの野生種だ。野生種と現在のレタスを掛け合わせることで、時として新たな品種が生まれることがあり、試験農場ではさまざまな可能性を試している。
新品種を生み出すには、狙った特徴を持つ個体を選び出し、その性質を安定させるまで何度も交配と選抜を繰り返す。まさに気が遠くなるような作業だ。
「開発し始めてから世に出るまで10年くらいかかる。例えば、10年後は今よりもっと暑くなっているとか、そういうことを考えて品種開発をしないといけない」(研究員 倉田敬史さん)。

こうして開発に10年かけ、去年誕生したのが「ヒートガイ」。暑い環境下でも球を作る確率が高く、病気にも強い品種だという。

長野・川上村。「JA長野八ヶ岳」営農指導員の小池敬一さん(45)は、猛暑の中でも安定してレタスが作れるよう、村で新品種・ヒートガイの導入を進めている。あの川上さんにも声をかけていた。
川上さんはすでに作付けをしていたが、その量は全体の1割ほど。全てをヒートガイに変えることは大きな賭けだと、躊躇していた。
9月上旬、ヒートガイを植えた畑で初めての収穫。その成果は――。
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