【水産革命】温暖化でサケが死ぬ危機…セブンやミツカンが出資する京大発ベンチャー「ゲノム技術」の凄み:ガイアの夜明け

6月19日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「“新たな地魚”をつくる!」。
【動画】肉厚「マダイ」に肝が大きい「カワハギ」“ゲノム編集”で挑む「水産革命」の全貌
かつて水産物の生産量が世界トップを誇った“水産大国ニッポン”。しかし、1980年代をピークに漁獲量は減少し、今や10位以下に転落してしまった。
国際的な魚の争奪戦や温暖化による海水温の上昇で、天然魚だけでなく、養殖業への影響がでている。
こうした状況の中、最先端技術での品種改良によって、漁獲量や味を向上させつつ安定供給を実現する「新たな地魚」を生み出そうとしているのが、京都大学発のスタートアップ企業「リージョナルフィッシュ」だ。
代表の梅川忠典さんと最高技術責任者の木下政人さんが挑むのが、「ゲノム編集技術」。これまでに、筋肉量を増やしたマダイなど新たな品種を生み出し、この新たな魚に、様々な大手企業も注目している。
一方、「ゲノム編集」に対する不安や反発は根強い。梅川さんは技術開発を進めつつ、漁業者や消費者、さらに政府などの理解を得るために奮闘している。
水産資源が危機的な状況の中、「フードテック」の力で日本の水産業の未来をつくる挑戦を追った。
新たな技術で「地魚」復活へ

日本では、昔から海産物は大事な食材だが、その価格は年々高くなるばかり。
「昔はイワシは1箱で500~1000円だった。今は3000円くらいになっている」(魚辰 店主・大武 浩さん)。「魚が高くなった」と不満を口にする客も。
深刻な人手不足、地球温暖化の影響で獲れる魚は減少。さらに世界的な魚ブームもあり、熾烈な争奪戦が起きている。

かつて、世界一の水産大国だった日本。しかし、40年前のピークから生産量は約7割減少し(出所:農水省 漁業・養殖業生産統計)、安定した生産量が見込める養殖を増やすことが課題だ。

宮城・女川町。ここは、ギンザケの水揚げ日本一で、宮城沖の養殖ギンザケは国内生産量の約8割。しかしギンザケは、海水温が20℃を超えると食欲が落ちて死んでしまうため、大きな打撃を受けている。
「トン数を上げれば利益になるが、獲れないと厳しい」(養殖漁業者・阿部壮大さん)。温暖化の影響で、養殖でも安定供給が難しくなっていた。

この窮地を救おうと、水産業の復活を掲げる企業が誕生した。
農産や畜産では当たり前に行われてきた品種改良。これを水産業で目指しているのが、「リージョナルフィッシュ」(京都市 2019年設立)の社長・梅川忠典さん(39)だ。
リージョナルフィッシュは、品種改良した養殖用の稚魚を販売。このビジネスを軌道に乗せようとしている。
「今後もゲリラ的に水温が上がって魚が死んでしまうことを前提に、魚の高水温耐性を強めることが求められている。もう一度、水産業や地域が盛り上がるよう、品種改良を進めている」(梅川さん)。
社名のリージョナルフィッシュとは「地魚」のこと。地域の魚を守り、新たな名産を生み出したい――そんな願いが込められている。
会社の強みは「最先端の解析技術を用いた品種改良」だというが、どんな技術なのか。

生後14カ月のギンザケを1匹ずつ取り出し、タグを入れていく。スキャナーをかざすと、個体番号が表示される。

すると今度は、ギンザケの尾ビレを採取。実はここに、新たな地魚を生み出すヒントがあるという。採取した尾ビレからDNAを抽出して機械にかけると、全ての遺伝子情報が分かり、ゲノムを解析できるという。

ゲノムとは、生物の体や機能を司る生命の設計図のことで、1匹として同じ配列のものはない。そのゲノムを解析することで、1匹1匹の特性を正確に見極め、掛け合わせることができる。
これまでの経験を頼りに交配させてきたやり方と比べ、格段に早く品種改良ができるようになった。
産地を救え~ギンザケプロジェクト~

リージョナルフィッシュのラボでは、鮭鱒類の品種改良を行っている。
現在取り組んでいるのは、高い海水温に強い、高水温耐性ギンザケの開発。
女川町を始め、一刻も早く、実用化が求められている品種だ。
開発を任されている服部ヒカルド修平さんは、ブラジルの大学で鮭鱒類を研究。梅川さんが期待を寄せる逸材だ。
この日、服部さんが向かったのは、京都府内にあるサケ養殖の研究施設。
水槽の中にいるのは、ゲノム解析で選び抜かれた「高水温耐性ギンザケ」で、通常より2~3℃ほど高い水温に耐えられるという。これを親にして、稚魚を生産するのだ。
(高水温耐性ギンザケは「ゲノム編集」の技術は使用していません)

2025年11月、高温に強いギンザケは女川町で海面養殖を開始。リージョナルフィッシュは宮城漁協の協力を得て、沖合300メートルに生け簀を作り、約800匹のギンザケを飼育、実証実験を続けてきた。
2026年5月、いよいよ品種改良をしたギンザケを初めて水揚げする時がやって来た。
今回水揚げするのは約200匹。まずは、冬の冷たい海での生育状況を確認する。
「1.5キロは越えている。予想以上に順調に魚が育った。真夏に向けて、高水温でどれだけ耐えられるか」(服部さん)。
このプロジェクトが軌道に乗れば、宮城県が誇る地魚、ギンザケが抱える問題を解決できる。

他にも、温暖化に対応できるギンザケを待ちわびる人たちがいた。
視察に訪れたのは、「セブン-イレブン・ジャパン」の商品開発担当者。地球環境の変化は、コンビニの食材調達にも不安を与えていた。
「サケは、おにぎりとかお弁当とか使用頻度が多い原材料。夏場に死んでしまい、手に入らなくなるのが一番心配。安定して調達できる未来になることに、一番期待している」(セブン-イレブン・ジャパン 商品本部 渋谷克彦さん)。

セブン-イレブン・ジャパンは、将来の魚の安定調達を見据えて、リージョナルフィッシュに出資。さらに、名だたる大企業が続々と出資している。
現在、NTTグループと合弁会社を設立し、巨大な陸上養殖場を建設中。2027年3月からは、大量の稚魚の育成を始める予定だ。

「ミツカン」も出資企業の一つ。梅川さんは、女川町で養殖したギンザケを、副会長の吉永智征さんに試食してもらうことに。
用意したのは刺身と焼き物だが、果たしてその味は――。

京都大学で経営学を学んだ後、投資機関に勤めた梅川さん。多くの日本企業の経営に関わる中で、水産業に可能性を見出したと話す。
「今困っている課題があって、海水温が上昇して養殖の名産品が育てられない。ギンザケなどを安定生産できる方向にもっていきたいと、短いスパンの中で考えている。長いスパンで考えると、農産とか畜産で起こったような品種改良を魚の世界にも広げていきたい。なぜなら日本の魚は世界で一番うまく、世界最強のプロダクトだから」。
そして梅川さん、これまでの魚の常識を覆す、さらなる技術開発に挑んでいた――。
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