『カンブリア宮殿』リニューアルの手応え――大物経営者にも、過去の不祥事にも斬り込む【新MCのすごみ】

10月29日(木)~11月8日(日)に「テレ東系 日米経済WEEK 世界市場の最前線 ~稼ぐ秘訣を考える11日間~」を実施。
10月29日(木)夜11時06分からは「カンブリア宮殿 スペシャル」(MC:金原ひとみ、ヒャダイン)【進撃の富士フイルム!本業消失からの大変貌】を放送する。
【動画】「カンブリア宮殿」最新回

「テレ東プラス」は、番組を手掛ける小林史憲チーフプロデューサーを取材。
2026年4月に番組をリニューアルし、約7カ月が経過。新MCの反響、注目の放送回について話を聞いた。
等身大で生々しい対話が生まれるようになったのは、リニューアルの大きな収穫
――リニューアルから約7カ月が経ちました。ここまでの手応えはいかがでしょう。
「番組開始から20年経って初めての大きなリニューアル、責任とプレッシャーを感じながらのスタートでした。何が正解なのかが分からないまま、自分なりにもがいて悩み、新しい『カンブリア宮殿』の形をイメージしながら走り続けてきたように思います。
幸い、視聴者の皆様からは非常に良い反響をいただいています。一番うれしかったのは、『カンブリア宮殿』を長年視聴されてきたコアなファンの方々が、今回のリニューアルをしっかりと支持してくださっている感触があること。SNSの投稿やテレ東で取ったアンケートのコメントを見ても、想定以上に好意的な声が多く、胸をなで下ろしています。
現場の雰囲気も非常に良く、MCの2人が、こちらの期待以上に熱心に事前勉強をして収録に臨んでくれています。スタジオでも明るく温かい雰囲気を作り出しながら、聞くべき核心にはしっかりと切り込んでくれる。それに支えられて、この数カ月を乗り越えることができました。確かな手応えを感じ始めています」

――リニューアル初回の放送では、SNSでもMCの安定した落ち着きぶりが話題になりました。金原さんの存在感…ゲストへのアプローチも新鮮です。
「金原さんは、目の前に座る大企業のトップに対して物怖じせず、素直な視点で切り込んでいます。初回の冒頭『(ゲストは)雲の上の存在。引きずり下ろして話を聞く』と話していたのが印象的です。独特の視点と佇まいを見せてくれています」
――ヒャダインさんの回しやサポート力も、安定感があり素晴らしいですよね。
「テレビの進行に慣れていない金原さんをどうサポートしていくかが、私の中での課題の一つでした。ヒャダインさんの起用は、まさに狙い通り。テレビの経済番組でMCを務めるのは初めてですが、言葉選びの巧みさはもちろん、ゲストへのリスペクトを持ちながら場を和ませてくれる。慣れるまで数カ月かかるかなと思っていましたが、2人のコンビネーションは最初からかみ合い、お互いの強みを引き出し合っていると感じます」
――深い洞察と文学的な美しさが感じられる、金原さんの「編集後記」も見どころの一つです。
「金原さんの編集後記は、収録中に肌で感じた生々しい感触が色濃く出ています。それを持ち帰り、自宅でもう一度深く推敲してあの素晴らしい文章に仕上げています。実は、金原さんもヒャダインさんも、収録中のメモの量がすごいんですよ。トップの話を聴きながら、熱心にメモを取っている。金原さんは編集後記のヒントとして、ヒャダインさんは創作活動の学びとして吸収しようとしている姿が印象的です」
――初代MC(村上龍、小池栄子)からバトンを受け継ぐにあたり、チーフプロデューサーとしてはどのような思いがありましたか。
「番組の根幹を変えずにリニューアルするためのシンボルこそが、金原さんでした。芥川賞作家である金原さんは、私の中では村上龍さんの正統な後継者です。
金原さんが『蛇にピアス』で芥川賞を受賞した際の選考委員が龍さんであり、龍さんが彼女を強く推したという経緯があります。また、お互いの本の解説を担当したという縁もあり、文学的作風にも通じるものがある。根底に流れる“表現者としての精神”は脈々と受け継がれていると思います。
金原さんは子育てを経験している女性でもあるので、経営者に対して“日々の暮らしに根ざした素朴な疑問”を自然な形で質問できる強みもあります。通常の経済ニュース番組とは異なり、等身大で生々しい対話が生まれるようになったのは、今回のリニューアルの大きな収穫です」
“明日から自分の生き方や働き方を変えてみよう”と、ポジティブな影響を与えることができたら――
――リニューアル以降、特に印象的だった回について、見どころを教えてください。
【「伊藤忠商事」岡藤正広会長CEO】

「記念すべき、リニューアル初回です。セットやMCが変わっても番組の根幹は変わらないというメッセージを、ゲストの存在感で示したいと考えました。
カンブリア宮殿の魅力は“振れ幅の広さ”にあります。大企業からスタートアップ、地方の中小企業から町工場まで取り上げますが、新体制の第1弾は、やはり“誰もが知る大企業のトップ”でいきたかった。そんな中、過去に出演経験がなく、テレビ露出が非常に少ない大物として、絶大な実績を誇る伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOに意を決して出演をお願いしました。
商社の仕事は外から見えづらい部分がありますが、その舞台裏や“最強の商人”が語る商売の心得は、新体制のスタートに相応しい学びと驚きに満ちていました。
また、初回の拡大スペシャルでは、トップだけでなく部下や現場担当者をパートごとにスタジオへ招くという新しい試みも取り入れました。“トップと現場”の双方を見せることで、新生『カンブリア宮殿』のスタイルを提示できたと思っています」
【「東横イン」黒田麻衣子社長】

「リニューアルにあたり、女性経営者のゲストを意識的に増やしたいという思いがありました。日本社会において、大企業の女性トップは非常に少ないのが現状で、意識して探さないと年間50本の放送が男性ばかりになってしまいます。
東横インは、全国の支配人の98%以上が女性というユニークな組織です。そして、この回の大きなポイントは“過去の不祥事”にしっかりと切り込んだ点にあります。
一般的に、過去に大きな事件や不祥事があった企業は、経済番組として扱いが難しい。不祥事を無視して今の良い面だけを伝えるのは視聴者に対して不誠実ですし、かといって過去を責め立てるのも番組の趣旨とは異なります。
東横インの回では、黒田社長が父親(創業者)の代で起きた不祥事と正面から向き合い、スタジオで腹をくくって語ってくださいました。MCの2人も逃げずに切り込み、ゲストも誠実に答える。時間が経過し、改革を進めて実績を出している今だからこそ成立した、内容の濃い回になりました」
【「石川樹脂工業」専務 石川勤/会長 石川章】

「カンブリア宮殿のもう一つの大切な役割である“中小企業や地方で奮闘する企業にスポットライトを当てる”という精神を体現した回です。
石川樹脂工業は割れない食器『ARAS』で最近は話題になっていますが、元々は昭和から続く地方の町工場です。長年、大手企業のグラスなどを受注生産してきました。
取材中に、創業者である父・章さんから、東大卒でP&G出身の息子・勤さんへのトップ交代が行われて、経済番組を超えた“親子の事業承継のドラマ”が生まれました。
お互いがリスペクトし、どこか照れくさそうな職人肌の親父とエリート息子の関係性は、多くの視聴者に感動を与えられたと思います」
――8月27日には、放送1000回(ゲスト:三谷幸喜)という節目を迎えました。最後に、今後の『カンブリア宮殿』の展望をお聞かせください。
「20年前から番組に関わってきた一人として、1000回という数字は非常に感慨深いです。一方、4月にリニューアルした責任者としては、番組の歴史と伝統を背負いつつ、しっかり次世代に繋いでいかなければ、と身が引き締まる思いです。
SNSをリアルタイムで追っていると、半年以上経った今でも『MC変わったんだ』という声を見かけます。新しくなった番組の魅力を一人でも多くの皆様に届けていくことが目下の使命です。
番組をご覧いただいた方に、なんらかの「学び」や「気づき」を与えられることを目指しています。「明日から自分の生き方や働き方を変えてみよう」「ゲストの発想や戦略を会社や部署で取り入れてみよう」など、何か一つでもポジティブな影響を与えることができたら――。次の20年、そして2000回を目指して、皆様の心に届く番組を作り続けていきます」
【10月29日放送「進撃の富士フイルム!本業消失からの大変貌」】
いまインスタントカメラの「チェキ」が急拡大している。フィルムの生産が追いつかないほどだ。かつて一世を風靡した「写ルンです」も若者の間で復活。スマホ時代に一体なぜなのか?その裏には驚きの戦略があった。
2000年代に写真フィルム市場が消えるという危機に立たされた富士フイルムHD。その後、事業の多角化に活路を見出し、いまや、化粧品、複合機、医療機器、半導体、バイオ医薬品まで手掛ける。
売り上げは3兆3000億円を超えて過去最高を更新。実はチェキも2000億円を稼いでいる。率いるのが「写真事業はやめない」と宣言する社長の後藤禎一。写真フィルムの技術を武器に海外でも日本でも稼ぐ、富士フイルムの強さに迫る!
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