日米525億円調達「オイシイファーム」が描く【“新農業”100兆円産業】の野望:ガイアの夜明け

10月30日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)、拡大SPのテーマは「ニッポン発!世界で稼ぐ~“新農業”100兆円産業を創出へ~」。
【動画】日米525億円調達「オイシイファーム」が描く【“新農業”100兆円産業】の野望
日本人がアメリカで起業し、最先端の植物工場でイチゴの大量生産を実現した、いま注目のスタートアップ企業「オイシイファーム」。気温・湿度・光などをコントロールすることで、世界のどこでも日本と同じ環境を再現し、受粉に必要なハチの動きまでAIで徹底的に管理することで、これまで難しいとされてきた植物工場でのイチゴ生産を可能にしたという。
そのオイシイファームが日本に凱旋。東京で、「安川電機」など最先端技術を持った日本のトップ企業たちとオールジャパン体制で研究開発を加速。イチゴだけでなく、トマトやコメの生産、さらに植物工場自体の輸出を狙い、100兆円規模の産業を創出しようと動き出していた。
一方、マッキンゼー出身の若手経営者が率いる「日本農業」は、新たな栽培方法とブランド戦略で、日本のリンゴをアジア各国に売り込み、儲かる農業で生産者の減少をも食い止めようと挑んでいた。世界で稼ぐ日本の新農業、その挑戦を追う。
二つ星 銀座の名店も絶賛!植物工場でつくる“高品質イチゴ”

2024年、アメリカ・ニュージャージー州に「オイシイファーム」の巨大な工場が完成。
ガイアはその頃から、オイシイファームCEOの古賀大貴さんに密着していた。

ここで育てているのは“日本のイチゴ”。温度・湿度・光の波長などを制御し、アメリカで日本の環境を再現している植物工場だ。
「普通のイチゴは、日本だと12~4月くらいがシーズン。数カ月生産したら終わってしまう。我々の場合、365日通年でずっと同じ苗がイチゴを生産し続ける」(古賀さん)。
最も難しかったのが、ハチを使った受粉。これまで葉物野菜はつくれても、受粉が必要な野菜や果物を工場でつくるのは困難だった。しかし古賀さんは、最適な環境づくりと独自のAIでハチの行動を1匹単位で管理。植物工場では不可能と言われた、ハチによる受粉を成功させた。

さらに、イチゴを収穫していたのは、産業用ロボットで知られる「安川電機」のロボットアーム。オイシイファームが画像センサーを取り付け、独自に開発したAIが、イチゴの収穫期を判断。ロボットが自動で摘むよう進化させた。
オイシイファームでは、エンジニアが日々イチゴの状況をAIに学習させ、精度を上げてきた。今では植物工場で生産した“日本のイチゴ”を、アメリカ国内の500店舗に出荷している。
古賀さんは、コンサルティング会社に勤めていたが、2017年にオイシイファームを起業。世界的な食糧不足の問題に、商機を感じたためだ。
「農業が確実に立ち行かなくなる。気候変動、土地も水も人も足りない、そのうち農業はほとんどが植物工場に置き換えられる。これは時間の問題。そうなると、これは100兆円産業になる。そこでナンバーワンになるために、何が一番重要かを起業前から考えて、植物工場では無理と言われる作物、難しいものから挑戦している」。

やるからにはと、世界最高峰の市場・アメリカで起業。さらに果物の中でも、植物工場では最難関といわれる一つ、イチゴづくりにチャレンジ。試行錯誤の末、成功を収めた。
今や日米で525億円もの資金調達をするまでに成長している。
「ニューヨーク以外の地域に、できるだけ早く展開する。日本でこういった技術を得意としている会社がたくさんあるので、そういったところと組んで、日本で量産化モジュールをつくって、世界中に輸出していく」。
“植物工場専用”を東京から生み出す

古賀さんは、日本で本格的に動き始めていた。
2025年3月。古賀さんは東京・羽村市にある巨大な物流倉庫に、世界戦略の拠点となる植物工場の研究施設をつくることを決めた。
建設を担当するのは、オイシイファームの保坂栄太さん。前職のアマゾンではデータセンターをつくっていたが、植物工場をつくるのは初めてだ。
アメリカの植物工場で使っていた設備は、一般的な製品を独自にアレンジしたもの。植物工場専用のものは少なかった。今回は、専用の部品・設備を日本企業と共同開発する。

プロジェクトの成功のカギを握る人物が、オイシイファームの農業のスペシャリスト、玉城鉄さん。千葉大学で温室栽培の研究をしていた玉城さんは、古賀さんに口説かれ、2021年にオイシイファームに入社。アメリカに渡り、植物工場用のイチゴの苗をつくった人物だ。今回日本で、それを超える高品質なイチゴの開発を任された。
2025年7月。工場づくりが進むなか、同時並行で玉城さんはイチゴの種まきを始めた。日本の種苗会社などと共同で、さまざまな品種を掛け合わせながら植物工場専用の新品種をつくり出す。狙うのは、おいしく低コストで量産できる新たな品種。玉城さんの腕の見せどころだ。

しかし、3カ月経った10月。苗の育成状況を見ると、順調に育っている品種がある一方で、成長の悪い品種も。新品種の開発に失敗はつきものだが、玉城さんは量産化へ導くことができるのか――。
さらに番組では、オイシイファームの新たな挑戦の全貌を紹介する。
元マッキンゼーが挑む“儲かる農業”…幸せをよぶ「黄色いリンゴ」

台湾・台北市。市場内の青果店を見ると、日本産のメロンやブドウが並んでいた。
日本の果物は品質が高く、高級品として位置づけられている。
台湾の人たちにとって、果物は食卓の必需品。年間の果物消費量は1人当たり約115キロで、日本人の倍は食べている。
日本の果物の中でも、台湾で飛び抜けて売れているのがリンゴだ。ある量販店では、アメリカ産やニュージーランド産のリンゴは1個約150円だが、日本のリンゴは約500円で売られていた。
リンゴがほとんど採れない台湾で、品質が良くおいしい日本のリンゴは人気商品。特に“縁起が良い”とされる赤いリンゴが好まれている。
日本の青果物の輸出額は約440億円(2025年)で、リンゴはその約3分の1を占める稼ぎ頭だ。

そんな中、一大生産地・青森県で「リンゴ革命」を目論むのが、果物を輸出するベンチャー企業「日本農業」のCEO、内藤祥平さんだ。この日、内藤さんが訪ねたリンゴ農家の齋藤克康さんは、6年前、日本農業を通じて海外輸出を始めた。

こちらは、日本農業が独自に開発した「選果速報」。出荷したリンゴの数や品質が把握でき、いくらで売れるかもすぐに分かる。
「(輸出するようになって)だいぶ変わった。一番は単価。(国内の)市場や業者に出すと、最終的に精算されるまではいくらになるか全然見当がつかない。手を離した時点で、私のリンゴじゃなくなる。輸出で日本農業と付き合うようになって、リンゴの単価は安定するようになった」(齋藤さん)。

内藤さんは売り先だけでなく、新たな栽培方法も提案している。
リンゴは陽が当たることによって色づくが、リンゴを全体的に赤くするためには、実の近くの葉を取り除き、さらにリンゴを回す必要がある。リンゴ農家の仕事の6割ともいわれる重労働…これが常識とされてきた。
しかし内藤さんは「味は葉を取らなくてもおいしい。むしろそっちの方がおいしい」と話す。

これは葉を取らずに育てたリンゴ。葉の光合成による栄養で味が濃く、水分が多くなる。日本農業では、すでに「葉乃果」というブランドで売り出している。

内藤さんは、収穫を大変にしていた枝を四方に広げる木の植え方も一新。「高密植栽培」という細い木を約80センチ間隔で植える栽培方法を提案している。こうすれば、通路から簡単に収穫できるのだ。
しかも木を狭い間隔で植えるため、面積当たりの収量は約3倍になるという。
農家の手間を徹底して省き、葉を取らずに育てた黄色いリンゴ。さらに輸出によって、売り上げを約2割増やせるという。
「見過ごされている価値のあるものを、価値を感じてくれるお客に届ける、効率が良くないところを最適化していくことで、我々も生産者もみんな儲かるようになればいい」(内藤さん)。

内藤さんが日本農業を起業したのは、2016年。日本の農産品をアジアやアメリカに輸出し、売上高は約87億円に上る。
横浜市生まれの内藤さんは、高校生時代に自転車で日本を縦断し、全国の農家の窮状を知る。大学卒業後は農業を稼げるものに変えるため、2015年、大手コンサルティング会社「マッキンゼー」に入社。農業系の企業を担当した。
「これまで世の中はITや金融に人材とお金が流れていた。農業や一次産業が手薄になっていたが、しっかり投資をすると儲かりやすい時代が到来し始めている。新たな成長産業になりうる可能性がある」。

青森のリンゴの生産量は、この10年で2割以上も減っている。大きな要因が農業人口の減少。内藤さんは作業を楽にすることで、後継者を増やす取り組みも始めていた。
従来、リンゴの傷や色づきは農家が目で見て仕分けていたが、日本農業の最新選果機は、リンゴをレーンに置くだけ。内蔵された20台のカメラとAIを駆使し、リンゴを回しながら運ぶことで表面の傷や色づき、糖度などを1秒間に8個選別できる。

9月下旬。リンゴの輸出拡大に向け、内藤さんが仕掛けた。出来がいい黄色いリンゴを、台湾に輸出しようというのだ。内藤さんは、黄色いリンゴの販売を台湾支社長の小野祐司さんに託す。
葉を取らないため、手間が省ける黄色いリンゴだが、赤いリンゴが好まれる台湾で、小野さんはどう売り込むのか――。
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