老朽化する橋やトンネルを守る「スケルトン工法」「人型ロボ」も参戦!?…インフラ補修最前線:ガイアの夜明け

10月2日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「続・インフラ危機に挑む!」。
橋や道路、トンネルなど日本の交通インフラは高度経済成長期の前後に整備されたものが多く、いま老朽化が急速に進んでいる。一方で、調査・点検・補修に携わる労働力は減少の一途をたどり、維持管理がたちゆかなくなりつつある。
新たな技術でインフラ危機の解決に挑もうとしているのが、「エムビーエス」(山口・宇部市)の社長、山本貴士さんだ。既存のコンクリート構造物を特殊なシートとコーティング材で覆い、強度を持たせて寿命を延ばす「スケルトン工法」を独自に開発し、全国約1800カ所の老朽化したインフラを補修してきた。
番組は、山本さんを柱に進む2つの画期的なプロジェクトを追った。
【動画】老朽化する橋やトンネルを守る「スケルトン工法」「人型ロボ」も参戦!?…インフラ補修最前線
事故を未然に防ぐ! 異業種が強力タッグ

7月28日に発生した令和8年熊本地震。地面に亀裂が生じ、私たちの足元にひそむ危機を改めて露わにした。人々の暮らしを守ってきた道路や橋の安全性が、いま大きく揺らいでいる。
エムビーエスの山本貴士さん(54)は、橋や道路の補修を手がける専門家。この日、山本さんは被災地の状況を見て回る。ガイアは2025年から、山本さんの挑戦を追ってきた。
【2025年6月放送「インフラ危機に挑む!」】

山本さんが向かった小さな橋には、至るところにひび割れが。天井もかなり傷んでいるように見える。いつできた橋なのか記録はなく、いつ寿命が来るのか誰にも分からない。

この橋で、山本さんの独自工法による補修工事が始まった。ひび割れに充填材を施すところまでは従来と同じ。一般の工法では表面を塗装し、補修の跡を隠して仕上げるが、山本式はここからが違う。特殊なコーティング材を修復した壁面に塗り、独自に開発したガラス繊維シートをコーティング材の上に貼っていく。
「魔法をかけたように浸透し、透明化していく」(山本さん)。
山本さんが逆転の発想で生み出したのは、“隠さずに見せる”唯一無二のスケルトン工法だ。「従来の色のついたもので覆いかぶせてあると、どこまで傷んでいるか分からない。見えない所はどうなっているか、不安になる」。

2階建てビルの屋上から普通のコンクリートを落とすと割れるが、スケルトン施工したコンクリートは割れず、しっかり補強されていることが分かる。
さらに中のコンクリートが割れると、その部分が白く濁る仕組み。再補修の必要性が目で見て分かるのだ。
従来の補修に比べ、スケルトン工法の工事期間は3分の1。費用は3~4割安くなるという。
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コンクリートの寿命は、悪条件では50年と言われている。それを超えた橋は、すでに約42%、トンネルは28%。今後も加速度的に増えていく。

建設業界を驚かせたスケルトン工法は、山本さんが10年の歳月をかけ、2008年に開発。
その4年後となる2012年12月に、中央自動車道・笹子トンネル(山梨県)で崩落事故が発生した。「点検・維持管理体制が不十分だった」それが原因の一つと調査報告は指摘している。
笹子トンネルの事故は、スケルトン工法が注目されるきっかけに。トンネルや橋を補強するだけでなく、その後の点検もしやすくなるからだ。
現在、NEXCOやJRなどの補修工事、新規工事にもスケルトン工法が採用され、全国約1800カ所で道路や鉄道を守っている。

2025年12月。世界的企業「村田製作所」(京都・長岡京市)から、山本さんのところに共同開発の打診があった。村田製作所は、売上高約1兆8309億円(2026年3月期・連結)、世界で7万人以上が働く総合電子部品メーカー。自動車やスマホなど、電子機器に欠かせない積層セラミックコンデンサーの製造・販売で世界シェア1位を誇る。

執行役員で事業インキュベーションセンター長の安藤正道さん(61)は、関西学院大学で物理学を専攻したエンジニア歴38年のベテラン。数々の斬新な製品を生みだし、関わった特許数は130件。数百億円の売り上げに貢献してきた。
その安藤さんがインフラ危機に関心を持ったきっかけが、笹子トンネルで起きた崩落事故だった。
「コンクリート(の劣化を)検知できるものができないかと思っていたが、センサーではできない。みんなもそういう意見だった」。

それでも安藤さんは諦めず、コンクリートを見守るセンサーに挑み続けた。
そして2023年に試作したのが、ガラス管の中に「RFID」(識別情報入りICタグ)を入れたもの。電池は不要で、リーダーをかざすと個々の情報が読み取れる。
雨風に弱いICタグをガラス管に入れて守り、コンクリートにひび割れが生じると、同時にガラス管も割れ、中のタグが外気や水分に触れて腐食。リーダーからの呼びかけにタグが反応しなくなり、コンクリートの異変が分かるという仕組み。これが安藤さんのアイデアだ。
最大の課題は、いつどうやってガラス管をコンクリートに埋め込むか。
「面白いものを考えたけれど、どうやって使ったらいいのかと思っていたところ、出合ったのが、山本社長の技術」。果たして、安藤さんが考えた秘策とは――。
“頼れる相棒”を量産へ! ガテン系人型ロボ開発

2025年10月。エムビーエスの山本さんは、インフラ補修革命の次の一手を打っていた。
「ドーナッツ ロボティクス」(東京・港区)に1億円を投資、業務提携を結んだのだ。
ドーナッツ ロボティクスは、日本製の頭脳と中国製のボディーを融合させた人型ロボットで注目されている。
山本さんが期待を寄せるのが、ジェスチャーの指示を理解できる人型ロボット「cinnamon 1(シナモン1)」。騒音の激しい建設現場などでの活躍を見据えた技術で、特許出願中だ。山本さんは、シナモンをチーム・スケルトンの新戦力にと考えた。

深刻な人手不足に苦しむ日本の建設業界。工事を担う人材は減り続けている。
そこをロボットが手伝えるのか――。シナモン1が物を持ち運ぶためには、その物の特徴を一から学習する必要がある。
この時点では、学習に3カ月は必要。いずれは、物の特徴を瞬時に判断できることを目指している。

8月、愛知・知多市。山本さんが補修を請け負ったのは、床と壁がコンクリートで覆われ、かつて造船所として使われていた広大な施設。海水とともに船を出し入れし、造船や修理に使用していた。
海水のしぶきと潮風にさらされながら50年以上耐えてきたコンクリート…ここは老朽化が進む日本のインフラの縮図とも言え、山本さんはチーム・スケルトンの実験拠点にしようと考えていた。ここでインフラ補修の新たな技術を試せば、日本のあらゆる場所で使える。

この日、実験拠点にバージョンアップしたあのシナモン2がやって来た。将来の労働力を目指すシナモン2は、スケルトン工法の作業をじっと見つめ…いよいよその手が動き出す――。
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