【15年間人身被害ゼロ】クマと共存する軽井沢…資産価値を守るNPOの闘い:ガイアの夜明け

1月23日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは、「野生と共に生きる!~駆除に頼らない観光地~」。
2025年秋、東北地方を中心に連日、クマの出没が報じられた。出没回数は年によって大きく変動するものの、年間のクマによる死亡事故は13人と異例の事態だ。
中山間地域で進む過疎化や、住民や観光客の出すゴミ、気候変動の影響による森の変化が、人と野生動物を隔てる緩衝帯をこれまで以上に浅いものにしているという。
一方、多様な固有種が生息することから世界自然遺産に登録された「奄美大島」。絶滅危惧種の「アマミノクロウサギ」を守ろうと長年、島全体で取り組んできた。
その成果もあり、クロウサギの個体数は大きく増加。しかし、そのことが次なる問題を生み出していた。人と野生動物が共存するには? その境界線を巡る攻防を追った。
【動画】クマと共存する軽井沢…資産価値を守るNPOの闘い
クマによる人身被害15年間ゼロ…「軽井沢」の挑戦!

ニッポン列島を揺るがしたクマ問題。2025年は、出没件数も人身被害も過去最多を記録した。
日本を代表するリゾート地、長野県・軽井沢町。人口2万人の町に、年間800万人もの観光客が訪れる。別荘地としても名高い軽井沢は、ツキノワグマの生息域と人間の生活圏が重なり合うエリアも多く、かつては人が襲われたことも。
その対策に当たっているのが、NPO法人「ピッキオ」(長野・軽井沢町)。町からの委託を受け、24時間体制で7人がクマ対策に当たっている。
ピッキオの始まりは、1992年に「星野リゾート」が自然保護のために設立した「野鳥研究室」。1998年、軽井沢町でクマ被害が多発したことが転機となり、2000年、町から正式に委託を受けて対策を本格化させた。

深夜2時半、取材班は「ピッキオ」クマ保護管理チームの 井村潤太さんに密着した。クマが人里に近づいていると連絡が入ったのだ。
井村さんのパートナーは、北欧原産「カレリアン・ベアドッグ」のエルフ。名前の通りクマ狩りに使われてきた猟犬で、人里に出てきたクマを追い払うための特別な訓練を受けている。

現場に駆けつけた井村さんがクマの居場所を探知器で探ると、約100メートル離れたところにいることが分かった。
ここでエルフの出番。ゆっくりとクマに近づき、井村さんの指示に従って吠えたてる。人里に近づいていることをクマに警告するのだ。
井村さんが胸に付けたカメラの映像を見ると、エルフがクマのフンを発見していた。確かにここにいたようだ。
そして50分後、“追い払い”を終えた井村さんとエルフが無事に帰還した。

2025年10月下旬。今度は、ピッキオで主に夜間の巡回を担当している関 良太さんの見回りに同行した。「クマは個性あふれる動物。しっかり1頭1頭の個性を見極めた上で、クマに合った最善の対策を打っていく」(関さん)。
午後10時、関さんは車である場所へ向かう。「明かりがついている別荘などもあるが、一昨年ぐらいはここで目撃された。自然が豊かなので、人とクマの距離が近くなりやすい。条件がそろった町だと思う」。
関さんは、車を停めてクマの位置を探る。受信機とアンテナを使ってクマの電波を拾うが、そもそもなぜ、クマから電波が飛んでくるのか。

ピッキオの対策は、人里に近づいたクマを捕獲することから始まる。クマを麻酔で眠らせ、個体ごとの特徴を調べ上げる。そして、クマに発信器やGPSを取り付け、「人や犬は怖い」と学ばせた上で山に返す(学習放獣)。発信器などを付けているクマは49頭いる(2025年10月末現在)。

軽井沢の対策は、人とクマの生活エリアを明確に分けること。クマが境界線に近づいてきたら追い払い、境界線を何度も越えるなど、危険度が高いと判断した場合のみ駆除。2025年は1頭殺処分した。

クマ対策の活動には、地域住民の協力も欠かせない。
町のはずれに居を構えて50年以上になる神戸さん夫婦。夫の啓次さんが案内したのは、クマ対策がされたゴミの収集場所で、大きなクマが揺すっても倒れない頑丈な造り。さらに取っ手は、クマの前足では開けられない形状になっていた。
この対策で、かつて年間100件を超えていたクマによるゴミ荒らしは、2009年にはゼロに。

駅前のアウトレットモール「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」(売上高590億円 2025年3月期)。総支配人の清水 努さんは、「軽井沢は自然が豊か。自然の中でショッピングをしてもらえる。安全面が最も重要だと考えているので、軽井沢町の取り組みについては大変ありがたいと思っている」と感謝する。
軽井沢町がピッキオに支払うクマ対策費は2400万円(2025年度)。対策の甲斐あって、ここ15年、人の生活エリアでの人身被害はゼロだ。
クマ対策が商業エリアの安全を守り、別荘地としての資産価値を維持することにもつながっていた。

一方、養蜂家で「ハニープラント」社長の雨宮弘幸さんが作っているのは、添加物を使用せず、加熱していない「生ハチミツ」。森の中は農薬や汚染物質の影響が少なく、さまざまな花の蜜を集めることができる。
かつては雨宮さんも、クマによる被害に見舞われたが、ピッキオが雨宮さんに指導した頼もしいクマ対策とは――。
絶滅危惧種の宝庫「奄美大島」…クロウサギ急増で新たな問題

鹿児島・奄美大島。美しい海と日本有数のマングローブの原生林、亜熱帯ならではの動植物が見られる大自然が広がる。2021年、世界自然遺産に登録されたこの島には、多くの観光客が訪れる。

そんな奄美観光の目玉は、ナイトツアーだ。目を凝らすと、国の特別天然記念物「アマミノクロウサギ」がいる。世界中で奄美大島と徳之島だけに生息する絶滅危惧種だ。
しかし今、このクロウサギを巡り、島を揺るがす事態が起きていた。

奄美市は2021年、交通事故からウサギを守るため異例の交通規制を始めた。
夜間通行を予約制にし、東西の入り口からそれぞれ30分に1台のみで、時速10キロ以下の走行を要求。この規制を主導したのが、環境省で野生生物の保護増殖に携わる鈴木真理子さんたちレンジャーだった。
しかし、当初は予約をせずに訪れる人や規制を無視する人も。自然保護と島民の生活、どちらを優先するのか…意見が割れていた。

あれから4年たった2025年12月。再び三太郎線を訪ねると、事前予約などの規制が浸透しており、その成果は数字にも表れていた。2025年、三太郎線の年間の事故数が初めてゼロに。
こうした交通規制や外来種・マングースの根絶など、クロウサギに対する手厚い保護の効果が表れ、2003年の推定(中央値・奄美大島)2300匹から、2021年には約2万匹に。島で交通量が一番多い幹線道路にまで、クロウサギが姿を現すようになっていた。
そしてこのクロウサギの急増が、島でさらなる問題を引き起こす――。
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