新米が2600円台…【コメ余り】価格急落に振り回される農家の悲鳴:ガイアの夜明け

10月16日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「“コメ急落” 日本米の逆襲~農家と企業が挑む、稼げる農業~」。
【動画】新米が2600円台…【コメ余り】価格急落に振り回される農家の悲鳴
「令和のコメ騒動」から一転、今年はコメの民間在庫が6月末時点で過去最大の243万トンとなり「空前のコメ余り」に。スーパーの平均店頭価格は5キロ3000円を大きく割り込み、1月の高値から1500円以上も急落している。
高齢化が進み、廃業するコメ農家が過去最多を更新する中、米価の急落が生産者の経営を圧迫している。
そうした中、生産コストを大幅に抑えながら、コシヒカリよりも収量が5割も増えるという新たな品種に挑む農家や、日本のコメを海外へ売り込み、農家の経営を支えようと奮闘する人たちを追った。
収量はコシヒカリの“1.5倍”!「多収米」に挑む農家の親子

日本のコメ作りが、今、大きな転機を迎えている。
10月。「JA全農とちぎ とちぎ米広域出荷センター」(栃木・矢板市)の倉庫を見ると、去年の価格高騰で買い控えもあり、売れ残ったコメが山積みになっていた。
そこへ収穫された新米が次々と入ってきて、大量に在庫が積み上がっていく。

一方、横浜市にあるスーパーのコメ売り場を見てみると、茨城産コシヒカリの新米が5キロで2646円(税込)。全国の平均店頭価格は、一番高かった今年1月の4416円から1500円以上も下がっていた。仕入れ担当者は「11~12月には、(5キロ)2200〜2300円まで値段が下がると考えている」と話す。
「農家の皆さんが持続的にコメ作りをできる精算額(価格)でなければ、コメ作りは全国的に衰退してしまう」(JA全中 神農佳人会長)。
コメ農家の平均年齢は68.9歳(2020年)。高齢化や生産コストの上昇で、廃業する農家が3年連続で過去最多を記録している。今回の価格急落が、さらに追い打ちをかけることに。

3月。コメの高値が続いていた頃、すでに不安を感じていたのが、茨城県坂東市のコメ農家、染野実さん(65)。
「去年のコメがかなり余っていると聞いている。需要と供給のバランスだから、余れば(価格が)下がる」。

10人の従業員を束ねる染野さんは、価格の下落に備え、ある挑戦を始めていた。今年から新たな品種「とうごう44号」を作付けすることにしたのだ。
とうごう44号は、たくさん実がなる品種とコシヒカリを交配させたもの。「多収米」と呼ばれ、コシヒカリの約1.5倍の実がつくという。
「われわれも低コストで作れて儲かる、お客も安く買えて両方がウィンウィンの関係になれる」。染野さんは生産性を上げることで、価格の下落に立ち向かおうとしていた。

染野さんは低コスト化を図るため、田植えに替わる新たな手法にも取り組んでいる。
それが「乾田直播」。通常は水を張った田んぼに苗を植えるが、乾いた土に直接種をまいていく。苗を育てる必要がなく、水を管理する作業も減るため、田植えに比べて生産コストを約2割削減できるという。

今年から染野さんからコメ作りを学んでいるのが、娘婿の染野照大さん(34)。5年前に三女・由香さんと結婚し、2人の息子がいる。以前は自営業でブドウの栽培をしていたが、経営はずっと厳しかったという。
家族のために心機一転、染野さんの田んぼを継ぎ、コメ作りにまい進すると決めた。
染野さんは将来、照大さんにコメ作りを託したいと考えている。

5月中旬。2カ月前に種まきを終えた多収米「とうごう44号」が、乾いた田んぼでも無事に芽を出していた。しかしその後、染野さんが恐れていた事態に。

7月下旬。染野さんの会社の倉庫には、売れ残ったコメが山積みになっていた。
「去年の価格があまりにも高くなってしまったので、いろいろなところでカリフォルニア産米を使い、価格の安いコメに替えることがあった。そのために売れ残ってしまった」。
去年は価格高騰に振り回された染野さん、今年は一転、価格の下落と戦うことに。
そして8月11日、染野さん親子に最大の試練が訪れる。台風15号が観測史上初めて茨城県に上陸し、染野さんの田んぼに近づいていたのだ。
無事に秋の収穫を迎えることはできるのか――。
海外で稼ぐ日本のコメ! “最強ライバル”の牙城を崩せるか

実は染野さんは10年前、仲間の農家たちとある会社を創業していた。それが、コメを輸出する会社「百笑市場」(茨城・下妻市)。
国内のコメの価格が下落しても、輸出で収入を増やし、コメ農家が笑顔になる…そんな願いが込められている。
染野さんたちは海外のスーパーで試食販売も行い、日本のコメをアピールしてきた。

現在、その百笑市場の経営を託されているのが、社長の長谷川有朋さん(41)。アメリカのカリフォルニア州立大学で国際経済学を学び、帰国後は、横浜DeNAベイスターズでラミレス監督(当時)の専属通訳を務めていた。長谷川さんも茨城出身で、縁あって社長を引き受けた。
百笑市場は去年、約2300トンのコメを輸出し、世界37の国と地域に展開している。しかし、コメの輸出量は、日本全体では生産量の約0.6%に過ぎない。
「日本の食や文化が世界に広がってきている中で、海外への販路が広がることで、生産者の収入を維持する選択肢になると信じている。」(長谷川さん)。

4月下旬。長谷川さんは、アメリカ・ボストンへ。日本の伝統文化や食を紹介する「ジャパン フェスティバル」の会場に大量の日本米を持ち込んでいた。
長谷川さんは、北米やヨーロッパで流行り始めた“おにぎり”に着目。新しい食べ方を提案したいと、ブースで「焼きおにぎり」を販売することに。醤油を付けてこんがり焼いたおにぎりに具をはさみ、ライスバーガー風にアレンジした。スパイシーなツナが入ったものは約1200円。茨城産のブランド和牛をはさんだものは約2000円だ。
強気の値段設定にもかかわらず予想以上の売れ行きで、用意したコメ50キロ分の焼きおにぎりが完売。「少しでも生産者の皆さんに、未来につながる活動をしていると知ってもらいたいし、もっとコメを、日本の食文化を広めていくことができれば」(長谷川さん)。

しかし、ここ北米で、日本のコメよりも価格が安い“最強のライバル”が立ちはだかる――。
建機トップメーカー「コマツ」が農業の変革に挑む!
【2025年11月放送】

一方、鳥取市で低コストのコメ作りに挑むのが、大規模農家「トゥリーアンドノーフ」の徳本修一さん(50)。
徳本さんも、乾いた田んぼに直接種をまく乾田直播を取り入れ、大型ドローンによる肥料散布など、先進的な農業に取り組んでいる。
さらに、人工衛星のデータを活用して稲を管理。生産コストを従来の半分以下に削減できたという。徳本さんは「日本のコメ作りの生産性を違う次元に上げていきたい」と話す。

しかし、いくら頑張っても生産コストを下げきれない日本特有の問題があった。
「連なっている3枚の田んぼを1枚にしたい。1枚にしたら畦の草刈りも必要ないし、一つの水管理でできる。より大きな機械を入れて省力化できる。いくら乾田直播をやって機械を大型化・自動化しても、基盤整備が同時に進んでいかないと、本当の生産性の高いコメ作りには近づいていけない」(徳本さん)。
◆

5月中旬。売り上げ4兆円、建設機械で世界シェアトップ「コマツ」の小川啓之会長が徳本さんの田んぼを訪れた。
「日本でも大区画化をして生産性を上げて、どんどん生産コストが下がれば、競争力が出るし、海外輸出ももっとできる」(小川会長)。
徳本さんはコマツの協力を得て、いよいよ基盤整備工事に乗り出す――。
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