キュウリやトマト…夏野菜が高騰!農家を救う「0℃保存」新冷蔵技術とは:ガイアの夜明け

8月14日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「野菜価格を守る0℃保存~酷暑・災害に挑む新冷蔵技術~」。
【動画】キュウリやトマト…夏野菜が高騰!農家を救う「0℃保存」新冷蔵技術とは
40℃を超える酷暑が日本各地を襲い、最盛期を迎えたトマトやキュウリなどの夏野菜に影響を及ぼしている。不作となれば農家は収入源を失う一方、野菜の販売価格は高騰。物価高に苦しむ消費者の家計にも追い打ちをかけることに。
そんな中、野菜を新鮮なまま長期保存する新たな冷蔵技術が生まれていた。その名は「ゼロコ」。保管庫内の温度を約0℃、湿度を100%近くに保つことで、野菜や果物が最大1年もの間、採れたてに近い状態で保存できるというのだ。
収穫期に、採れすぎたら廃棄し、価格を調整してきた日本の農業。ゼロコを活用して、最盛期に大量の野菜を保存し、不作時や災害時に販売することで供給量を調整し、販売価格と農家の収入の安定を実現しようと奮闘する人たちを追った。
そんな中、7月28日、巨大なゼロコを設置したばかりの熊本県で最大震度7の地震が発生。ゼロコで農家や消費者を救うことはできるのか、その真価が問われることに。
食の未来を変える“農業革命”の全貌に迫った。
連日の40℃超え…“高温障害”で農家の危機

酷暑の夏。3日連続で40℃超えを記録した岐阜・多治見市の農家では、異変が起きていた。
高温障害でキュウリやナス、トマトが枯れてしまい、売り物にならない。
夏野菜が最盛期のこの時期に、収穫量が激減していた。
酷暑の影響は、格安スーパー「アキダイ」(東京・練馬区)でも。
「キュウリ1本80円で売っている。この間まで65円だったが、一気に上がる。レタスも100円を切って売っていたが、3割以上値上げ。流通量がだいぶ減っている。仕入れ価格は3割以上高いが、販売価格は2割しか上げていない。利益を削ってという状況」(秋葉弘道社長)。
今が旬の夏野菜――。本来なら手頃に手に入るはずだが、価格が高騰している。
しかも、それが近年では恒例のような状態だ。

価格の変動が大きな野菜。その流通を変える取り組みを始めた企業が「ZEROCO」(東京・渋谷区)だ。
楠本修二郎社長が見せてくれたのが、社名と同じZEROCO(以下、ゼロコ)。
一見、普通の業務用冷蔵庫のようだが、冷蔵されている梨を切ると瑞々しいまま。
実はこれ10カ月以上前に保存した梨だという。1ヶ月半前に保存したレタスも、食べるとバリバリと新鮮な音が。
ゼロコで保存すると、レタスは約4カ月、キャベツは約8カ月、梨やリンゴなら約1年と、種類によって差はあるが、長期間鮮度を保つことができるのだという。
「農業を強くするためにできた技術。適正な時期に出荷ができるだけで、農業に良い経済的な環境が実現できる。価格を安定させていければ、全員にハッピーな食品流通ができる」(楠本さん)。

日本屈指の野菜王国、熊本。「植木青果市場」(熊本市・北区 取扱高:約46億円)は、九州でも有数の市場だ。
2025年、楠本さんは植木青果市場に小型のゼロコを設置し、野菜や果物の長期保存の質を試す実証実験を行ってきた。そしてその成果を受け、ゼロコとしては過去最大となる、約460坪の大型倉庫を建設。ZEROCOと植木青果市場が共同で運営する。

ゼロコのシステムは特許技術。倉庫内を約0℃、湿度約100%に保つことで、食材を長期間保存できる。
普通、レタスを冷凍し、解凍するとべちゃべちゃになってしまう。凍らせると水分が膨張し、細胞膜や繊維が傷つくため、味や栄養などを含む水分が流れ出てしまうからだ。

キュウリを冷凍するとハリがなくなり、ぐにゃぐにゃになるが、ゼロコで保存したキュウリはこの瑞々しさ。開発のヒントになったのは、北国の農家が雪の下に野菜を入れて保存する知恵だった。

楠本さんは、国内外に約60店舗を展開する飲食チェーン「カフェ・カンパニー」の創業者。
転機となったのは、2011年の東日本大震災。そこで、被災した人たちと交流を持った。
「東北の農家や漁師に生きる強さ、絶対に諦めない力を教えてもらった。今の自分にとって非常に重要な経験になっている。僕らが貢献というよりも、どう恩返しができるのか」。
農家から適正な価格で野菜や果物を仕入れ、安定的に消費者に届けたい――。
植木青果市場と組んだ今回のプロジェクトは、ゼロコの全国展開に向けた試金石でもある。
“豊作貧乏”“4割廃棄”…生産者を救う農業革命

「ZEROCO」事業推進本部の飯島智嗣さんは、楠本さんの思いを受け、植木青果市場の大型ゼロコに野菜を出荷してくれる農家を探していた。
この日、飯島さんが向かったのは、「TACOJIMA FARM」(宮崎市)。
サッカー場2面分もあるビニールハウスで育てているのは、夏野菜の代表、キュウリだ。
しかしここでも、野菜価格の乱高下が若き経営者を悩ませていた。その価格差は、7倍以上にも。
「(市場に一斉に野菜が出ると)暴落する。豊作貧乏…いいものができても、それを安く買いたたかれる」(農家・小玉さん)。
飯島さんは、こうした価格変動をなくすためにも、採れすぎた野菜を大型ゼロコに託してほしいと訴える。

この農家の豊作貧乏にさらに追い討ちをかけるのが、酷暑対策のコストだ。
日中は40℃を超えるため、ハウス内に冷房を完備。さらにミストシャワーで冷やし、高温障害を防ぐ。いくつもの対策をしなければ、キュウリの品質が保てないのだ。
しかし、どんなにコストをかけて良い商品を作っても、収穫が多すぎると値崩れを起こしてしまう…これが、今の日本の農家の現実だ。

「消費者の立場で農家は儲かっていると思っていたが、全然そうではない。生産者はむしろ、生活が苦しくて収入が適切ではない。この状況を変えなくてはいけない。ちょっとでも力になれれば」(飯島さん)。

4月上旬。この日、飯島さんが訪ねたのは、「アクアグリーンくまもと」(熊本・甲佐町)の吉田 猛さん。ハウスの一面に広がっていたのはサンチュだ。
この農家では18人の従業員がフル回転し、夏場は月約1000万円売り上げる。
採れたてのサンチュは味も抜群だが、日持ちしないのが難点。しかも、成長が早く収穫期を逃すと、育ち過ぎて商品にならなくなってしまう。吉田さんは、注文に備えて大量に生産しているが、売り先がなければ収穫して捨てるしかない。

「6割は商品になって、4割は廃棄」(吉田さん)。
ゼロコを有効に使うことで、こうした無駄は大きく減らせるはずだ。
そこで吉田さん、飯島さんの提案で、植木青果市場の小型ゼロコにサンチュを試験的に預けることにした。6週間ゼロコで保存したサンチュ、その結果は――。
食の流通革命!「ZEROCO」が日本の味を輸出産業に

一方、ゼロコの本社。この技術に目を付けたさまざまな企業が商談に訪れていた。
実は料理もゼロコで保存しており、この日は、大手家電メーカーの社員が来訪。1年間保存した「焼き鳥」などを試食すると、変わらない軟らかさに衝撃を受ける。
「ゼロコの技術で新しいビジネスができるのではないか。おいしい状態で保存して、国内・海外に日本の食の魅力を届けられないか」(家電メーカー社員)。

実はゼロコの技術で、一旦0℃まで冷やせば、その後に冷凍しても、品質が落ちにくいことが分かっている。
ゼロコは、すでに海外からも注目されている。
この日、台湾で飲食チェーンを展開する夫婦が試食したのが、1年以上保存していた「マグロの握り」と「海苔巻き」。
「すごく驚いている。この技術で食品鮮度を延長すれば、環境面でも大きなメリットがある」(台湾飲食チェーン代表)。

すでにゼロコのシステムを搭載したトラックやコンテナも開発。食品鮮度を維持したまま海外への輸出が可能だ。
日本の食材を使い、日本の職人が作った本物を世界へ――準備は整ったが、予期せぬ事態が。

7月28日、熊本で最大震度7の大地震が発生。特に農業が盛んな県の南部では、大きな被害が出ていた。
植木青果市場の地域は震度5強。7月29日、取材班は熊本へ飛び、地震直前に完成した大型ゼロコの様子を確かめに行く――。
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