エコバッグ“シュパット”が大ヒット!生活雑貨の「こうだったらいいな」をかなえる 老舗の挑戦者集団・マーナ:読んで分かる「カンブリア宮殿」

12月11日(木)に放送した「カンブリア宮殿」のテーマは、「発明型企業の全貌」。

【動画】“あったらいいな”を実現する 発明型企業の全貌

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累計販売1700万個!~生活雑貨でヒット連発の秘密


東京・渋谷区の「渋谷ロフト」に特設売り場ができるほどの人気の便利グッズが「シュパット」というエコバッグだ。どこにでもありそうなエコバッグに見えるが、一瞬で平たくなり簡単に畳める。外国人観光客も「シュパット コンパクトバッグM」(2491円)を手に取る姿が。日本のみならず世界で人気に火がつき、累計1700万個の大ヒットとなっている。

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エコバッグを畳むのは意外に面倒なもの。「シュパット」は生地を何層にも織り込み蛇腹にすることで、この面倒を解決した。両端を引っ張ると、折り目に沿って最初の状態に戻っていく。

このアイデア商品をつくるメーカーがマーナ。名前は聞き慣れないが、知らないうちにこのメーカーの商品を使っている人は多いという。

例えば、魚の形をした「おさかなスポンジ」(253円)は累計4000万個が売れた大ヒット商品。人気の理由はかわいい形だけではなく、泡立ちの良さにある。三層構造になっていて、真ん中のスポンジが洗剤をキープしてくれるから泡が続く。

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キッチンの上でも滑らない「滑りにくいまな板S」(2879円)や、しっかり密閉できるから湿度が変化しても砂糖などが固まらない「調味料ポット」(1280円)もマーナの製品だ。

マーナの本社は東京・墨田区の浅草のほど近く。創業1872年(明治5年)という老舗で、最初はブラシメーカーだった。

従業員は76人で2025年の売り上げは約80億円を見込む。一人1億円以上を稼ぐ、少数精鋭のメーカーだ。

マーナの商品開発の中枢にいるのがデザイナーたち。責任者の開発部・谷口諒太は、以前は「ヤンマー」でトラクターなどをデザインしていた。

「自分がやれる商品の幅が広いのが魅力的。実体験として『この方がいい』と感じているので、改善の余地があるのが生活雑貨だと思います」(谷口)

谷口が挑んだのが新しい傘の開発。ふだん傘に不満を感じることはあまりないが、「ぬれないように傘を差したのに、閉じる時に手がぬれる。当たり前になっていますが、不快だなと」(谷口)。

「シュパット アンブレラ 58cm」(6380円)は、生地を引き込むための骨をプラスし、引っ張ると生地がくるくる回り、内側に巻き込まれていく。骨ごと回せる構造を独自開発した。これなら留め具で止めなくてもまとまるので、閉じる時も手がぬれずに済む。累計15万本が売れた。

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マーナにはこうした発明家のようなデザイナーが11人いる。

「ボディタオルの女王」と呼ばれるのは岩崎有里子。「天使のバスタイム」と名付けられたタオルは200万枚のヒットになった。

「スポンジ博士」の長野純子は2026年1月に出す新商品「水ピカ キッチンスポンジ 3層」(396円)を見せてくれた。頑固な茶渋も、このスポンジを使えば洗剤を使わなくてもピカピカになる。

こんな調子で年間20アイテム以上の新商品を発売する。

新カテゴリーに次々と挑戦~マーナ、ヒットの法則とは?


「宅配便が来た時に、妻がひざをついてドアのストッパーを下げた。やまとなでしこみたいだと感動したんです。で、荷物を受け取った瞬間、ストッパーを蹴り上げた。これは何とかしないといけない」と言うのは社長・名児耶剛(42)だ。

そこでつくったのが「ドアを押すと解除できるドアストッパー」(5500円)。ペダルを踏むとドアが止まり、ドアを押してやるとストッパーが元に戻る仕組みだ。

「改良が大好き。進化させるのが大好き」と言う名児耶は、創業153年の老舗企業を引き継ぎ、今まで扱っていなかったジャンルにも挑み、会社を挑戦者集団に変えてきた。

「ドアストッパーも今までつくったことがないカテゴリー。傘もエコバッグも新しいカテゴリーです。『もっとよくできないか、変化できないか』と意識してやっています」(名児耶)

〇ヒットの法則1~出発点は生活のモヤモヤ

マーナの本社の中にある作業室。その一角で市販品のマッシャーを使ってジャガイモを潰していたのはデザイナーの開発部・有馬朝野だ。

彼女がモヤモヤしていたのが、マッシャーの穴についたジャガイモが固まってなかなか取れないこと。食洗機でも取れないことが多いと言う。

「洗い終わったのに汚れが残っているのを見るとがっかりします。そのストレスをなくしていきたい」(有馬)

マーナには3Dプリンターが置いてあり、アイデアをすぐに形にして試すことができる。

有馬が試作したマッシャーは思い切って穴をなくし、底にジャガイモを割るための突起をつけた。これをデザイナー同士で試しながら意見交換し、改良を重ねていく。30回以上改良し、2年がかりでたどり着いたマッシャーは、先のギザギザ部分でジャガイモを割り、滑り止めをつけた底で押しつぶす。洗い残しはちょっと拭いただけできれいになった。

この「つぶしやすいスプーンマッシャー」(990円)は2026年1月の発売が決定した。

〇ヒットの法則2~社員をやる気にさせるご褒美

現在、育休中の開発部・菊田みなみは「シュパット」を開発したデザイナーだ。

「こんなに売れるとは思わなかったです。びっくりです」(菊田)

「シュパット」誕生のヒントとなったのが、マーナの物流センターで研修の時に使った不織布のヘアキャップだと言う。蛇腹状に折られた物を、広げて使ったのだが、「両端を引っ張ると帯状に戻る。『なるほど』と思いました」(菊田)。

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菊田はこの帽子の構造をヒントに2年をかけて「シュパット」をつくり上げた。

会社からは年収の数倍だったというボーナスが支給された。それを住宅購入の頭金にし、出産費用や結婚式の会場代も賄ったと言う。

こうしてマーナは商品のつくり手も笑顔にしている。

明治から受け継がれる~“客目線”のものづくり


生活者目線でヒット商品をつくり出すマーナだが、かつては沈みかけた泥舟のような危機的状況に陥ったこともある。

創業は1872年。城専門の大工をしていた寅松が興した。明治になって城が建たなくなったため、外国人が洋服ブラシを使うのを見てブラシづくりに商売替えした。

この商いを発展させたのが2代目の清松。手に馴染むように角を取り、毛を抜けにくくするなど、改良を重ねた。

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清松は改良ブラシを持って浅草・浅草寺へ。仲見世にゴザを敷き、13年間、雨の日も売り続けたという。

「ゴザの上でブラシを売り続けたのは、常にお客様と接して意見に耳を傾けて商品を改良し続ける、使う人のために製品開発をするということ」(名児耶)

常に客目線を徹底し、商売を大きくしていった。

1990年代、ブラシ専業から生活雑貨全般にかじを切ったのが4代目で父親の美樹。4000万個が売れた「おさかなスポンジ」や「ブタの落としぶた」など、ロングセラー商品を生み出していく。

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「立つしゃもじ」も父親のアイデアから生まれた。アイデアマンであり、売り上げを5倍に増やした凄腕経営者でもあった。

「『常に良くしよう』が父親の考えで、現状に満足せず進化し続ける。尊敬しかないです」(名児耶)

新商品の9割が廃番に~泥船からの逆転劇


1983年に生まれた名児耶は商社で修行を積んだ後、2011年、マーナに入社する。

ところが営業マンとして働き始めた翌年、ヒット商品がピタリと生まれなくなり、マーナの売り上げは2割、減ってしまう。

「理由が分かっていたら打つ手はあったと思いますが、理由が全く分からなかった。その瞬間から父親に焦りがあって、開発スピードを求めたり、商品数を求めたり……」(名児耶)

当時、マーナは年に1回、商品展示会を行なっていた。父親はそこに100種類の新商品を用意させたのだが、付き合いの長いバイヤーから「面白いものが一つもない」と言われる。商品開発は迷走していた。

落としぶたの色だけを変えて新たに売り出したり、弁当箱の細かな所まで届くと販売してきたブラシのタグを変え、キーボードブラシとして売り出したりしたことも。小手先の商品開発が増え、新商品の9割が2年で廃番になっていた。

その頃から働くデザイナーは言う。

「たくさん開発するから1個の商品にかける情熱や機能を考える時間が足りなくなった。それが負の連鎖につながったのではないでしょうか」(前出・長野)

「長くかかるものは出さないで、早く開発しやすい商品が増えていく。『もうダメかも』と思いました」(開発部・山下紗恵子)

開発の現場は疲弊し、業績は低迷。見切りをつけた社員が毎月のように辞め、商品開発の責任者まで会社を去った。

そんな中、名児耶が驚きの行動に出る。開発は未経験だったが、責任者のポストを買って出たのだ。

「数やスピードに追われる開発メンバーを見るのはつらかったです。私は逃げるわけにはいかないと」(名児耶)

開発責任者になった名児耶は改革に乗り出す。年間100種類つくっていた新商品を半分に減らし、一つにかけられる期間を伸ばした。デザイナーが納得のいくまで開発できる体制に変えた。

例えば先述の「シュパット アンブレラ」は、谷口が100回以上、つくり直した。結局、完成まで5年かかったが、会社は見守ってくれたと言う。

「途中でめげそうになったこともあるのですが、『つくるべきだ』と5年をかけさせていただき、感謝しかない。つくり手にとって、こんないい会社はないんじゃないですか」(谷口)

名児耶は新商品をじっくりつくる一方、すでに販売している商品の改良にも力を注ぐ。例えば「シュパット」は折り目が消えにくい素材に変えた。

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すると2020年のレジ袋の有料化も追い風となって、マーナ史上最大のヒットに。業績はV字回復した。

「父親は100個くらい『シュパット』を買って友達にプレゼントしていました。『使ってみてよ』と。マーナはこういう開発をする会社だと父親も思ってくれたと思います」(名児耶)

会社の危機を乗り越え、名児耶は父親からバトンを受け継いで2024年、5代目社長に就任した。

コーヒーの味が変わる?~小さな幸せが拡大中


マーナの手がける商品が広がりを見せている。2022年、名児耶はアウトドアメーカーの「リバーズ」を買収。そのオフィスはマーナ本社の中にある。

「コーヒードリッパー ケイブ リバーシブル」(1430円)はアウトドア仕様。シリコーン製で、ひっくり返すと表と裏で突起の形が違うため、抽出のスピードが変わる。抽出スピードを速くすればサッパリした味わいに、遅くすればコクのある味わいになるという。

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アウトドアでも小さな幸せを生む道具のファンが増えている。

「人の暮らしに関わることは全てデザインしたい。家の中が強いマーナと、家の外が強い『リバーズ』が一緒になるのは理想的だなと」(名児耶)

「リバーズ」の最新作がコーヒー専用ボトルの「ドリンクボトル モク コーヒー」(4180円)。内部がセラミック加工になっているから金属臭がせず、コーヒーの汚れもつきにくいという。

マーナらしい工夫もプラスされた。仕掛けたのは設計担当の開発部・渡辺健二だ。

「気づかないようなわずらわしさを少しでも減らすのがマーナの強み。そういう開発を心がけました」(渡辺)

手を加えたのはふたの部分。一般的なボトルは2~3回、回さないと開かないが、「モク コーヒー」は、ひとひねりで開くようにした。特殊な構造を採用し、半回転で密閉。中身がこぼれないようになっている。

「僕らにないものを持っている会社なのでアドバイスをもらえる。広く知ってもらえるチャンスが増えました」(「リバーズ」営業部・柏崎雅之)

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~
創業1872年だが、明治維新が、1868年だ。「名児耶」さんに、そのことを聞きたいと思ったが、詳細はわからないという返事だった。初代がブラシ、刷毛の製造を始めたが、ほとんどの人は洋装など知らなかっただろう。そういうやり方は、今も生きている。誰も見たことがないものを、作って、売っている。「魚の形」をしたスポンジや、豚の形をした「落としぶた」、それに、とても小さく折りたためるバッグなど。社長は、大学生まで野球をやっていて、連携が必要な内野手だった。すべてを担うポジションにいたのだ。

<出演者略歴>
名児耶剛(なごや・ごう)1983年、東京都生まれ。2006年、学習院大学卒業。2008年、三菱商事マシナリ入社。2011年、マーナ入社。2024年、代表取締役社長就任。

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