「薬がない」ジェネリック供給不足の真実…業界再編で国民の健康は守れるのか:ガイアの夜明け
12月19日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「追跡!ジェネリック薬~製薬の“再編”が始まる~」。
【動画】「薬がない」ジェネリック供給不足の真実…業界再編で国民の健康は守れるのか
依然として供給不足が続く「医薬品」。今年はインフルエンザが過去10年で最も早く感染が拡大し、薬局に患者が殺到していた。そんな中、入荷が滞っていたのがジェネリック(後発医薬品)だ。国の医療費削減政策により、現在では処方される薬の約9割を占めるまでになった。その一方で、安定供給が危ぶまれているのだ。
その背景には、2020年以降に相次いで発覚したジェネリックメーカーの品質不正問題による生産体制の混乱に加え、国が定める「薬価」が毎年改定で下がっていくこと、そして「少量多品目生産」という業界独自の製造体制が複雑に絡み合っている。
この窮状を打開するため、今業界では新たな動きが…。国民の命と健康を支える「薬の安定供給」を実現するため、動き出した製薬業界再編の舞台裏に迫った。
不祥事と構造的課題の連鎖!“ジェネリック大手”の苦悩

今年のインフルエンザは、過去10年で最も早く感染が拡大しており、処方される薬の中には、すでに欠品も出始めている。
今、薬局などで出される薬の約9割がジェネリックと呼ばれる後発医薬品。値段は先発薬の約半額と安いが、欲しいと思っても製薬会社が出荷を調整しているため、ここ数年、手に入りにくくなっている。

大手ジェネリックメーカー「沢井製薬」(大阪市 従業員:約3300人 売上高:1890億円)。
その歴史は約100年前にさかのぼり、創業者夫婦が営む小さな薬局から始まり、1965年、ジェネリックが世に出始めたタイミングで医療用医薬品へシフトした。
その後、国がジェネリックの振興を推し進めると流れに乗り、ジェネリックの販売シェアでは、国内ナンバーワンを誇る。

そもそもジェネリックとはどんな薬なのか。
開発に巨額の費用がかかる新薬。最初につくられた薬は特許が最低20年間守られ、その間、独占的に販売できる。
一方、特許が切れた後、他のメーカーがつくるのがジェネリック。開発費が省け、値段を抑えられることから、国も医療費削減のために普及を進め、使用率は薬全体の約9割にも及ぶ。
例えば、「第一三共」が開発したロキソニンは鎮痛剤として有名だが、1997年に特許が切れた後、「沢井製薬」を始め19社からジェネリックが発売された。
しかし、後発薬だからといって簡単につくれるわけではないという。
公開される情報は有効成分の量や添加剤の名前くらい。後発各社は競争を勝ち抜くため、独自の技術を駆使することになる。

例えばこれは、少ない水で薬が早く溶ける沢井の独自技術。水分を制限されている患者や飲み込む力が弱い高齢者にやさしい工夫だ。
「効き目、品質、安全性は同じではないといけないが、より改善している。完全なコピーではない」(製剤研究部 伊豆井 航さん)。

ジェネリックが不足する中、沢井は特別チーム「製品戦略部」を立ち上げた。チームを取りまとめるのが、副部長の黒田正城さん(46)だ。
15年前、外資系医療機器会社から転職した黒田さんは、マーケティングや営業で戦略の立案を手がけた手腕を買われ、このプロジェクトに抜てきされた。
薬不足の発端は5年前にさかのぼる。ジェネリック大手「小林化工」(福井・あわら市)で、水虫の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入。約250人が健康被害を訴え、2人が亡くなった。
他でも、国の承認を得ていない製造方法やデータの改ざんといった不祥事が発覚するなど、ジェネリックメーカーで行政処分が相次ぎ、製造が停滞した。今でもジェネリックの約2割が供給不足に陥っている。
実は沢井には、製造が追いつかない同業他社から、連日「代わりにつくってほしい」との依頼メールが届いていた。
そこで黒田さんは、去年稼働を始めた「第二九州工場」の新棟を訪ねる。沢井の工場の中で最大規模を誇り、370億円以上を投じて造られた最先端の製薬工場だ。
黒田さんは増産を依頼するが、工場長の答えは「正直、厳しい」。できてから日が浅い新工場、人員の教育には時間がかかり、急な増産には人手が追いつかないという。

「薬が必要という状況で、それが出せないというのはあってはならないことだと思う。製薬会社としては、1日でも早く解決したい」(黒田さん)。
そんななか沢井は、薬の増産に向けて意外な一手を打っていた――。
中小メーカーの運命を懸けた戦い!再編の仲間は集まるか

国内の製薬会社は約330社で、そのうちジェネリックが180社ほどを占める。大手は数社で、それ以外は多くの中小メーカーによって成り立っている。
「辰巳化学」(石川・白山市 従業員:504人 売上高:116億円)は、ジェネリック業界では中堅企業の一つ。取り扱う薬の品目は、大手の沢井が約800なのに対し、辰巳は300。
番組は特別に、製造エリアを取材した。

ジェネリックの工場では、一つの製造ラインでさまざまな薬をつくっている。
辰巳の場合、製造ラインは全部で九つ。300もの薬を製造するために、一つのラインで何種類もつくる。

その度に「型替え」と呼ばれる部品交換が必要となり、この作業の間は製造ラインがストップするため、薬をつくることができない。
さまざまな薬を少しずつ製造することを「少量多品目生産」といい、これがジェネリック業界の常識になっているが、型替えの頻度も多く時間がかかるため、この効率の悪さが薬を増産できない大きな壁となっていた。
少量多品目生産にならざるを得ない理由が薬価。薬価は国が決め、ジェネリックの場合、先発薬の約半額から始まり、基本的には下がる仕組みになっている。しかも5年間は、同じ薬をつくり続けなければならない。そこで製薬会社は、利益率が高い新製品に次々と手を広げるのだ。
そんな「辰巳化学」を訪れたのが、「Meiji Seika ファルマ」(東京・中央区)ジェネリック事業戦略部 部長・小林郁夫さん(57)だ。
菓子メーカーの大手「明治製菓」は、1946年、ペニシリンの製造を機に医薬品事業に参入。2011年に「Meiji Seika ファルマ」(売上高:1440億円)を設立した。
先発薬やワクチンを手がけ、ジェネリックの分野でも売り上げトップ10に入る製薬会社だ。

Meiji Seikaファルマの小林さんは安定供給に悩む辰巳に、ある提案を持ちかけていた。
ジェネリック業界における少量多品目生産では、それぞれのメーカーが、同じ成分の薬をつくっている。そこで、複数の会社が手がける同一成分の薬を一つの工場に集約し、製造しようというのだ。これにより、時間がかかっていた製造ラインの部品の交換が減り、効率化が期待できる。この提案を受けた辰巳は、前向きに検討することに。
こうした動きは国が主導したもので、積極的に動いていたのは、当時の武見敬三厚生労働大臣。去年7月、厚労省に主要ジェネリックメーカー13社の代表が集められ、武見大臣は「成分ごとに適正な供給社数は、理想的には5社程度」と呼びかけた。業界の再編を促したのだ。

1年後の今年7月。「Meiji Seika ファルマ」が記者会見で発表したのは、「新・コンソーシアム構想」。中小のメーカーが連携して製造拠点を集約し、ジェネリックの安定供給を目指すというものだ。

この構想をけん引するのが「Meiji Seika ファルマ」小林大吉郎会長(72)で、社内のプロジェクト会議にも欠かさず出席し、ゲキを飛ばす。
「医薬品の安定供給は、個社の利益を超えて公益に資する話。国の予算の中で、社会保険の予算の中で事業を営んでいる。貢献するのは義務」。

部長の小林さんは会長の意を受けて動いていたが、ジェネリックメーカー同士の協業の難しさを感じていた。これまで約30社に声をかけたが、交渉は難航。
「これだけの会社と面談をしても、全く振り向いてくれない」。
苦戦しながらも、粘り強く交渉を続けてきた小林さん。そこにようやく、賛同してくれる会社が現れる。果たして、「新・コンソーシアム構想」の行方は? 薬不足は解消されるのか――。
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