HIS時代に合わせてチャレンジをする旅行ベンチャーのカリスマ:読んで分かる「カンブリア宮殿」
3月5日(木)に放送した「カンブリア宮殿」のテーマは、「令和を生き残る旅行ビジネス」。
【動画】新旧の旅行ベンチャー創始者が対談 令和を生き残る旅行ビジネスとは?
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2026年1月、静岡・熱海市であるHISの旅行ツアーが出発した。乗り物は「グリーンスローモビリティ」という電動車だ。
車に乗り込むとガイドが客にカイロを配る。車に窓がなく吹きっさらしだからだ。その代わり熱海の街を五感で感じられ、電動だから静かで環境にも優しい。サイズが小さいので狭い山道も楽に進んで行ける。
到着したのは日本でも指折りの早咲きの梅が楽しめる熱海梅園で、真冬の花見を満喫。続いて温泉街に入っていくと、糸川遊歩道では早咲きで知られる「あたみ桜」のもとで一足早い春を楽しむ。約3時間のミニツアーは1910円と格安だ。
HISが頭角を現し始めたのは約40年前。それまで大手が強かった旅行業界で海外への航空チケットを破格の値段で売り出した。さらに格安のツアーも連発。日本人の海外旅行に一大革命を起こしたHISは飛躍的な成長を遂げてきたのだ。
そんな会社を作り上げたのが、カンブリア宮殿4回目の登場となる創業者・澤田秀雄(75)だ。3年前に会長職を退いた澤田だが、2026年1月、取締役として経営の舞台に復帰した。
出社して最初にやることは、昔と変わらない。
「旅行客の予約数(の確認)。予約状況を見て『入っている』『入ってない』が分かる。(数字が)悪い時には担当者を呼んで注意する」(澤田)
デスクのそばには、澤田のこれまでの名札や創業当時からの名刺が。これらを見るたびに自分を鼓舞し続けてきたという。
「名刺も人も徐々に変化、進化をしていかなければいけない」(澤田)
澤田のカンブリア宮殿初登場は番組が始まった2006年。「成功する秘訣(ひけつ)は?」と聞くと「成功するまでやれば成功する」という独特の哲学は村上龍を驚かせた。
澤田の旅行ビジネスは電話機1台だけのベンチャー企業から始まった。1980年に「インターナショナルツアーズ」を設立。
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格安の航空券で旅行業界に一大旋風を巻き起こした後、1996年には「スカイマークエアラインズ」(現「スカイマーク」)を設立し、航空業界にも参入。運賃をそれまでの半額程度にし、世の中をあっと言わせた。
2010年には開業以来赤字が続いていた長崎・佐世保市の「ハウステンボス」再建にも乗り出す。
澤田は新たなアトラクションをはじめライトアップやプロジェクションマッピングといった大掛かりな仕掛けを導入。集客を増やしていき、わずか半年で黒字にしてみせた。
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澤田がカンブリア宮殿でよく口にした言葉が「チャレンジ」。いつの時代も澤田を突き動かしたのが、失敗を恐れないチャレンジ精神だった。
そして今、澤田は新たなチャレンジの場に直面している。近年、旅行の予約もAIなどの最新技術を生かし、人を介さずネットで完結できる時代になった。
「旅行会社にとって非常に大変な時代。1クリック2クリックで予約ができて旅行会社に頼らなくても海外旅行に行ける時代になったと感じます」(海外旅行事業部・山田大二)
だが澤田は、「AIは利用した方がいいが、やはり最終的には人が考えて人が決めていくべきだと思います。時代に合ったように新しいことにチャレンジをする」と言う。
【動画】新旧の旅行ベンチャー創始者が対談 令和を生き残る旅行ビジネスとは?

放送開始から丸20年のスペシャル企画~激動の旅行業界に迫る
2026年1月、静岡・熱海市であるHISの旅行ツアーが出発した。乗り物は「グリーンスローモビリティ」という電動車だ。
車に乗り込むとガイドが客にカイロを配る。車に窓がなく吹きっさらしだからだ。その代わり熱海の街を五感で感じられ、電動だから静かで環境にも優しい。サイズが小さいので狭い山道も楽に進んで行ける。
到着したのは日本でも指折りの早咲きの梅が楽しめる熱海梅園で、真冬の花見を満喫。続いて温泉街に入っていくと、糸川遊歩道では早咲きで知られる「あたみ桜」のもとで一足早い春を楽しむ。約3時間のミニツアーは1910円と格安だ。
HISが頭角を現し始めたのは約40年前。それまで大手が強かった旅行業界で海外への航空チケットを破格の値段で売り出した。さらに格安のツアーも連発。日本人の海外旅行に一大革命を起こしたHISは飛躍的な成長を遂げてきたのだ。
そんな会社を作り上げたのが、カンブリア宮殿4回目の登場となる創業者・澤田秀雄(75)だ。3年前に会長職を退いた澤田だが、2026年1月、取締役として経営の舞台に復帰した。
出社して最初にやることは、昔と変わらない。
「旅行客の予約数(の確認)。予約状況を見て『入っている』『入ってない』が分かる。(数字が)悪い時には担当者を呼んで注意する」(澤田)
デスクのそばには、澤田のこれまでの名札や創業当時からの名刺が。これらを見るたびに自分を鼓舞し続けてきたという。
「名刺も人も徐々に変化、進化をしていかなければいけない」(澤田)
澤田のカンブリア宮殿初登場は番組が始まった2006年。「成功する秘訣(ひけつ)は?」と聞くと「成功するまでやれば成功する」という独特の哲学は村上龍を驚かせた。
澤田の旅行ビジネスは電話機1台だけのベンチャー企業から始まった。1980年に「インターナショナルツアーズ」を設立。

格安の航空券で旅行業界に一大旋風を巻き起こした後、1996年には「スカイマークエアラインズ」(現「スカイマーク」)を設立し、航空業界にも参入。運賃をそれまでの半額程度にし、世の中をあっと言わせた。
2010年には開業以来赤字が続いていた長崎・佐世保市の「ハウステンボス」再建にも乗り出す。
澤田は新たなアトラクションをはじめライトアップやプロジェクションマッピングといった大掛かりな仕掛けを導入。集客を増やしていき、わずか半年で黒字にしてみせた。

澤田がカンブリア宮殿でよく口にした言葉が「チャレンジ」。いつの時代も澤田を突き動かしたのが、失敗を恐れないチャレンジ精神だった。
そして今、澤田は新たなチャレンジの場に直面している。近年、旅行の予約もAIなどの最新技術を生かし、人を介さずネットで完結できる時代になった。
「旅行会社にとって非常に大変な時代。1クリック2クリックで予約ができて旅行会社に頼らなくても海外旅行に行ける時代になったと感じます」(海外旅行事業部・山田大二)
だが澤田は、「AIは利用した方がいいが、やはり最終的には人が考えて人が決めていくべきだと思います。時代に合ったように新しいことにチャレンジをする」と言う。
カンブリア宮殿に4度目の出演~HIS創業者、澤田の新たな挑戦
〇時代に合わせた新チャレンジ1~旅行者に寄り添う店づくり
20年前の2006年、予約客が殺到したHISの旗艦店「トラベルワンダーランド」新宿本社営業所。近年、客のニーズが変化したことから2024年6月、店舗を移転しリニューアルした。

店内は以前に比べて物が少なくなり、ゆったりした空間に。さらに来店を予約制にして店内が混み合わないようにした。
「従来の旅行代理店は旅行の予約や手続きをする場所というイメージが先行していましたが、今はオンラインでの予約が主流になる中で、店舗に来ていただき、プロのスタッフと旅行先を選んだり、困っていることを解決していく」(「トラベルワンダーランド新宿」副所長・藤田彰)
旅行の手続きをする場所から、一緒に旅行をつくる店に。AI時代にあえて対面での接客で業績を伸ばしているのだ。
〇時代に合わせた新チャレンジ2~コラボで行きたくなるホテルに
澤田は2015年、「変なホテル」という画期的なホテルを開業。フロントの接客に導入した恐竜のロボットが大きな話題を呼んだ。いまその「変なホテル」が「変なさ」を増しているという。
千葉・浦安市の「変なホテル」舞浜 東京ベイ。その一室、「Hidy! Rascalルーム」は50年ほど前にアニメで人気を博した「あらいぐまラスカル」の新ブランド「Hidy! Rascal」とコラボした部屋。

泊まれば、ここでしか手に入らないコラボグッズがもらえる。
スタッフは「大人も懐かしいと感じていただき、ファミリー層を狙って展開しています」と言う。
他にも「チョコボールルーム」や「カルピスルーム」、航空会社の「Peachコラボルーム」など、コラボルームは53社と提携、売り上げアップにつながっているという。コラボルームの種類の多さで2025年、「変なホテル」はギネス世界記録に認定された。
こうした取り組みは社員のチャレンジによるものだという。
「みんな考えていろいろなことをやってくれる。もう僕はただ座って『よろしくお願いします』と」と言う澤田のチャレンジ精神は社員に受け継がれている。
そんな澤田に6年前には最大のピンチが訪れる。2020年のコロナショックで旅行業界は壊滅的なダメージを受け、HISも同年下期の海外旅行取扱高は前期比99%減と瀕死(ひんし)の状態に陥った。
それでも当時、番組に出演した澤田は「あまり不安はない。良くない時こそ元気にやろうと。その方が早く立ち直れる」と語り、ピンチに動じることなく次々と新たな策を打ち出す。飲食など、異分野へのチャレンジはどんどん進化していった。
〇時代に合わせた新チャレンジ3~最新技術で異分野にも挑戦
異分野チャレンジの舞台はゴルフだ。茨城・城里町の「水戸レイクスカントリークラブ」のコース上のカートの屋根の上には、人の動きを自動で追尾するカメラが設置されていた。

これは客のプレーを邪魔せずにAIの技術で自動撮影をするサービス。前半ラウンドを終えて戻ってくると、プレーを記録したデータがサーバーに飛ばされ、自動で編集したものが休憩中に出来上がってくる。動画には音楽やテロップもつけられ、ホールごとに違った角度からのスイングを見ることができる。この「Good Shot」は値段も1500円(1名料金 ※水戸レイクスカントリークラブの場合)と格安だ。
このサービスも社員の発案だという。
「『社内スタートアップ』という社員が挑戦できる機会があって応募しました。旅行に関係ない事業でも挑戦できる風土があったのでチャレンジした」(新規事業統括本部・西宮卓史)
世界に支店を次々オープン~ケニアでは宿泊施設も建設中
今、HISは新たな取り組みを進めている。
「日本の人口は増えないけれど、世界の旅行マーケットをみるとまだまだ旅行業はこれからです。今までは日本から世界へ旅行客を送っていましたが、今後は海外の旅行客を全世界で受け入れる」(澤田)
人口の減少が進む日本では今後、旅行者の数が頭打ちになる可能性がある。そこでHISは、日本人だけでなく世界58の国と地域、140の拠点を使い、海外の客を世界各国に送り出そうとしている。
近年では南米のボリビアにラパス支店をオープン。ターゲットは近隣諸国や北米の客。ペルーの首都リマにも支店を開き、新たな顧客開拓を狙っている。
「旅行をすれば当然ホテルも必要になるし、車、レストランの手配、その他いろいろなアクティビティが必要になってきます。これを各拠点でどんどん強化していこうと」(経営企画本部長・瀬川活)
例えばケニア南西部のマサイマラ国立保護区では現在、宿泊用のロッジを建設中。東京ドーム5個分という広大な敷地に25棟を設置し、アメリカやイギリスなど欧米の旅行客に狙いを定めていくという。
LINEで相談できる旅行予約サイト~AI時代の旅行ビジネスを占う
2026年1月、HISで大きな役員人事が行われた。澤田の息子・秀太(44)が社長に就任。若返りを図ったのだ。
いま旅行業界では若い世代が台頭。新たな旅を提供するベンチャーが増えている。
ホットスプリング社長・有川鴻哉(33)もそんな経営者の一人。WEBデザイナーを経て2017年、25歳の時に旅行会社ホットスプリングを創業した。有川の他に社員はエンジニアの3人だけだ。

「(競合他社と比べ)旅行会社としてやってきた年数やエンジニアの数では圧倒的に僕らに勝ち目はないので、しっかりとお客様が求めることを把握して、ただそこだけと向き合って一番大事な機能をつくっていく」(有川)
有川は2018年から海外旅行の年間取扱高数十億円にのぼる旅行予約サイト「こころから」を運営している。
「一番の強みはLINEでの旅行チャット相談です。相談を通して旅行の予約をしていただく。例えばファミリーでグアムだったら『これくらいの値段で宿泊できます』とか」(有川)
画面には航空券とホテルのセットプランが出てくるのだが、「1万円違うけど、何が違うかが分からない。そういった時にLINEで『相談する』と」(有川)。
そこから簡単なアンケートに答えると、旅行の相談がLINEのチャットでできるのだ。
「こういった『チャットでの相談』をイメージするとAIと話をしてAIが返してくれるのが主流」(有川)の中、このサイトでは十数人いるホットスプリングの専門スタッフが、AIで答える領域外の相談に対する答えを直接打ち込んで返信している。しかもスタッフは旅の達人ばかりで、AIの知識に加え、自身の経験も合わせた答えを返してくれる。
スタッフの一人は「海外旅行が初めての人も多いので、『どうしよう』『何をすればいいのか』分からない。基本的な旅の提案やおすすめはAIでもできる。人が寄り添うみたいなことはAIにはできないのではないかと思います」と言う。
AIの技術と人の心遣いを組み合わせたことが急成長の秘密だという。
「人の力を加えることによって、AIとだけ話をするのと比較して、旅行の予約に至る成約率が約8倍変わってくる。そこが非常に大事です」(有川)
AIと人との融合をシステムに落とし込んでいるのが3人のエンジニアだ。
その一人に、もっと大手の企業で力を発揮したいと思わないかと尋ねると、「ないです。資金力があれば勝ちやすいし、ほぼ勝てると思いますが、資金力で勝って何が面白いのか。ベンチャーやスタートアップをやる人は勝負が好き。『勝った・負けた』がある中で勝ちたい」と言う。
会社を大きくするつもりはないと有川も言う。
「全部お客様に還元できる。かかる人件費やオフィスの家賃が大手とは全然違うので」(有川)
有川の予約サイトのもう一つの売りが「らくらくキャンセル」だ。
「加入していただくと、旅行当日の朝、寝坊して空港に行けない場合でも、飛行機の出発時刻までに連絡いただければ全額お返しできます」(有川)

例えばソウル行きのあるプランだと、その加入料は5300円だ。
「旅行のキャンセルがどういう理由でどんな確率で発生するかを徹底的に調べました。多かったのは、例えば小さなお子様が当日熱を出すなどで、保険ではカバーできない理由が非常に多かった。その確率と旅行販売の仕組みをうまく組み合わせて『保証』という形で提供しています」(有川)
~村上龍の編集後記~
澤田さんは取締役として復帰した。何とか初期の苦労話を聞きたいと思うのだが、笑顔を見せるだけで、言わない。「成功するまでやれば成功する」という話を繰り返すだけだ。不老不死の研究が実を結んだ、10歳若返ります、そういうことを言う。有川さんは、よく喋った。印象に残ったのは「人間の果たす役割がわからないサービスは消えていく」という言葉だ。ITを駆使して極めて少人数でやっているビジネスなので、「人間の」という一言が意外性があった。考えたら、HISも店頭でのやりとりを重要視している。
<出演者略歴>
澤田秀雄(さわだ・ひでお)1951年、大阪府生まれ。生野工高卒業後、独マインツ大学留学。1980年、インターナショナルツアーズ(現エイチ・アイ・エス)設立。1996年、スカイマークエアラインズ設立。2010年、ハウステンボス経営再建に成功。2023年、エイチ・アイ・エス代表取締役会長を退任。2026年、取締役最高顧問として復帰。
有川鴻哉(ありかわ・こうや)1992年、東京都生まれ。2010年、早稲田高校卒業。2013年、女性向けメディア『MERY』を運営するペロリに創業メンバーとして参画。2014年、ペロリがDeNAによりM&A。2017年、ホットスプリング設立。
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