金曜8時のドラマ『石川五右衛門』鮮やかな世界観に迫る 人物デザイン監修:柘植伊佐夫インタビュー 第3弾
【ドラマ『石川五右衛門』見どころ特集記事③】
市川海老蔵主演・金曜8時のドラマ『石川五右衛門』。その世界観を彩る鮮やかな衣装や、個性的なかつら・メイクー。通常の時代劇のテイストにモダンさを組み合わせた『石川五右衛門』の姿カタチを作り上げたのが、人物デザイン監修の柘植伊佐夫氏。
インタビューも今回で最終話。ドラマ同様、お楽しみください。
(第1弾はこちら。 第2弾はこちら。)
ドラマはどこをきっても"二重構造"になっている
―――秀吉と茶々の人物デザインは―
この役柄はどれだけ派手にできるかに尽きます。『石川五右衛門』というドラマをどう捉えていくかという話に関連しますが、たとえば「わびさび」という日本の美学は二重構造をそなえています。本作の中で、秀吉側は"豪奢"を表現する側。
五右衛門一家や市井の人間たちは社会のくすんだ部分、寂しさや"枯淡"の側に属しています。ドラマはどこを切っても二重構造になっており、その代表的な対立軸が秀吉と五右衛門だという事です。
もちろん秀吉ひとりの人物デザインにも豪奢でない部分もあります。分かりやすく豪奢だという部分とそうでない部分を混ぜています。秀吉はこの世界観の存在として豪奢を担当していますが、それは秀吉自身の全てを表現しているのではないのです。五右衛門にしても身をやつしているわけではない。寂しさを持ちながら派手やかさを使ってカブいている。相対する二極のものが実は一つだということの紐解きにつながります。
その両極をつなぎとめているのが茶々という存在です。茶々は芯が強いと言っても、秀吉の思惑によって豪奢を着せられているわけです。茶々が五右衛門の影響下になっていくことによって、違う感情や真実の自分が表立ちはじめます。それは衣装面にも微妙な影をおとします。
―――茶々の衣装の変化も―
茶々も派手ですよね。ただし五右衛門と一緒にいるという場面は、単に豪華だという雰囲気とは少し変わりますね。もちろん、屋敷の中か外かあるので、一概に心情変化だけとは言えないです。映像上の表現としては、五右衛門と関係していますね。この格好(下部・第6話)で秀吉の前にはいることはできないですよね。
茶々と秀吉では、当然秀吉の方が上です。立場が上の人間は軽い装いでいられますが、下の人間は上の人間に対して様式的でないといけない。
五右衛門と茶々の関係は人間的なつながりですから、ヒエラルキーの関係ではないということです。
―――二重構造の視点―
たとえば茶室があっても、ただ質素であるだけでは駄目ですよね。
秀吉のような名武将がいるから、バランスが取れている。草庵の裏に名馬がいるから、バランスが取れる。枯淡の構造体がないと秀吉も成立しない。秀吉の内部にもそれがある。全部が二重構造になっています。五右衛門もそうですよね。茶々も持っていますよね。みんな持っている。衣装や色彩からゲスト役の面白さが見つかる。
―――ゲストも魅力的―
徳川家康役に林家正蔵さんは、とてもいいキャスティングだと思いました。これについてはあまり言うことはありません。いいと思うままにスタイリングをして、顔も作ったということです。
このキャスティングでいいなと思ったのは、意外さです。けれども存在に非常に納得がいく。家康の人柄が良かったかどうかはわかりませんが、正蔵さんは人柄がいいじゃないですか。でも意外と意地悪な、ずる賢そうな顔つきができる。そして最後は笑える。これが五右衛門の世界観での家康として、すごく丁度いい、これはキャスティングの妙だと思います。
―7話に登場する服部半蔵(浜田学)の衣裳も印象的 ―
蛇皮を取り入れたのが一番の特徴ですね。スマートな革張りみたいな感じにしたかったんですよね。「蛍光の自転車の光シールをつけたいんだよね」と監督がおっしゃいました。
なので、そんな妙なものがついています。紋ではありません。つまり、これは抽象表現と似ているんですね。監督の頭の中では、ここに「ぴかっ」としたものが入る意識だったんだと思います。
「これはなんですか?」と聞くのは無粋ですね、理由はないんですから。面白いと思いました。
深く読み解く見方も良し、直感的な見方も良し
―――視聴者に注目していただきたいポイントを―
作り手側は漠然と髪型を作ったり、衣装を作ったりしているわけではなく、それぞれに意味を持たせて作り込んでいます。奇想天外で荒唐無稽な形に落とし込むこともあるのですが、しっかりと意味を持たせています。
「どんな意味を持って着せているのかな」、「これはこういう関連性があるのかな」という風にご覧になるのも一つの楽しみ方だと思います。衣装だけでなく姿形全てに連携性があるので、それを紐解こうとしてみるのも面白いかもしれないですね。
答え合わせするわけではありませんが、宗教画に暗喩があるのと似ています。
時代劇もそれぞれ意味合いを持っているので、難しい話ではなく直感的に「これとこれは繋がっているのかな」、「この色とこの色はこういう意味があるのかな」とかそういう見方も面白いですね。
単純に「いいな」と感情的に観るのも一つだと思います。意味の世界で観るのも一つ、感情的に観るのも一つ。この五右衛門はその両方に則って楽しめる作品だと思います。
―――衣装の意味とかを謎解きながら見るのも楽しみ―
京都の撮影所の方々もマニアぞろいなので、自分のマニアを通すために喧々諤々になる。それは、とても矜持があることだし、素敵なことだと思うのですよ。
時代劇の歴史に基づいて成り立っているものの中に、現代的文脈だったり芸術的文脈だったりを取り入れながら作っています。だから、芸術的観点から見ても、歴史的観点から見ても面白いと思います。
ただ、今の視聴者の皆様は、目が肥えていますから怖いですよね。以前、視聴者の方から、お坊さんの袈裟が無い事に対して指摘を受けたことがありました。「そこを見ている人もいらっしゃるんだ」と気づかされました。目が肥えている人はそういうところを突っ込んできますね。
そこは表現と再現の戦いになる場合があります。時代考証、衣装考証的にはあった方がいい点と、美的にはない方がいいという判断もある。時代再現なのか芸術表現なのか、軸をはっきりさせておかないとぶれる。
五右衛門は時代考証的なものではないので、表現的・芸術的な方です。そのように柔らかく楽しんで観ていただければ、思います。
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金曜8時のドラマ『石川五右衛門』11月25日(金)は、第七話放送。
個性あふれる出演者の姿にも改めてご注目しながらお楽しみください
【第七話】
豊臣秀吉(國村隼)が、昔手放した日輪が刻まれた銀キセルの行方を探す中、茶々(比嘉愛未)は五右衛門(市川海老蔵)の銀キセルに日輪が描かれていたことを思い出し動揺する。そんな中、秀吉はふとした事で五右衛門と夜左衛門の繋がりに気づく。一方、奥山公継(益岡徹)の屋敷で奈々(AnJu)の見合いが行われる。その夜更け、銀キセルの行方を掴んだ徳川家康(林家正蔵)の命令で服部半蔵(浜田学)の手下が夜左衛門を襲撃し...。
柘植伊佐夫
人物デザイナーとして作品の扮装全体を統括。主な作品に、映画「おくりびと」「十三人の刺客」「進撃の巨人」「シン・ゴジラ」、舞台「プルートゥ」「エッグ」「あかいくらやみ~天狗党幻譚~」「逆鱗」、NHK大河ドラマ「龍馬伝」「平清盛」。最新作にNHK大河ファンタジー「精霊の守り人」がある。第30回毎日ファッション大賞鯨岡阿美子賞他受賞多数
著書「龍馬デザイン。」「さよならヴァニティー」
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